NTTドコモ、マガシークを買収へ ──通販ビジネス拡大で次の一手

 NTTドコモは1月30日、ファッション通販サイトを運営するマガシークと同社親会社の伊藤忠商事、双方の賛同を得て、マガシークの発行済普通株式の公開買い付け(TOB)を実施することを決めた。ドコモは今後の成長戦略として、本業の携帯電話事業の周辺領域のビジネスを強化中。数年前からテレビ通販や食材宅配などの通販実施企業を次々に傘下に収め、通販事業基盤を整えつつある。昨年末にはドコモのスマホ利用者向けにデジタルコンテンツを販売するポータルサイト「dマーケット」内に物販専用コーナー「dショッピング」を新設し、通販事業の本格的な拡大に向け、積極的な施策を打ち始めている。マガシーク買収でネット販売でメーン商材の1つである「アパレル」を手中に収め、通販事業の拡大を図っていく考えのようだ。TOB成立後、同社のスマホ向け通販サービス「dショッピング」内に新たにファッションカテゴリーを開設するという。一方、マガシークは携帯電話ユーザーを多く囲い込むドコモの力を活用して競合がひしめく衣料品ネット販売市場でのシェア拡大を図る思惑などから、今回のドコモへの傘下入りを決めたようだ。

昨今、衣料品のネット販売市場では、楽天によるスタイライフの子会社化やワールドのファッション・コ・ラボ買収、高島屋によるセレクトスクエアの連結子会社化など業界再編の動きが加速しているが、今回のドコモのマガシーク買収について衣料品ネット販売の競合からは「(大手の資本参入で)面白くなってきた」する意見がある一方、取引先ブランドからは「キャリアに制限されたECの成長に疑問」「マガシークの成長につながるのか」といった声も上がっている。果たして、ドコモやマガシークの思惑通りに事は運ぶのだろうか。

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マガシーク株75%を取得へ

 

ドコモは1月30日付でマガシーク株式の公開買付けを実施。最終的にマガシーク株75%取得を目指して同社を子会社化するが、伊藤忠も引き続き25%を保有する。また、TOBの成立後、マガシークは上場廃止となる見込みだが、舵取りは井上社長が引き続き担い、ドコモからは役員を派遣するという。
 ドコモのマガシーク取得の狙いは、通販事業の強化策の一環。同社では今後の成長戦略の1つとして通販事業の強化を掲げており、09年にはテレビ通販大手のオークローンマーケティングを、昨年8月には食材宅配のらでぃっしゅぼーやを買収。昨年7月に連結子会社化したタワーレコードを含めれば、傘下の通販実施企業は今回のマガシーク買収で4社となる。情報筋によれば、ドコモは今後も通販企業のM&Aを検討している模様だが、マガシーク買収でネット販売のメーン商材の1つである「アパレル」を展開するための準備が整ったことになる。

ドコモは通販事業の本格化に向けて昨年12月中旬、スマホ利用者向けにデジタルコンテンツを販売するポータルサイト「dマーケット」内に、ドコモの直販による物販コーナー「dショッピング」を開設。オークローンマーケティングやらでぃっしゅぼーやといった傘下の通販企業のほか、日用雑貨EC大手の爽快ドラッグと組み、日用品を中心に有機野菜やフィットネス機器、家電など約10万点の商品を扱うが、「衣食住」のうち、足りなかった「衣」についてマガシークを軸に開始、拡充していく考えのようだ。「dショッピング」は日用品などが多いため、TOB成立後には「dショッピング」内に新たにファッションカテゴリーのページを新設して、他の商材とファッションは違った見せ方を模索していくほか、新たなページでは「マガシーク」の名前を出して認知度向上につなげていく考えのようだ。

一方、ドコモの傘下に入ることを決めたマガシークの思惑は、競争が激化するファッションECにおいて、消費者との接点が多いドコモと組むことが、新規顧客獲得面などで大きなメリットとなると判断したようだ。TOBの成立後、マガシークは主力の「マガシーク」とアウトレット商品を扱う「アウトレットピーク」に続く第3のサイトをドコモと立ち上げる模様で、ドコモがECで狙うネット販売初心者やミドルユーザーを中心に新規顧客の取り込みを強化していく考えのようだ。 

 

思惑通りに進むのか

 

両社の狙いが合致する形で今回、タッグを組むことになったドコモとマガシーク。しかし、思惑通りに事は進むのか。鍵を握るのはマガシークの今後の成長だ。ドコモはマガシークの参画による「dショッピング」の拡大に期待しているだろうが、無論、期待はそれだけではない。それのみが目的であるならば、「dショッピング」における爽快ドラッグのように、資本関係を結ばずとも、商品提供面のみで連携することは可能だ。あえてマガシークを買収したのは、やはり通販でも王者を目指すドコモグループとして、マーケット規模の大きなファッションアパレルEC市場でも一定のシェアをとっていくこと。こうした思惑も当然あると見られる。

現状のマガシークの足元を見てみると直近の第3四半期(4~12月)は減収減益で、通期の売上高は期初計画を20億円近く下回る約96億円(前年同期比1.0%減)、営業損失約5億円に下方修正している。競争の激化に加えて、今期はテレビCMを夏と冬に打ったものの、放映期間だけでは投資額を回収しきれなかったほか、昨年10月から2月中旬にかけて2段階で倉庫を移転したが、既存拠点と新センターを二重で借りた期間が長引いたことで移転費用が膨らんだ。昨年9月にはシステムリニューアルを実施。刷新前後は残業などで人件費がかさんだことに加え、通販サイトのリニューアル後、売り上げに効果が表れるまでに時間がかかったことも影響した。

決して楽ではない状況をドコモとの資本業務提携でいかに打破し、ライバルのスタートトゥデイなどに対応し、同市場でシェアを伸ばしていけるか。すでにネットで服を購入することに慣れている消費者が選ぶ「売り場」は固まりつつある。「ファッションEC市場は成熟期の少し手前にあり、各社が最後の“のびしろ”をとりに行っている」(マガシークの井上社長)。競合から顧客を奪いながら、同時にドコモが持つ顧客基盤にどのように効率的に会員獲得や認知度拡大につながる取り組みを打ち、“伸びしろ”である「EC初心者層」を取り込んでいくことができるか。ドコモとマガシークの今後の行方が注視されそうだ。

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