ヤマトグループ、貨物専用機を導入――宅急便の輸送力向上、スピード配送ニーズも取り込みへ

 ヤマトグループが2024年4月11日から、自社でリースした貨物専用の航空機を活用した宅配便を含む荷物の輸送を開始する。「物流の2024年問題」による輸送力低下への対応や通販市場の拡大などで増加し続ける荷物を安定的に輸送する手段として活用していく。また、自社機のため、既存の旅客機の貨物輸送では難しかった深夜の運航なども可能となり、荷物の長距離輸送のリードタイムの向上にもつながり、「今まで実現できなかったスピード輸送を提供できる」として、「宅急便」の付加価値を高めたい考え。地場の産品や生鮮品を取り扱う、またはスピード配送を実現したいEC事業者からも注目されそうだ。

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1機でトラック5~6台分を積載

導入したヤマト運輸の専用フレイラー

 ヤマトグループが導入する専用のフレイター(貨物専用機)は「エアバスA321‐200P2F型機」。もともと旅客機だった機体を改修し、床下貨物スペースのほか、座席を取り除き、床にレールをつけて、客室にも貨物を積めるようにしたり、大型貨物の積み込みができるよう大型搬入口を取り付けるなどしたもの。1機あたりの最大搭載重量は28tで、上下の貨物スペース合計で24の航空コンテナを積載可能。「10tトラックに積載できる荷物の5~6台分」(ヤマト運輸・貨物航空輸送オペレーション設計部の鈴木達也執行役員)に相当する。同サイズの小型機と比べ約20%多くの貨物の搭載が可能だという。なお、フレイターは3機をリースして、日本航空グループのLCC、スプリング・ジャパンが運航する。

 「荷物の需要は変化している。宅急便をはじめとした小口貨物は通販の拡大や商流の多頻度小口化で増えてきている。一方で『物流の2024年問題』などから安定的に荷物を運ぶことが難しくなっていく中で、当社としてトラック、鉄道やフェリーだけでない色々な輸送モードを取り揃え安定期な輸送力の維持、向上を図る必要がある」(同)としたうえですでに活用している既存の旅客機の床下貨物スペースを使った輸送についても「飛行機が小型化している中で荷物を運びたい時に運べないケースが出てくる」(同)とし「一方で飛行機の発着枠は整備され広がっており、当社のような事業者でも枠をとって飛行機を運航できる環境が整ってきた」(同)として、荷主などの需要に合わせて自社で柔軟に運航区画や深夜を含めた運航時間を決めることができ、より多くの大型貨物を輸送できるようになる貨物専用機を自社チャーターすることに決めたという。

2024年4月から商用運航スタート

23年11月から訓練飛行を開始後、24年4月11日から商業運航をスタート。まずは成田(千葉)から新千歳(北海道)、北九州(福岡)、那覇(沖縄)と那覇から北九州を結ぶ路線を1日9便運航。来夏からは羽田空港からの発着もはじめ、羽田から新千歳、北九州を結ぶ路線を加えて1日13便の運航体制とする。同社では最終的に21便体制まで拡大したい考え。

 午前4時15分発、午前5時55分着の羽田・新千歳便や午前1時40分発、午前3時15分着の北九州・羽田便など早朝・深夜帯の運航が多いことが特徴で従来の旅客機の床下貨物スペースによる輸送ではできなかった早朝・深夜帯に運航させることで「例えば朝一番で地方の生鮮品などを(首都圏に)我々がすぐに配達したり、羽田についた荷物を国際線の貨物スペースにのせて海外にすぐに輸送できるなど、今まで実現できなかったスピード輸送を提供できる」(鈴木執行役員)という。

 自社フレイター運航で「宅急便」の輸送の安定化を担保しつつ、「“スピード”を必要とされるお客様に新しい価値を提供していく」(同)とし、フレイターの輸送速度を活用した法人向けの新たな商品の展開や航空機などを活用して翌朝までに配送を約束する「宅急便タイムサービス」の強化など「その先の商品展開についてもお客様が使いやすいサービスを検討していきたい」(同)とする。

 物流サービスは24年問題からコスト増などを懸念する通販事業者も多いが、一方ではスピード配送など付加価値を求める顧客ニーズも少なくない。地方で地場産品や生鮮品を扱う事業者のほか、より早い配送を顧客に提供したい通販事業者などは利用するタイミングも出てきそうでその行方が注目される。

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