エムール ショールーム事業拡大

 寝具のネット販売などを手がけているエムールではショールーミング店舗を通じた顧客接点の強化やブランド認知の拡大を図っている。6月には港区青山に新店舗を開設。本社のある立川市内の店舗に続く2店舗目で、23区内では初めての出店となる。

 同社では2022年に寝具商品や椅子などを体験できるショールーミング店舗を立川市内に開設。同店は平日のみの運営で、完全予約制のため最大3組までの来店となる。実物を試したいとするECならではの顧客ニーズに対応したもので、購入に悩む顧客に対して、カウンセリングや説明を通じて本当に身体にフィットした商品を判断できる場として提供。また、ブランド価値を高める場として運営している。店内で体験した商品についてはECの購入ページのURLを送って、その後購入するかどうかの判断を促している。

 また、来店時にはアンケートや接客を通じて、生の声を収集する作業も行っている。中には商品開発に活用できた意見もあったようで、一例として、高座椅子について、ある高齢者から座ったままでも体の向きを変えられるよう回転機能を求める声があり、それを受けて安全ストッパーをつけて転倒しないように安定性を確保した新商品を開発したこともあった。

 今回、2年ぶりに開設した青山の新店舗は、23区では初めての店舗。地下鉄駅からも近い外苑西通り沿いで、周辺には高級寝具・家具の店も少なくなく、ブランド訴求がしやすい立地環境だと見ている。

 店内には約10種類の高座椅子と、約7種類の枕(足用枕も含む)に加え、素材が異なる最大で10種類の体験ができるマットレスを常設で展示。まずは、土日を含めて週5日間で運営し、予約枠についても1日最大7組まで設けている。

 接客に関しては、常時3~5人のスタッフを配置。立川店では接客経験のない社員が対応することもあったが、青山店では、人体工学や睡眠などの座学、接客マニュアルのトレーニングを受けた専門の販売員を新たに起用して、接客レベルを大幅に高めている。

 なお、立川店では大半がシニア客の来店で、高座椅子の体験が多かった。青山店については多少、来店年齢が下がることも考えられるが、大きな顧客層の変化はないと見ている。立ち上がりの状況としては、想定を上回る予約数となっており、比較的マットレスの体験希望が多いとする。

 集客に向けては、既存客へのメルマガや、公式サイト、SNSでの告知などを実施。平行して、自社通販サイトでは店舗で試せる商品に「ショールーム体験可能」のリンクボタンを設置して、クリックで来店予約ページに遷移することも行っている。

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高価格帯商品の販売機会も

 同社の場合、ショールーム展開ついて、あくまでも販売を主目的としていないが、来場者の約7割がその後の成約に至っているという。人体構造や睡眠学などに基づいて設計した商品であることから、「寝る、座るということの価値は、やはり実物を試さないと分からないという点でうまくマッチしたのでは」(高橋幸司社長)と見ている。

 また、来店後のEC転換率に加え、店舗展開は客単価の向上にも効果があると分析。青山店についてはECでの取扱商品の中から中位~上位の価格帯を集めて展示している。マットレスを例に挙げると、EC市場では1万円以下の商品も少なくなく、同社でも2万円前後の低価格帯商品が売れ筋となっている。しかし、リアル展開の場合は、3~10万円前後で高い機能性も付加した商品群が売れやすくなるという。「ネットだけでは売りにくいような価格帯であっても(店舗であれば)今までになかった価格帯にもチャレンジすることができる」(高橋社長)効果があるとした。

 今後については、都市部の人口動態の変化も見ながら、出店エリアを検討。23区内では湾岸地域などが候補に入ると見られる。「暮らしが変化する中、色々な家族の形がある。そうした人たちの寝室を作ることがビジョンなので、それを的確に捉えられるところが次の立地になる」(同)とした。

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