有力仮想モール出店者に聞く”本音”とこれから~激変するeコマースの環境に対応し生き残るには~

  • 2013年11月25日
  • 2020年8月26日
  • 特集1

EC事業者に大きなインパクトを与えた、10月の「ヤフー!ショッピング」出店料無料化。各社の仮想モール戦略に大きな影響を与えることは間違いないが、果たして主役に踊り出ることはできるのか。一方で楽天市場はイーグルス優勝効果や大型セールの開催などで集客力を高め、アマゾンも存在感を増している。どのモールに比重をかけるべきなのか、そして広告出稿の変化は。有力出店者へのインタビューから、EC事業者が取るべき今後の戦略を探った。

覆面インタビュー①

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”モール間競争”勃発に期待

楽天・ヤフーでユーザー重なる

Q:今回の決定をどう受け止めましたか。

A:もちろん無料になるのはありがたいことですが、それ以上に各仮想モール間の価格競争という方向に行ってほしいですね。我々ばかりに身を削って低価格競争をしろというのはどう考えても不公平でしょう。そういう意味での起爆剤になればいい。

Q:楽天市場が値下げする方向になってくれればいいと。

:もちろん、すぐにそういう方向性には行かないだろうし、楽天も様子を見ているところでしょうけどね。楽天が調子に乗っているのは、はヤフーがだらしなくて競争の原理が働いてないからですよ。こういう刺激がないとね。楽天には誰も逆らえない、という風潮を変える方向に進んでくれればいいんですけど。孫さんは革命児だと思うし、頑張って欲しいですね。携帯電話だってNTTドコモがおかしくなってしまったのは孫さんの手柄でしょう。もちろん、それと同じになるかどうかは分からないですが。

Q:最近のヤフー!ショッピングの売れ行きは。

A:良くないですよ。どこも同じじゃないかな。ヤフー側が手を入れれば入れるほど売り上げが落ちていくという感じで。本店や楽天市場店が不調というわけではないですからね。いろいろ話を聞く限りでは大手もかなり数字が落ちてるらしいし、発表されてる数字以上に流通総額が落ちてるんじゃないかという気さえしますね。家賃が楽天と大して変わらないなら、集客力もないし、楽天に専念するよというのは当たり前の流れだし、そういう意味で無料化は最後の手段といえます。

Q:無料化発表以降はいかがですか。

A:あまり変わってないですね。手数料がタダになった分を値下げしたけど、それでも変わらない。

Q:広告戦略などで手を入れた部分は。

A:うちはスポーツ用品を扱っていますが、楽天のナンバー1店舗がヤフーへの出店を予定しているということなので、今のうちに確固たる地位を確保したいと考えています。具体的には、モール内でのリスティング広告であるストアマッチ広告を月30万円ほど出稿することにしました。

Q:有力店の出店でモール内の勢力図が大きく変わりそうですね。

A:新規出店者はまだ審査中らしいけど、他モールで実績のあるところは優遇されるそうなので、そろそろオープンしてもおかしくない頃です。今までヤフーに出てきていなかった有力店が来れば影響は大きいでしょうね。

Q:価格競争も激しくなる。

A:ただ、最近は価格面では楽天もヤフーもあまり変わらない感じなんですよね。少し前まではヤフーのユーザーは楽天ほど価格重視という感じではなかったのに、今はほとんど違いが感じられない。ユーザーは楽天・ヤフーによらず、とにかく安い商品を調べてそこで買うという感じになってるんじゃないかな。実際、顧客が重なっているのが目につきますから。

Q:出店料が安い分だけヤフーの方を安くなるケースも増える。

A:それはあるでしょうね。ヤフーと楽天は今や客層がほとんど変わりませんし、ヤフーで今の楽天並みに売り上げがあげられるならそれが一番ですから。ただ、あまりに競争が激しくなれば当然薄利になって、手数料のかかる楽天で売るのと変わらなくなるし、そこがどうなるか……。それ以前に今のヤフーには集客力がありませんから。そこがクリアされればヤフーにシフトしたいという事業者はたくさんいると思いますよ。

Q:外部リンク許可や顧客情報が保有できるようになったことについてはいかがですか。

A:外部リンクは是非やりたいと思ってます。自社サイトを強化できるならそれが一番ですからね。ただ、うちは実店舗も持っているので、戦略上自社サイトを最安値にするわけにはいかないんですよ。店への問い合わせなどで収拾がつかなくなりますから。ただ、店で扱っていないアウトレット品などは自社サイトで安く出していますから、そういうものに関してはヤフー店からうまく誘導していきたいですね。顧客情報に関してはまだ分かっていない部分もあるんですけど、ヤフーの顧客にメールマガジンを投げて、お買い得商品を自社サイトで買ってもらう、というようなことができるなら非常に面白いと思います。

ユーザー層異なるアマゾン

Q:アマゾンに関してはいかがですか。

A:アマゾンの場合、商品の型番に紐付いてそれぞれの事業者が争う形になるので難しいですね。アマゾン自体が扱っている商品も多いし、同じ商品ばかりが売れる感じです。要は「カートを取る」ことが重要なので。

Q:「カートを取る」とは。

A:ユーザーが画面右側の「ショッピングカートに入れる」ボタンを押すと自社の売り上げになる状態ですね。うちの場合だと、過去にアマゾンが売っていたものをアウトレットで安く出せたような場合はカートが取れています。ほかにもいろいろとコツはあるらしいですが。

Q:どういったものですか。

A:知り合いの家電の通販サイトから聞いた話だと、アマゾンより安い値付けをしているものやフルフィルメントbyAmazonを使っている場合、あとはユーザーからの評価が高い場合なんかも取りやすいとか。その会社の場合、検索で埋もれやすい楽天よりもカートが取れるアマゾンの方が売れてるそうですよ。アマゾンの担当者も資料を持ってきて、ある程度カートの取り方などについてアドバイスしてくれるそうです。まあ、はっきりと教えてくれるわけではないようなんですが。

Q:手数料の交渉などは。

A:これは無理ですね。まったく交渉の余地はない。基本的にはアマゾンが一番手数料が高いわけですが。ただ、「アマゾンで完結したい」という意識があるユーザーが多いみたいで、他モールより多少高くても売れます。ユーザー層が楽天やヤフーとは違う感じなので、そ
ういう意味では助かってます。

ポンパレモールも追随?

Q:ポンパレモールはいかがですか。

A:全然駄目です(笑)。このままではどうしようもないでしょうね。ただ、ヤフー無料化を受けてリクルートでもそういう方向に進むようで、退店希望者に対して「もうすぐ無料になるから辞めないでください」と担当者が説得してるらしいですよ。あと、リクルート会員に向けた販促なども計画してるとか。事業者は「リクルートなら何かあるんじゃないか」と思って店を出したわけですから、頑張ってほしいところです。(編注:運営するリクルートライフスタイルは無料化を否定)

Q:ヤフーの無料化に対して楽天のコンサルは何か言ってましたか。

A:いや、特に何もないですよ。今のところは課金を値下げしようという考えはまったくないでしょうね。ただ、小規模な事業者に関しては、楽天から徐々にヤフーに移行する、という流れにはなるんじゃないでしょうか。売り上げをある程度楽天で作っている当社みたいなところだとなかなか抜けられませんからね。小さいところから徐々に抜けていって、商品数が目に見えて減ってくれば楽天も慌てると思いますよ。ただ、ヤフーが集客力をアップしないことには始まりませんが。

Q:まだ様子見という事業者も多い。

:そうでしょうね。ヤフーをやめて楽天だけにした知り合いの会社のオーナーが「すぐにヤフーに出さないと」なんて言ってましたけど、そんなに急ぐ必要はないですよ。何しろ、ヤフーはショッピングを十何年もないがしろにしてきたんですから。ただ今回は本気でしょうし、その意気は買います。まずは年末商戦でどう動くのか。ヤフーが本当に伸びてくるのかを見極めるべきでしょう。ヤフーが今の楽天くらいの売り上げになって、自社サイトがヤフーくらいの売り上げになれば楽天店は不要になるんですけどねえ(笑)。

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