楽天が「配送品質向上制度」を24年6月導入へ――土日出荷に対応でモールの「インフラ化」推進

 楽天グループでは2024年6月、配送品質が高い商品を優遇する仕組みとして、基準を満たした商品にラベルを付与する仕組み「配送品質向上制度」を導入する。ラベルの貼付がモール内検索における順位決定の要素に含まれることから、出店店舗は対応に追われている。

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ラベル取得条件を緩和

 楽天が導入する新制度とはどういったものか。まず、基準は店舗基準と商品基準がある。店舗基準については「納期順守率96%以上」「6日以内お届け件数比率80%以上」「出荷件数が月に100件以上」「共通の送料込みラインの導入」の4つ。これに準ずることを前提として、商品基準を満たしている商品にラベルが付与される。商品基準は「365日出荷可能」「午前の注文は翌日届け可、午後の注文は翌々日届け可」「日付指定可能」となる。

店舗基準と商品基準を満たした商品にラベルが付与される

 商品基準を満たした場合、ラベルは翌日~翌々日配送が可能な地域のユーザーに表示する。例えば出荷元が関東地方にあり、翌日~翌々日配送が本州・四国に可能な場合は、この地域のユーザーにのみラベルは表示され、北海道と九州・沖縄のユーザーには表示されない。

 楽天では、出店者との意見交換・説明会「楽天市場タウンミーティング」で出た要望を受け入れる形で、母の日・クリスマスなど特定日に届ける必要がある商品やオーダーメイド商品など、商品の性質上6日以内の配送が難しい商品は「6日以内届け件数比率」の母数から除外して計算するようにしたほか、検索順位決定で不利にならないよう考慮する。「365日出荷」については年末年始と月1回は休業を認め、土日祝日は通常注文締め切り時間を最短午前9時に設定可能とした。

対応難しい店舗も

 

 ただ、これでも対応が難しい店舗が多いことは変わらない。ある店舗は「完全週休2日制を導入しているので商品が出荷できない。来年は2024年問題もあるし、現在の運用を変えなければいけないとなるとハードルが高い。売れ筋のみ外部に委託するなど、商品単位でラベルを取得することも考えられるが、今のところ様子見だ」とする。別の店舗は「事業モデルそのものを変えないと対応できないので、現状はしない方向。(楽天が出店者の物流業務を請け負う)『楽天スーパーロジスティクス(RSL)』も利用しているので365日出荷は可能だが、われわれは土日休みなので出荷指示が出せない。また、その他委託している倉庫は土日出荷に対応していないためだ」と話す。

 多数のEC企業をクライアントとして抱える、あるコンサルタントは「印象としては対応する会社としない会社が半々というところだが、頭を抱えている店舗が多いのは事実。一部商品はRSLに預けよう、という動きもある」と明かす。

ユーザーニーズに対応

 こうした店舗の声に対し、楽天はどう応えるのか。コマースカンパニーマーケットプレイス事業楽天市場企画部の海老名雅貴ヴァイスジェネラルマネージャーは「タウンミーティングやウェブでの説明会を通じ、約2500店舗から意見をもらったわけだが、『土日出荷に対応するのは厳しい』という声が少なくなかったのは事実」と振り返る。それでも365日出荷への対応を求める理由について、海老名ヴァイスジェネラルマネージャーは「ユーザーのニーズがあるから」と明快に答える。

 同社によれば、楽天市場におけるユーザーの日付指定の曜日別構成比は、土曜日を除き同水準という。「楽天市場は社会インフラに近い存在だからこそ、多くのユーザーが集まってくる。また、平日休みの人も少なくない。ユーザーのニーズに応えるためには、翌日または翌々日に届けることを前提として、全曜日稼働してもらいたいということだ」(海老名ヴァイスジェネラルマネージャー)。

 一方で海老名ヴァイスジェネラルマネージャーは「それなりに店舗のオペレーション負荷が発生する制度なのは事実」と認める。「ただ、ECは“当たり前”がすぐに古くなってしまう世界。現状を維持しているだけでは、数年後には遅れを取ってしまいかねない。仮想モールとしては、たくさんの店舗と一緒にレベルアップしていきたい」と呼びかける。“欲しい時に受け取れる”状況を実現することで、ユーザーの満足度向上を図る狙いだ。

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