いかに分析して配信するかが常に求められている【ブレインパッド草野隆史代表取締役社長】 

 ネット販売を行ううえで、販促に欠かせない手法として以前から大きな地位を占めてきたメルマガ。直接ユーザーに商品を訴求できるのが強みだが、ひとつ間違えれば「迷惑メール」になりかねない危険性もあるため、特に戦略性が求められる部分でもある。ただ、ブレインパッドの草野社長によると「これまでは支援する事業者側(のサービス)が弱かった」という。新たにメールマーケティングサービス「キャンペーンコマンダー」で市場に参入した同社の草野社長に今後の戦略を聞いた。(聞き手は本誌・河鰭悠太郎)

 

 

 

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メールマーケティングに必要な機能はすべてある

一律なメールは非効率なだけ

――キャンペーンコマンダーの販売を開始した経緯を教えてください。

 もともと、当社はデータの分析から始まったのですが、データを貯めるためのシステム環境の提供とか、分析結果に基づいてウェブをパーソナライズ化するためのレコメンデーションエンジンの提供とか、分析をする中で発生するニーズにワンストップでお応えした方が、より統一感のあるサービスが提供できると考えました。実際、ワンストップでお願いしたい、というニーズが多かったので、我々としてもいいソリューションがあればメニューとして提供したいと考えていました。そこで「キャンペーンコマンダー」を見つけたというわけです。

――サービスの特徴は

 セグメント配信できるのはもちろんですが、そのセグメントに対して何ができるか、ということが重要で、そこをカバーできるのが特徴のひとつです。 

 一例を挙げますと、「A/Bスプリットテスト」。例えば10万人の会員にメールを配信する場合、どのようなコンテンツが訴求力が高いか、事前に知りたいですよね。このテストでは、例えば1000人を抽出して、そこにAパターン、Bパターンのメールをランダムに送ることができます。送ったメールの内容に対して、AとBでどちらが反応が良かったかなどをレポートで知ることができるわけですね。そうすると、残りの9万9000人にどちらを送ればいいかが事前に判断できます。こうしたことが一画面で分かるようになっています。メールマーケティングに必要な機能がほぼ全部入っていて、しかも使いやすいというのが大きな特徴だと思います。 

――他には。

 特に引き合いが多いのは、トリガーマーケティング機能。これは自由度の高い設計のキャンペーンができるのが特徴です。要するに、条件分岐ですね。あるメールを送り、反応した人には更に違うメールを送るとか、反応した人の中でも「クリックしただけの人」と「購入した人」に分かれますので、「購入した人」には、例えば更なる商品案内メールを送るとか、フェイスブックページへのご案内を出すとか、そういう形のアプローチも可能です。クリックしたけど購入まで行かなかったお客様には、やはりそれに合わせたメールを送り、まったく反応しなかったお客様には、もう一度同じメールを送る、などもできます。そうした設計をしておけば、あとはシステムが勝手にメール配信をしてくれるので、人間がその都度覚えている必要はありません。

 また、例えば、普段は一律で定期的なメルマガを送っているけれど、個別のユーザーにも条件を設定して送りたいことがあると思います。例えば誕生日の前とか、奥さんの誕生日とか……。そういう設定もすぐにできる仕組みです。通常はマーケティングの担当者やオペレーターがリストを作って配信プラットフォームに乗せて送る、ということを行っていたわけですが、それが自動でできるわけです。

――どういう利点があるのでしょう。

 人がオペレーションに関わるコストが圧縮できます。お客様はその浮いた部分で他の仕事に専念できます。「誰に」「何を」「どのタイミングで」がメールマーケティングでは大事なのですが、「誰に」の部分は簡単にいろいろな抽出ができるし、「何を」の部分はA/Bテストを含めて何が最適かを検証しながら送れますし、「どのタイミングで」はシナリオを組んでより精緻に送ることができるわけです。

 単に、一律に大量にメールを送るのは効率的ではありません。やはりある程度セグメントを分けてメッセージを出していかなければ。大量に送ったメールは、大抵の人にとっては意にそぐわないものです。それをしていると、次第にメールマガジンが読まれなくなるとか、登録先から抜けられたりしてしまいます。ゴミ箱行きの設定をされてしまったり……。ユーザー側からすると、どんどんメールが増えてキリがない状態です。その中で価値があるものをお届けしようとするならば、一人ひとりのお客様を識別した配信を始めないといけないでしょう。実際、意識の高いネット販売事業者はもう考えられていますが、ただ、そこまでやろうとすると、やはり分析が必要になります。

 これまで、メールマーケティングで注目されていたのは配信の部分だけでしたが、現在は、いかに分析して送り届けるか、そこが常に求められています。その分野は我々が得意としている部分ですので、そこに重きを置いてくださるお客様に対しては、我々もトータルで価値を出せるかな、と思っています。

――これまでのメールマーケティングは精緻ではなかったのでしょうか。

 それほど精緻に送り分けできていたわけではないと思っています。シナリオを組み、どういうタイミングで、どういう内容のメールを配信するのか、そういうことができるソフトは高価なこともあり、今まではそれほどできていなかったのではないでしょうか。誕生日やありがとうメール、あとは定期的に発行するメルマガという形で運営されている方々がほとんどだったのではないかと思います。

 メールの配信会社というのは、発射台というか、大量のメールを送るなどの機能に優れている場合が多いのですが、クリエイティブを作る支援が弱かったり、誰に送るかという部分の支援が弱かったり、一長一短がありました。キャンペーンコマンダーはそれらを総合的にできますし、配信エンジンとしての機能も世界最大規模の実績を持っています。ソーシャル連携もしているので、送るメールに「いいね」ボタンを挿入してシェアしてもらうことも、シェアされた結果のトラッキングもできます。

 

リンクの先まで追跡できる

――ソーシャルメディアと連携したメール配信とはどのようなものですか。

 HTMLメールの中に「いいね」などのプラグインを入れることは他でもできると思いますが、これはさらに、送ったメールアドレスにひも付けて、誰が「いいね」を押したかまでトラッキングできるのが特徴です。どういう部分がよくクリックされたのかも一目で分かるようになっています。

 レポートでは、何%の人が開封してくれたのか、その中でクリックした人が何%なのか、フェイスブックにメールを紹介してくれた人が何%いるのか、そこから実際にサイトを見に来てくれた人は何%なのか……そういうデータが簡単に把握できます。メールを送ったユーザーの友人が何人クリックしてくれたかも個別にカウントしますので、一番クリックされた人……つまり一番影響力がある、いわゆるインフルエンサーが誰かを特定でき、そうした人に限定したキャンペーンなども行えます。ロイヤリティが高い人が誰かを知ることもできます。

――リンクを挿入できるソーシャルメディアの種類は。

 フェイスブックやツイッター、グーグルブックマークなどいろいろあります。現在、ミクシィ対応などの要望も出しているところなので、今後はミクシィやグーグルプラスなどもおそらく使えるようになるでしょう。

 

一律で同じメールを送るのはナンセンスだ

今後はレコメンドとの連携も

――御社のレコメンデーションツールなどと連携させる構想は?

 今後、進めていきたいと思っています。ひも付けさえしてしまえれば、例えば直近でウェブにアクセスがあった方にメールを送ることができます。その方が閲覧していたページの内容を参考にするなど、行動に基づいてメールのジャンルを決められるわけですね。例えばパソコンを買った人にプリンターの情報を送りたいとか、プリンターを買った人に入れ替え用のインクをお勧めするとか……インクの消費状況がある程度分かっていれば、消費するタイミングに合わせてもう一度メールを送るなどもできるでしょう。

――利用を想定しているのはネット販売事業者が中心ですか。

 そうですね。通販・ネット販売事業者の方からの引き合いが多いです。

――特に、どういった商材を扱っている事業者が向いているのでしょうか。

 単品通販ですと、たぶんキャンペーンや訴求のパターンがある程度限られているので手運用でもなんとかなると思いますが、商品数が一定のボリュームを超えているとやはり手運用では難しいですよね。商品点数が多い事業者ほどキャンペーンなどは複雑化しますので、ニーズは高いと思います。

――料金体系は。

 配信利用費は、1通1円程度で、1万円からとしています。つまり想定するクライアントが、自社サイトで50万~200万人の会員を持っていると仮定して、月に1万通は配信するだろう、という計算ですね。そこに初期導入費が若干かかる形です。50万会員規模の事業者の場合ですと、初期費用が15万円程度で、そこに1通1円ぐらいの配信料がかかるわけですね。配信通数が増えれば1通あたりの単価は下がる仕組みです。一度に配信できる通数の上限はありません。

――目標獲得数などは。

 今期中に50社の獲得を目指しています。リリースしたばかりですが、反響は大きいので実現できない数値ではないと思っています。

――現在はソーシャルメディアが隆盛でいろいろなアプローチ手段がありますが、そうした中でメールマーケティングの現状をどう見ていますか。

 メールマーケティングは、やり方さえ間違えなければより良い売り上げを上げることができますので、注目度は高い分野でしょう。ただ、これまではツール面での支援が弱かったのかな、と思います。お客様にはユーザーとより精緻なコミュニケーションを取りたい思いがあったと思いますが、それに対するツール側の支援が弱かった。例えばアパレルで、ユーザーに一律で同じメールを送るのはナンセンスですよね。本来であれば、ユーザーが買った物に合わせてメールを送らないといけないはずです。それをしないとコンバージョンは上がらないし、コストも無駄にかかってしまう。これまではそこを支援するツールが弱かったのですが、今回リリースしたサービスで、そうした部分をカバーできるのでは、と思っています。

 

 取材後メモ

 

 ネット販売では基本中の基本のメルマガ。今やすっかり、誰もが真っ先に思い浮かべる代表的な販促手法のひとつとして定着しましたが、それはつまり、それだけ競争の激しい分野、ということを意味しています。興味がないジャンルのメールであれば読む前にゴミ箱行き。何度も続けば「迷惑サイト」のレッテルを貼られる危険だってあるでしょう。それだけに、取材中に草野社長が語っていた通り、できるだけ精緻な組み立て、セグメントが今後はますます求められていくのかもしれません。そして、ユーザーと1to1のコミュニケーションがとれるツイッターなどのソーシャルメディアが台頭している今、はたしてどのようにそれらと共存し、連携していくのか。そうした部分にも注目していきたいと思います。

 

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