楽天が11月3日から7日にかけて「楽天市場」で実施したセールにおいて、不当な二重価格表示を行った疑いのある店舗が含まれていたことが分かった。当該店舗ではシュークリームを「通常販売価格1万2000円、産地直送価格2600円」として割引販売したが、卸元の通販サイトでは2600円で販売していた。匿名掲示板などで話題になったこともあり、卸元の企業が自社サイトでお詫び文を公表する事態に発展。これを発端に大手マスコミでも不当表示問題が報道されたことから、楽天では調査を実施。17店舗が審査プロセスを経ることなく元値を大幅に引き上げ、不当な価格表示により商品を出品していたことを明らかにしている。
シュークリームで大騒動に
楽天では東北楽天ゴールデンイーグルスが日本シリーズで優勝したことを記念し「楽天日本一セール」を実施。パ・リーグ優勝時と同じく、77%オフセールタイムセールや1001円セールなどの特別セールを行った。
不当な二重価格を行っていたとして騒がれたのは、夕張名産センターが運営する「産直食卓」。「宇治抹茶しゅーくりーむセット(10個)」を「通常販売価格1万2000円、産地直送価格2600円」と表記し「77% OFFセール」で販売した(画像①)。ところが、商品の卸元である「茶游堂」の通販サイトでは、同じ10個セットが2625円で売られていた。景品表示法では過去の販売価格を併記する場合、セール開始時からさかのぼった8週間のうち、4週間での販売実績があることが目安とされている。1万2000円で一定期間販売していたとは考えにくいため、表示が有利誤認に該当する可能性は高い。
11月4日に匿名掲示板などで産直食卓の販売手法が問題視されたことを受けて、茶游堂の林屋久太郎商店は同日、「楽天市場での弊社商品価格について」というお詫び文を公表。夕張名産センターに状況を問い合わせたことや、卸先に対して管理体制を強化することなどを明かした。産直食卓の当該商品ページは、ネット上で話題になった直後に削除。サイトも翌日には「店舗の改装中」となった。
「広告枠」で不当表示疑い
業界関係者によれば、店舗がモール主導のセールに参加する場合、販売する商品の価格表示や説明などに問題ないかどうか、事前に審査を受ける必要があるという。審査に通った場合は、セール公式サイトからジャンル別にリンクされるセール用ページに当該商品が掲載されるほか、公式サイトの検索窓から商品が検索できるようになる。
こうしたプロセスを経由せずに割引商品を販売するのが、一部報道で三木谷浩史社長が7日の会見で発言したとされる「勝手セール」だ。公式サイトからの導線こそないものの、商品名に「77%オフ」などと入れておけば、楽天市場の通常検索や検索エンジンなどからの流入は期待できるわけだ。
楽天の説明では「勝手セール」で不当な価格表示をしていたのが17店舗。前述したシュークリームのほか、スルメイカ、ダイコンの計3店舗については「新規登録された商品で過去の比較できる元値がなかった場合や、 以前からその元値が表示されており、元値の不当な引き上げとセール前の審査で認定できなかった事例」(楽天市場事業PR推進グループ)としている。
7日の会見で三木谷社長は「正式な日本一セールは厳正な審査をやっていた」と話したと一部メディアで報じられたが、11日の会見で同氏は「ミスリーディングだった」と述べたと同じく一部メディアで伝えられており、事前に価格設定を確認した商品にも不当表示があったことを事実上認めている。
同社では「引き続き詳細確認を進めている」としているが、不当表示は本当にこれしかないのか。セール公式サイトで紹介された、タイムセール商品にも不当表示の疑いがあることが本紙調査で分かった。
タイムセールで「77% OFF」として紹介された掃除機。「当店通常価格7万8975円、価格9195円」で販売していた(画像②)が、12日現在、この店舗は「改装中」となっている。
当該店舗では、楽天側が強制改装措置を取ったことを認めた上で「『通常価格』という表記や価格の根拠を(楽天から)求められている」と明かす。この店舗では米国からの並行輸入品を安く販売しており、比較対照となる価格には日本の正規代理店が定めた価格を設定していた。ただ、米国で販売する同等商品は、日本で流通しているものとは型番が異なっており、このため楽天側から比較対照価格について問題視されているようだ。
業界関係者によると、タイムセール商品の枠「広告枠」として販売されているが、「一部有料枠はあるものの、実際には人気店舗が優先で、基本的には無料で掲載されている」という。ただ、当然のことながら楽天が審査した商品が掲載されるわけだ。当該店舗では「いろいろな思いはあるが、出店者という立場上、説明を求められた場合は回答を用意するしかない」と話す。
この店の場合、セール前に「残り20個」と表示されていたセール品が実際には1個しか販売していなかったと匿名掲示板などで指摘されており、「合わせ技」での改装措置となったようだ。この点について、当該店では「管理ミスで通常時にセール対象の商品が想定より売れてしまい、セール開始時に在庫が残ってない状態になってしまった」と釈明している。
楽天の認識に甘さも?
セールの「顔」ともいうべき商品で問題が発生しているのはなぜか。業界関係者は「確かに事前審査はしているが、『通常価格』の設定については店舗にゆだねている部分が大きいようだ」と実情を明かす。本紙では「セール開始時からさかのぼった8週間のうち、4週間での販売実績がない」疑いのある価格を比較対照として使ったタイムセール商品を、他にも確認している。
また、セール時に「売れている」と一部メディアで話題になった「みかん5キロセット」。セール中には通常販売価格6800円のところ、1562円と記載し販売していたが、セール終了後にも価格が6800円に戻らなかったことからレビュー欄が炎上(画像③)。「セールが終わったあと1680円で販売とは」「高級なみかんがこの値段ならと楽しみにしていたのに、一体どういうことなのでしょうか?」など、不満の声が相次いだ。当該店舗では「9月頃まで6800円で予約を受け付けていた」などと釈明しているが、5キロのみかんセットとしては高すぎる価格。さらに直近ではこの価格での販売実績がないとみられる。もちろん、楽天の審査には通った商品だ。
本誌では以前より楽天市場の二重価格問題を調査しており、6月の「楽天スーパーSALE」では、広告枠で「当店通常価格42万円のところ販売価格13万円」として販売されたエアコンが、セール後に「当店通常価格15万3000円のところ販売価格13万8800円」として売られるなど、不当表示の可能性が高い事例も把握している。また、ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)受賞店舗の中でも不当な二重価格表示を行っている可能性のある店舗があることも記事にしてきた。
楽天では「店舗へのメールやRMS(店舗管理システム)ログイン画面などを通じて、日ごろから二重価格の正しい表示に関する確認を促すなど、事業者の意識を高める取り組みを実施している」(楽天市場事業PR推進グループ)としているが、楽天の認識の甘さが今回の事態を招いた可能性がある。
「半額品」供出難しく
騒動を受けて出店者は価格表示の修正を始めた。機能していないとみられる「通常価格」を使用していた多くのSOY受賞店舗でも「消費者の誤解と招く」(ある店舗の関係者)などとして、軒並み二重価格表示をやめている。
今後は消費者の目や楽天側のチェックがこれまで以上に厳しくなるのは必然だが、難しくなりそうなのがスーパーセールで毎回目玉としている「半額以下商品」の供出だ。在庫処分品などを除けば、「本当に普段販売している価格」で商品を多数提供するのは難しい。かといって、数量を極端に絞っての提供は「転売屋」の的になるだけ。楽天は今後の大型セールのあり方を見直す必要がありそうだ。