リクルートが仮想モール事業に参入――「ポンパレモール」の可能性は

【2013年1月号】

リクルートホールディングスが“仮想モール”市場に参入する。11月20日、グループのリクルートライフスタイルを運営主体として、2013年の春をメドに、衣料品や家電、食品などを扱う仮想モールを独自に開設すると発表。リクルートライフスタイルの旅行予約サイト「じゃらん」やグルメ情報サイト「ホットペッパーグルメ」などで相互利用できるポイントをフックに、既存サービスの利用者の取り込みを狙う。ただ、仮想モールは、国内では楽天の「楽天市場」やヤフーの「Yahoo! ショッピング」、DeNAの「ビッダーズ」などが先行しており、すでに確固たる地位を築き上げている。今からこの市場で存在感を示すのは容易ではなく、実際、挑戦してはみたものの、思うような売り上げをあげられず撤退していく企業は多い。はたして後発のリクルートが楽天やヤフーらとどう渡り合っていくのか、そしてどのように差別化を図っていくのか――“巨人”リクルートの参入にネット販売事業者の注目が集まっている。

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「ポイント連携」がキモ

リクルートが開設する仮想モールは「ポンパレモール」で、公式発表によると、スタート時は衣料品や家電、食品、日用品、家具などを扱う店舗が出店する予定。開始時の店舗数は非公表だが、一部報道によると約500店から営業を始める予定という。

「ポンパレモール」では、既存の旅行やグルメ、美容、通販、クーポンなどのサービスと連携するもよう。これらサービスで相互利用できる独自ポイント「じゃらん×ホットペッパーポイント」を使えるようにし、自社サービスの既存ユーザーを取り込む狙いのようだ。出店料金などは非公表だが、一部報道によるとシステム利用料は2.5%で、顧客には購入額の3%をポイントとして付与する計画のようだ。

また、仮想モールを開設する狙いについては、「じゃらん×ホットペッパーポイント」の会員サービスの強化が大きい。「ユーザーにとって今よりももっとポイントが貯まる、使える状態を実現すること」(リクルートライフスタイル広報)。つまり、ポイントをフックにした会員サービス強化策を構想し、その手段として、市場が年々拡大しており有望な事業とみられている「ネット販売市場」に白羽の矢を立てた、というわけだ。

同分野では楽天やヤフー、アマゾン、DeNAなどすでに磐石の地位を築いている先行者がいるが、リクルートでは「特定の事業や企業を競合視して競争戦略を検討するステージではない」(同)とコメント。とはいえ他モールより安価な出店料金プランからはこれら大手を少なからず意識している様子が窺える。一方、これら先行する仮想モール事業者はリクルートの参戦を表向きは「歓迎」しているもよう。「ネット販売市場規模はまだ小さいので他社が参入することはあり得ること。自分たちは今まで通り規模を確保していきたい」(楽天)、「他社が参入することで市場が活性化するので歓迎する。まだまだネット販売市場は伸びしろがかなりあるので、食い合うというよりもそこを大きくしていきたい」(ヤフー)、「ネット販売ビジネスやモール界隈が盛り上がるので歓迎」(DeNA)など、「市場活性化につながる」という考えのようだ。

「成功する可能性ある」

仮想モール市場に参戦したリクルート。出店側が気になるのは、その“売り場”としてのポテンシャルだ。はたして「楽天市場」や「Yahoo! ショッピング」のような集客を期待できるのか。

ネット販売支援事業者など業界関係者の見立てでは、「可能性はある」という。その根拠のひとつとなるが「ポイント連携」だ。

例えば楽天が「楽天スーパーポイント」を軸にユーザーの囲い込みを実現していることからもわかるように、ECでは「ポイント」が重要な販促ツールとなっている。「ポンパレモール」の場合も、「じゃらん」や「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」「ポンパレ」など7つの自社サービスで相互利用できる「じゃらん×ホットペッパーポイント」と連携させる構想で、すでに相当規模いるこれらのユーザーにアプローチできるのが他社にはない強みのようだ。

次に、「一極集中」を避けたい出店者側の思惑もある。例えば、先の楽天の「送料課金」問題からも分かるように、ひとつのモールに依存する戦略はリスクが大きい。また、あまりに巨大化した「楽天市場」では競合との価格競争も熾烈で、思うような売り上げが伸びず頭打ちになっている現実もあり、出店者は常に「可能性がある売り場」を求めている。そうした「楽天、ヤフーに続く第3の売り場」を探している出店者にとって、一般消費者にも認知度の高いリクルートが運営するモールは、期待値が高く、福音となるかもしれないわけだ。楽天市場に出店する某事業者からは「(じゃらん×ホットペッパーの)ポイント連携は魅力。まずはスタート後の様子をみて出店を決めたい」との声も聞こえており、ある程度の関心は持たれていると思われる。

店舗への導線は?

成否を握る最大のカギは「他モールとの差別化」だが、出店プランと独自ポイント以外では、「店舗への導線」が重要になりそう。例えば「楽天市場」や「Yahoo! ショッピング」は球団買収やポータルとしての存在感、テレビCMなどでそれぞれ国内における知名度を高め、サイトに誘導してきた背景がある。楽天やヤフーのように「ネットにあまり詳しくない層」にも「ポンパレモール」の存在を知られるために、「どのような導線を引くか」が重要になるわけだ。リクルートは企業としての知名度は抜群だが、ネット販売では飛びぬけた存在感があるわけではない。ネット販売業界以外の層にどれだけ「ポンパレモール」の名前を浸透させられるか、そしてサイトまで首尾よく誘導できるか、モール開設後はその点が問われることとなりそうだ。

開設までのカウントダウンが始まっている「ポンパレモール」。ポテンシャルは十分だが、はたして“仮想モールの巨人”である楽天に対抗できる存在となり得るのか。今後の行方に注目しておくべきだろう。

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