ニッセンは4月6日、大きいサイズに特化したファッションのネット販売モール「Alinoma(アリノマ)」を開設した。同社商品以外にも、国内39ブランドの商品を買えるようにした。これまで分散していた大きいサイズアパレルを集めたモールを作り、さまざまなブランドの商品を比較しながら購入できるようにする。経営再建中のニッセンでは、大きいサイズなど特殊サイズアパレルに注力しており、モール開設を大きいサイズアパレル市場の拡大につなげるとともに、新たな収益源にする狙いだ。
市場拡大と新規開拓見込む
ニッセンでは大きいサイズアパレルブランドとして「スマイルランド」を展開。同社のレディースアパレルが売り上げを落とす中で、同ブランドは売り上げを拡大しており、大きめサイズ通販の市場では圧倒的なトップとみられる。
新モールは大きいサイズアパレルに特化したもので、東京スタイルやオンワード樫山、ラ・クープ、ストライプインターナショナル、エドウイン、イトキン、フランドル、ニッセンなどが参加。開設時点では、Lサイズから最大10Lサイズまで、全39ブランドの商品が購入できる。サイト運営はニッセンが行う。目標とする流通額は非公表。
大きいサイズアパレルを一つの売り場に集約し、買い回りしやすくすることで、単価やライフタイムバリューの向上を狙う。また、これまで大きいサイズアパレルの販売チャネルは分散しており、ターゲットとなる消費者にとっては商品が選びにくい状況だったことから、同社では「マーケットとしては成長の余地がある」とみており、モール開設により市場規模拡大や新規顧客開拓を見込む。
また、大きいサイズ展開がないブランドや、3L程度までしか展開していないブランドに対しては、サイズアップ商品企画の提案や、生産受託によるサイズアパレル拡大を計画する。
同日には、東京都港区の六本木ヒルズで、サイト開設を記念したPRイベントを開催。タレントのダレノガレ明美さん、お笑い芸人のバービーさん、お笑いコンビ・おかずクラブのほか、モデル15人によるファッションショーが行われた。
新モールで経営立て直しへ
ニッセンでは近年、業績不振から大幅な赤字を計上しており、2015年には大型家具事業からの撤退や希望退職募集などの経営合理化を実施。16年12月期もカタログの統廃合や刷新、さらにはMD改革などを進めてきたものの、思うように業績は回復せず、債務超過寸前にまで追い込まれていた。
これを受けてセブン&アイ・ホールディングス(HD)では、16年11月にニッセン親会社であるニッセンホールディングス(HD)を子会社化した。16年10月に開催された、セブン&アイHDの中期経営計画に関する記者会見の席上、同社の井阪隆一社長はニッセンについて、「現在、立て直し計画を練っている最中だ。ニッセンの再建については、カタログをベースにした通販について、ゼロベースで考え直すべく打ち合わせをしている。また、大きいサイズアパレルの『スマイルランド』が強いので、さらに伸ばしていきたい」などと説明していた。
今回の新サイト開設は、強みである大きいサイズアパレル事業強化の一環といえる。確かに、大きいサイズアパレル商品を集めた場ができたことは、消費者にとって大きなメリットといえるが、まずはサイトの存在を知ってもらうことが先決。また、リピート購入してもらうためには、サイトの使い勝手を良くしたり、ポイント制を導入したりといった施策も必要になりそう。スマートフォン対応も重要だ。セブン&アイHDの“本気度”が注目される。
【ニッセンHD・脇田珠樹社長に聞くモール開設の背景と今後の戦略は】
ニッセン親会社のニッセンホールディングス(HD)脇田珠樹社長にモール開設の狙いを聞いた。
Q:ニッセン以外の商品も販売することになるが、需要を食い合う恐れはないのですか。
A:その可能性は当然ありますが、大きいサイズアパレルが揃った場を設けることで消費者に来訪してもらえるようになれば、結果としてパイは広がる。そうなれば、今までニッセンに見向きもしなかった消費者にも買ってもらえるようになる。さまざまなブランドの大きいサイズアパレルが一つのサイトで比較できれば、それに勝る利便性はないわけです。
Q:大きいサイズアパレル市場は成長の余地があるとのことですが、どの程度まで広がると見ていますか。
A:LLサイズ以上衣料品を買う消費者の年間購入額と、それ以下のサイズを買う消費者の年間購入額を比較した場合、後者は2.5 ~3倍ほど多い。商品さえあれば需要は顕在化すると思っています。現状、LL以上衣料品の市場規模は約2000億円ですが、これが3000億円になっても3500億円になってもおかしくありません。
Q:モールを開設することで、ニッセンの売り上げも増え、さらに手数料収入も得られる。
A:そうです。
Q:オリジナル商品の展開など差別化のポイントは。
A:現状、商品単体では差別化要因は薄い。まずは一覧性があり、アリノマに来れば商品が揃うという、売り場としての利便性が差別化要因。そこでしっかり消費者が集まれば、「これまで3Lまでしか開発していなかったが、アリノマには4Lまで提供しよう」というブランドが出てくるかもしれない。ブランドがやらなければ、当社が企画するなど、パートナーシップが生まれることもありえます。
Q:集客策は。
A:まずはアリノマの存在を知ってもらうことが重要。サイトの認知度を高めながら、ブランド数を拡大してきたい。そうなれば利便性が高まり、購入する消費者も増えるので、積極的にウェブ広告などで集客したいですね。
Q:リピート購入してもらうための施策は。
A:商品が充実しないとリピートはしてもらえません。ポイント制度の導入やモールとしてのセールなども考えています。
Q:大きいサイズアパレル以外の衣料品事業はどうしますか。
A:今ある事業の中で、強みがあるカテゴリーは残して強化していく。これまでのように幅広く品揃えしていた「総合通販」というよりは、「専門通販の集合体」に変わっていきます。その中で、よりネットにシフトしていく。カタログは決して悪ではありませんが、制作に1年以上かかってしまうため、ビジネスモデル的に世の中の変化に追いつけません。これを解決するには、ネットの売り場を主戦場として、カタログは販促媒体として残す。これまでとはカタログとネットの主従関係を逆転させる。発行規模についても、部数・ページ数ともにかなり縮小します。
Q:これまで取り組んできたことの延長線上にみえますが。
A:もっと大胆に変革します。今まではやってきたつもりでも、結果としてほとんどできていませんでした。既存のビジネスモデルにとらわれていたし、全体の事業モデルを変えないといけない。今回、セブン&アイHDの完全子会社となり、構造転換できるチャンスが生まれたので、大胆に事業全体を変えていきます。