パインアメのメーカーであるパインの販促が注目を集めている。X(旧ツイッター)を中心にSNSで展開する多彩な話題作りが奏功し、公式通販サイトの8月の売上高は昨年同月比2・7倍に伸長。顧客エンゲージメントの構築にも成功しているようだ。
特に話題を集めたのが、今年3月のXへの投稿。同社の顧客が御祖母様の遺品整理の際、大切に保管されていた古いパインアメ缶(創業当初に製造されたもの)を発見し、同社に寄贈したことで70年ぶりの”お里帰り”を果たしたという内容。この投稿が心温まるエピソードとして拡散し、合計17・9万の「いいね」を獲得。同社のSNS史上最大級の反響を呼び、復刻版を望む声も多く寄せられたことから「復刻パインアメ缶」(以下、復刻版)の商品化につながったという。これを機にXのフォロワー数も約1万人増えて18・7万人(12月5日時点)となるほか、連動してインスタグラムのフォロワー数も増加したという。
さらに、この一連のエピソードを軸に復刻版などの商品を催事で販売するという告知用のプレスリリースを発信したところ、メディアからの取材が相次ぎ情報が更に拡散。催事では整理券を求める行列ができ、約1週間の催事中に復刻版の販売予定数3000個を完売した。Xには購入できなかったことを嘆く投稿も相次いだという。
その後、当該プレスリリースはPR TIMESが主催する「プレスリリースアワード2023」において「ヒューマン賞」を受賞した。
開発部広報室の井守真紀氏は、「お客様とのやり取りから生まれた商品なので宣伝色は弱め、物語風な書き方にするなど試行錯誤したが、想定以上の反響で大変驚いた。プレスリリースは企業姿勢や商品への思いを伝えるにも有効な媒体だと再認識した」という。
もう一つ話題を集めたのが、プロ野球・阪神タイガースの岡田彰布監督が試合中に声枯れ対策としてパインアメを口にしていたというニュース。7月24日には同社から球団にパインアメ1000粒を提供したことがスポーツ紙等で報じられると、野球ファンの購入希望者が殺到。関連商品は全社的に品薄となり、公式通販サイトでは一時的に販売を停止したという。
「競合他社とは異なる施策を打つというのが当社の方針で、広告宣伝費はほぼかけていない。こうした話題性により企業コラボ商品の展開も増加するなど好循環を生んでいる」(井守氏)という。
今後は復刻版の再販も計画。生産数を増やし、通販サイト等を活用して全国で拡販したいとしている。