各種デジタル手法を活用した優れた広告やマーケティング活動を選出して表彰する広告賞「コードアワード」(主催・D2C)の贈賞式が7月10日、都内で開催され、グランプリをエバラ食品工業のウェブプロモーション施策「おくちの中の遊園地」が受賞された。また、各賞では良品計画やZ会、楽天、ヤフーなどEC関連事業者などもそれぞれ選出された。各賞ともEC事業者にとってウェブマーケティング手法の成功事例として参考になりそうだ。
「おくちの中の遊園地」が受賞
「コードアワード」とはD2C主催で12年間にわたり実施してきた優れたモバイル広告を表彰する「モバイル広告大賞」をスマートフォンを中心とする各種デジタルを介した優れたマーケティングコミュニケーション施策に対して贈られる広告賞に刷新したもの。
第1回目の「コードアワード」でグランプリを受賞したエバラ食品工業の「おくちの中の遊園地」は同社が展開する人気商品「浅漬けの素」の販促策で若い母親層を対象に「子供が楽しんで野菜を食べるきっかけづくり」をコンセプトに、パソコンの前で口を動かすだけで操作できるゲームサイトを作り、子供にヴァーチャルに野菜を食べる体験を提供。また、都内を中心に各地で開催した「骨伝導」の技術を使って野菜を口に含むと花火やロケットなどの音が体感できるキャンペーンイベントなどを展開し、家庭で食べる機会が減りつつある漬け物を子供の野菜嫌いに悩む母親に向けて訴求し一定の成果を収めたことが評価された(=下記に講演内容の一部を掲載)。
良品計画のアプリも選出
グランプリ以外の各賞では通販関連企業なども受賞。売り上げや会員獲得、イベント参加者、SNSシェア数など数値としての成果が伴った優れたマーケティング施策に贈る「ベスト・イフェクテ
ィブ」に良品計画のスマートフォン用アプリ「MUJI passport」、各種デジタルメディアとの連携により展開した施策でインパクトや斬新性などが目立つ施策に贈る「ベスト・ユーズ・オブ・メディア」には、ヤフーの音声で検索した対象物を3Dプリンタで出力する「さわれる検索」が受賞した。
また、企業・ブランドなどの商品やサービスのブランディングに寄与した施策に贈られる「ベスト・ブランディング」には雪印メグミルクが自社商品である「雪印コーヒー」の若年層への再ブランディング施策として、同商品を擬人化したオリジナルイラストを募り、各種のイベントを展開した「オレたちのゆきこたんプロジェクト」が、一般投票により選ばれる「パブリックベスト」にはロッテがアイドルグループを起用して自社商品をPRした「自撮り48」が選出されている。
なお、通教大手のZ会が実施した日本一の天才高校生を決める難問クイズ大会でネット上で生放送を行った「超難問コロシアムZ1」は「グッド・ブランディング」を、楽天が手がけた東北楽天ゴールデンイーグルス応援コンテンツ「ソーシャルビールかけ」は「グッド・イフェクティブ」をそれぞれ受賞した。
今回の「コードアワード」の審査委員を務めた“iモード”の生みの親の1人として知られる夏野剛氏(慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 特別招聘教授)は総評として「ネットが普通にキャンペーンやマーケティングがブランディングに溶け込んでネットを使いこなしている作品が多かった。また、近年はIOT(インターネットオブシングス=あらゆるモノがネットを通じて接続され、モニタリングやコントロールを可能にするといった概念)と言われているが、すでにPCやスマホ、自販機や店舗のレジといった様々なメディアを複合させてマーケティングやキャンペーン、ブランディングを行っている施策も多い。日本が恐らく世界でも一番進んでいるのではないか」と評した。
グランプリを受賞したエバラ食品工業の担当者が語る・「おくちの中の遊園地キャンペーン」について
第1回目となる「コードアワード2014」で見事、グランプリを獲得したエバラ食品工業の“浅漬けの素”の販促策である「おくちの中の遊園地」。このプロモーションを担当した同社の毛利英輔氏(商品開発部家庭用商品第一課所属)が狙いや効果について基調講演で語った。(一部を抜粋して紹介)
グランプリを受賞させて頂いた「おくちの中の遊園地」は当社の「浅漬けの素」という商品のキャンペーンサイトだ。浅漬けの素は当社の総売上高のおよそ10%、年間約45億円をシリーズで売り上げている商品で1991年5月の発売から今年で24年目のロングセラー商品となっている。
とは言え、近年の洋食化による米の摂取量の減少や購入層の高齢化などで浅漬けを取り巻く環境は厳しく、停滞市場となっていた。そこで近年、進めてきたのが、新しい価値の提案だ。これまでの副菜や箸休めというポジションではなく、「おやつ」。野菜嫌いの子供たちが楽しんで野菜を食べられるきっかけを浅漬けの素で提供できないかと考えた。2010年にテレビCMを中心にイメージの転換を図った結果、35億円程度だった年間の売上高が大きく伸び2012年には48億円まで売り上げを伸ばすことに成功した。
今回の「おくちの中の遊園地」も基本的にこうした流れを踏まえて、まだまだ多い未認知者、認知未購入者を合わせた見込み客の興味関心を広げていきたいという狙いから開始したキャンペーンだ。
これまで当社のキャンペーンはテレビCMと売り場のプロモーションが中心だったが、興味関心の裾野を広げるという意味で今回はイベントとウェブコンテンツサイトを活用した。イベントは都内の商業施設や実際の遊園地で「超食感アトラクション おくちの中の遊園地」と題し、食材の食感をかえることのできる拡張現実感デバイス「TagCandy」を応用して、特殊な棒の先についた浅漬けになった野菜を食べると、口のなかで、ジェットコースターが走ったり、花火があがったりという感覚を疑似体験できるアトラクションを開発して頂き、イベントを行った。
また、ウェブでは「食べれるWEBサイトおくちの中の遊園地」としてWebカメラに向かって口をパクパク動かすことで、擬似的に野菜を食べて遊べるゲームを作った(=画像)。
当社は主食商品の「焼肉のたれ」に広告予算が偏重する傾向にあるが、そんな中でも「食べれるWEBサイトおくちの中の遊園地」は当社の他のブランドサイトと比較しても一定のPVを獲得できた。また、ソーシャル上での評価も高く、キャンペーンサイトへのユーザーの評価として、自社内で初めて1000件を超えるフェイスブックの「いいね!」数を獲得でき、一定の評価はできるのかなと思っている。また。キャンペーン期間中の2013年4~8月の浅漬けの素の500mlの出荷実績は前年同期比103.6%と前年実績をクリアし、売上面でも評価できると思っている。