千趣会は１月６日、スマートフォン用アプリ「にんぷメモ」をリリースした。妊婦向けに妊娠集数管理機能や情報を提供し、タニティ期の女性の不安を解消するとともに、「ベルメゾンネット」と連携した商品提案で実売につなげる。千趣会は、総合通販企業のなかでもスマートフォン対応に力を入れており、これまでに自社の顧客特性に応じたアプリも投入している。今回の「にんぷアプリ」もその一例と言えるもので、得意とするマタニティ関連商品からの新規顧客獲得を積極化していく構えだ。
マタニティからの新規獲得を強化
「にんぷメモ」はiPhone版とAndroid版がある。出産予定日をカウントダウンできる「妊娠週数管理」機能や体重の推移などを画像付きで日記登録できる「カレンダー・日記」機能のほか、プレママタウンと連携し、妊娠週数に応じたアドバイスを掲載する「ノウハウＢＯＯＫ」を展開。さらに「ベルメゾンネット」と連携し、商品の受注などができる｢準備ガイド｣機能を盛り込んでいる。
すでに、マタニティ期の経過管理や情報提供などの妊婦向けアプリは数多くあるが、千趣会では、妊娠週数に応じた必需品の情報を提供するものが意外に少なく、必要なものの購入方法が分からない妊婦も多いと判断。このため、「にんぷアプリ」では、妊娠週数に応じた必需品のチェックや注文機能を付加した。
千趣会では、妊娠をきっかけに顧客となる女性が多く、妊婦の間では「ベルメゾン」ブランドの認知度も高いという。
「にんぷアプリ」は、得意とするマタニティ分野からの新規顧客開拓の強化を狙ったもので、さらに出産後の女性をターゲットとしたスマートフォン用アプリの開発も推進。マタニティで開拓した顧客との継続的な関係構築を図り、子供の成長に応じた商品の購入などにつなげる。
独自性高いスマホ対応を追求
千趣会では、2009年にiPhoneおよびiPod touch向けの電子カタログの配信を開始。翌年５月には、EC機能付きのiPad向け電子カタログをリリースするなど、総合通販企業のなかでも、いち早くスマートフォンの活用に乗り出している。
この背景にあるのは、カタログで培ってきた経営資産の活用。表現力や直感的な操作などに優れるスマートフォンとカタログのノウハウを融合することで、独自性の高い展開を視野に入れたものと言え、これまでにもスマートフォンの特性を活かした商品の見せ方など、機能面でのブラッシュアップに積極的に取り組んでいる。
同時に、自社の顧客の購買行動に対応したアプリも展開している。そのひとつは、昨年10月に投入した「注文番号検索アプリ」だ。
もともと、千趣会ではカタログやチラシを見ながら、携帯電話で商品を注文する顧客が多いという。
「注文番号検索アプリ」は、こうした自社の顧客の購買行動を勘案したもので、入力画面にカタログやチラシに記載された商品の注文番号を入力すると、商品画像や価格が表示され、注文ができる仕組み。単なる受注機能とするのではなく、当該商品と合わせて購入されている商品や比較検討されている商品、他の顧客のレビューを見られるようにしている。
携帯電話からスマートフォンへの移行が進むなか、自社の顧客の購買行動に対応した使い勝手の向上に加え、商品購入の判断材料も豊富に提供することで購入を後押しする狙いだ。
“女性に寄り添う”アプリを展開
さらに、千趣会がスマートフォン対応で自社の強みを活かそうとしているのが、メーン顧客となる女性を意識したアプリの展開。前述の「にんぷメモ」もこの一環となるものだが、物販だけに特化するのではなく、女性の生活シーンを想定し、精神的な癒しにまで踏み込んだサービスを提供しようとしているのが特徴だ。
これを端的に表しているのは、一昨年12月にリリースしたアプリ「MoonStyle（ムーンスタイル）」。
「ムーンスタイル」は月経のリズムと月の満ち欠けを掛け合わせ、心と身体に与える影響などを毎日知らせるアプリで、自社運営の無料占いサイト「プルモア」から生まれたもの。
「プルモア」では占いのほか、日記や会員同士のおしゃべりや悩み事相談などのコミュニティ機能を提供するが、千趣会では、月経周期や基礎体温を記録し、身体の状況を把握することが女性の健やかな生活の基本になるとの考えに基づき「ムーンスタイル」をリリース。「にんぷアプリ」では、マタニティ期の経過管理ができるコンテンツや情報提供とともに、物販にまでの導線を作ったかたちだ。
通販・ネット販売各社がスマートフォン対応を積極化するなか、自社の強みを活かした独自の展開手法をつかみつつある千趣会。今後の動向が注目されるところだ。