日本郵便は5月26日、住所を7桁の英数字に置き換えて伝えることができる「デジタルアドレス」の提供を開始した。住所を簡略化して表記できるもので、通販や金融、行政といった様々なサービスでの利用を見込んでいる。まずは自社の郵便関連アプリでの利用を開始し、外部企業への導入も進めていく。今後、10年程度をかけて普及することを目指していく。
同サービスは郵便番号を含む都道府県から町域、建物情報などの住所の全文を、簡易に7桁の英数字によるデジタルアドレスに置き換えるというもの。自分の住所を示す手段として、長い住所を書いたり入力する手間がなくなるほか、引っ越しをしても、同じデジタルアドレスを変えることなく継続して使用することができる。
まずは個人での利用を希望する人を対象にデジタルアドレスの振り分けを無料で行う。希望者は日本郵政グループの共通顧客IDサービスである「ゆうID」への登録が必要。開始当初は同社の郵便関連アプリ上で「ゆうパック」を送る際の宛先入力時で使用できるようにしている。
グループ以外の外部企業での入力先としては、通販や金融、行政、物流、通信といったサービスが提供するサイトなどで住所登録を行う場面を想定。入力することで、ゆうIDに登録済みの住所が自動で反映される形となる。そのため、同日よりこれら各業界の法人向けに、同サービスのAPI連携を無料で提供することも開始。通販関連では、今後、楽天グループの一部サービスでの導入が予定されているほか、7月にはGMOメイクショップのサービスでの導入も決まっている。
同サービスを利用するメリットとして、顧客視点では、住所入力の手間や転居時の住所変更などの負担が軽減されることがある。法人側としては、顧客の住所の入力・記載ミスの防止をはじめ、転居情報の更新や住所の名寄せ作業の負担軽減などがあるとしている。
現時点では導入した企業の各種サイトでの入力時のみにしか利用できないが、将来的には利用普及が進むことで郵便物のあて名や荷物の配送伝票などそのものに直接デジタルアドレスを記入するだけで届けられるような状況も目指している。その場合、通販関連では、置き配などの荷物の伝票に名前や住所といった個人データが表示されなくなるため、プライバシーの保護にもつながると予想。また、今後は法人向けにもデジタルアドレスを提供することも計画しており、部署ごとに取得することで、キャンペーン時の応募窓口や書類受付、通販商品の返品受付といった用途別に顧客を管理することもできるようになると見ている。
まずは、普及拡大を第一フェーズの課題としており、個人利用者だけでなく、入力先となる法人への導入拡大も平行して進めていく。10年ほどをかけて社会インフラとして確立させる考え。
なお、4月末時点でのゆうID会員は約1500万人という。