ジェイドが今年2月に本格始動した靴の通販サイト「ロコンド」。全品送料無料や99日間返品OK、電話で靴選びの手助けをしてくれるなど、日本ではまだ新しいビジネスモデルを掲げ、テレビCMも放映してスタートした。ただ、サイト開設直後の大震災で事業環境が大きく変わったため、軌道修正を余儀なくされて初のシーズンを終えた。「この半年は100点満点で70点」(秋里英寿代表)としており、成果と課題が浮かび上がっているようだ。
今秋、サイトリニューアルへ
外部環境については、震災後の消費マインドの冷え込みが影響。垂直立ち上がりを見込んでいた春物需要期も「6週間程度はシーズンを失った感じ」(同)とし、事業計画は環境に合わせて修正せざるを得なかったようだ。
それでも、5月~7月の月ベースの売り上げは伸びているようで、ユニークユーザー数は月間60万人規模に拡大。俳優の近藤正臣さんを起用したテレビCMでは「コンドーです。ロコンドーです」というダジャレでサイト名の浸透を狙ったこともあり、認知度アップに寄与したとみている。
また、顧客へのアンケートではサイト利用に満足している割合が高いようで、CS自体に問題はないとする。とくに、オンラインコンシェルジュの存在など“おもてなし”の姿勢は一定の評価を得ているとして、今後は「顧客が友人にサイトを薦めてもらえるようにしたい」(同)とする。
まずは今春夏シーズンの購入者へメルマガなどを活用して秋物を訴求し、リアルイベントなどへ招待するなどして強力なファン化を目指すとともに、フェイスブックやツイッターの活用を強化して情報拡散につなげる。靴という商材の特性上、年間2足以上購入してくれる顧客をどれだけ増やせるかが事業安定化に向けた第一歩となりそう。
一方で課題も浮き彫りに。IT面については、テレビへの露出や導線強化で想定以上に訪問者が増えたこともあって、操作環境が損なわれた。また、ビジネスモデルの要でもある返品・返金の処理もスムーズにいくまでに時間がかかったという。現状、ITへの投資を強化し、問題点は解決されてきているようで、機能強化して今秋にもリニューアルオープンする予定だ。
品ぞろえについても、まだまだ強化が必要との認識だ。380以上のブランドが参画した春シーズンは「まずまずの出だし」(同)とするが、今秋冬には調達面で新しいチーム体制を構築。来年の春夏にはラインアップをさらに強化したい意向だ。
同社ではスタート時に掲げた3年後に年商1000億円という高い目標は後ろ倒しとせざるを得ないが、まずは安定的な事業基盤の構築を急ぐ。
PB商品などMDを強化
この半年、新客開拓やファンの獲得を目指して、さまざまな施策を打ち出してきた。テレビCMに続いては、4月中旬にヤフーと提携して仮想モール「ヤフー!ショッピング」上で「ロコンド」の取り扱い商品を検索できるようにした。
5月の母の日商戦では、“母の日に靴”という新しい提案とともに「5足贈ろうキャンペーン」を実施。母親が似合いそうな靴を5足贈って、そのうち1足を選んで残りは返品してもらうという企画だが、中には1足に絞り切れずに複数点を購入するケースもあったようだ。また、靴の写真を投稿することで割引クーポンをプレゼントする取り組みなども行い、一定の販促効果を得たようだ。
MD面では、7月下旬に初めて自社PB商品を開発。靴屋で育った同社のバイヤーがメンズビジネスシューズを開発して売れ筋商品になっているという。今後、レディース物のパンプスやブーツなどでもPB商品を開発する。
一方、仕入れ先からの要望もあって、年内にはバッグなどの革製品も取り扱うなど、商材の幅を広げる計画だ。
秋シーズンからは改めて“ロコンドらしさ”を重視。おもてなしの姿勢を貫くことで、「買ってから選ぶ、買ってから悩むというビジネスモデルをしっかりと確立させたい」(同)という。
靴の市場自体が縮小している中、「ロコンド」が卸やメーカーからも信頼される存在になれるのか、今後の取り組みに注目したい。