auコマース&ライフ(auCL)が運営する「auPAYマーケット」は3月1日、同一店舗において3980円以上の購入で送料が無料となる制度を導入した。楽天グループの「楽天市場」においても、2020年4月より3980円以上の購入で送料が無料となる「送料無料ライン」を導入しており、auCLでも金額を合わせた形になる。
3980円が最適と判断
新制度の名称は「サンキュー配送」。
同モールではこれまで、有料会員制度「Pontaパス」会員限定で、2000円以上購入した場合の送料無料特典を提供していた。サンキュー配送には、従来制度よりも多くの出店店舗が参加。送料無料となる対象商品数は3倍以上に増えたという。
また、Pontaパス会員向けには、対象商品の購入で還元されるPontaポイントを1%増やす優待制度を導入。毎週日曜日には、3980円以上購入するとポイントが4%分増額される。同社では「顧客にさらなる利便性と経済的なメリットを提供できると考え、サンキュー配送の導入に至った」(広報)とする。
auCLでは、3980円にラインを設定した理由について「送料無料となるしきい値を複数のパターンでシミュレーションを実施した結果、3980円に設定したパターンが他のパターンよりも、顧客と店舗双方にとってのメリットが最大化できる結果となったため」
(同)と説明する。
サンキュー配送は、施策に賛同する店舗の商品が対象。配送先が北海道や沖縄、離島の場合でも本特典は適用できる仕様だが、適用するかどうかの判断は店舗に任せる。同社では「参加の有無については店舗の判断に任せているため、各店舗の状況や戦略に合わせて、柔軟に対応してもらいたい」(同)としている。
また、サンキュー配送が理由で同モールを退店する店舗については「説明の上で参加有無を判断してもらっているので、直接的な退店の理由には繋がらないものと認識している」としながらも、「説明の過程で店舗から意見があった場合には真しに受け止め、今後の施策運営の参考としている。また、さまざまな要因により退店を検討する店舗に対しては、個別に事情を聞き、状況に応じて適切な支援を検討する」(同)とする。
「楽天の後追いではないか」
auPAYマーケットに出店しているEC企業の社長は、今回の施策に対し「楽天市場でも3980円で送料無料になる施策がすでに導入されているので、送料が無料となるラインを合わせること自体は難しくない」としながらも、「楽天の後追いをしているだけで、auとしての戦略が見えてこない。『公正取引委員会の楽天に対する調査も終わり、ほとぼりが覚めたから同じことをやってみた』というだけに感じる」と
酷評する。
同モールにおいては、Pontaパス会員限定とはいえ、2000円以上購入した場合の送料無料特典を提供していたことから、特典が適用される店舗で買い物をしていたPontaパス会員にとってはサービスが低下することになる。会員向け特典についても500ポイント(Pontaパス特典+1%還元とPontaパス特典最大5%還元の合算)が付与ポイントの上限のため、「お得さ」が薄らいだ印象だ。なお、送料無料特典についてはこれまで、auCL側が送料を負担していたものとみられるが、送料負担をこれまで行っていたのか、今後はどうするかについて同社では「回答を控える」(広報)としている。
4月からは値上げも
同モールは4月より、実質的に月額料金を値上げする。ある大手出店者は「売れているモールならまだしも、土台が全くできていないモールに『値上げする』と言われるとかなり厳しい」と直截な感想を口にする。
かつては販促費をかなり投入していた同モールだが、近年はモール負担で配布するクーポンも減った。さらには、2021年にスタートした「体験型チケット等購入サービス」も24年9月で終了。この出店者は「あまり(モール側の)やる気が感じられないので、撤退する店舗も増えるかもしれない」と漏らす。