夢展望は3月31日付で、健康コーポレーションの連結子会社になる。新ブランド展開の苦戦による在庫超過と円安による原価率の高騰が重なり資金繰りが悪化。健康コーポレーションを引受先とする第三者割当増資を行い、7億4800万円を取得する。これにより健康コーポレーションは夢展望株式の73・54%を保有し筆頭株主になる。健康コーポレーションへの傘下入り後は、顧客ニーズに合ったアイテムに絞った商品展開と、オムニチャネル化を推進し事業の再建を図る。夢展望の岡隆宏社長は「会社都合での商品展開から、基本のお客様第一主義に立ち返る」と語る。夢展望の“これから”とは。
商品は顧客ニーズに合わせた展開を
夢展望は3月31日に、健康コーポレーションの傘下入り後、注力する取り組みの1つが「顧客ニーズに絞った商品展開」だという。今後は予約販売による受注予測なども参考にしつつ、シーズン中にカラーやサイズを広げ、ラインシルエットはそのままに丈や素材などのディテール違いのアイテムを拡充しバリエーションを増やす。
このため、外部のコンサルタントを活用し、トレンド情報を収集しシーズン毎に連携を図る。また、製造体制を再構築し、短納期で製造できるメーカーを活用することで、在庫を減らして展開することにした。
取り扱いシリーズもこれまでの8ブランドから絞り込みを行う予定。従来から人気のあったレースなどを使ったスイート系アイテムやOL向けアイテムに加え、美容・健康雑貨などの展開を検討しているようだ。
トレンドを追う品ぞろえに回帰する
実は、これら戦略は売り上げのピークだった2012~13年ごろに取り組んでいたものだ。当時は、レースを使った姫系アイテム「プリンセス」とセクシー系アイテム「グラマラス」、OL向けアイテム「キレイ」の3テイストを中心に展開。3週間程度で商品開発を行い、新商品を毎週投入していた。
シーズンに先駆けて行う予約販売で売れ筋を見極めて、売れ筋商品アイテムのバリエーションを拡大。短納期で商品を製造してシーズン中に売り切ることで、在庫リスクを低減することで収益性確保していた。このスキームを実現するため、販売予測と実績を管理するシステムを自前で構築。最適なタイミングで発注や値引き販売を行い、商品の回転率を高めてきた。
ただ、業績の苦戦を招いたのは、業績の急拡大を狙ったこれらの商品戦略の変更がある。シーズン中の販売機会のロスを防ぐため、事前に会社側が“売りたい”商品を決めて閑散期に大量に生産していた。だが、トレンドの変化が激しく、これまでにヒットの実績があり在庫を積み上げていたロングブーツが苦戦。ショートブーツが流行していた市場への対応が遅れた。
加えて、売り上げの上乗せを狙い立ち上げた小学生向け衣料品や、カジュアルモード系衣料品が苦戦。「上場会社として売り上げを拡大する中で、アイテムや顧客を広げる必要があった。その結果、既存客との親和性が低くなった」(岡社長)と振り返る。
購買頻度の高い層は21~22才と変わらない
原点に立ち再建をめざす夢展望。だが、売り上げが好調だった当初と現状は大きく異なるのは、主要顧客だった“ギャル層”が消えつつあることだ。消費者にとって夢展望は「ギャル向け」のイメージが強く、スマホをメーンとするウェブ広告の効率が悪化傾向にあり、顧客の流入が減少していたことも事実だった。
ターゲットは“ギャル”ではなく“160万人の既存客”にしていく──。顧客の購買頻度の高い層は21~22歳で、ここ数年で変わらない傾向があるという。売れ筋商品を分析すると、甘めのアイテムは好調に推移しており、定価販売による消化率が高いことが分かった。「顧客のニーズに合わせて商品を展開する。顧客のワードローブのすべてを提案するのではなく、『夢展望』でしか購入できない商品をしっかりと販売していく」(同)とした。
また、3月から、モデルのマギーさんをイメージモデルに起用。自社通販サイトや、実店舗の販促物などで起用する。「ポスターの掲示や動画の紹介で付加価値を高めたい」(同)とする。あわせて、雑誌への出稿も視野に入れており、ターゲットを絞った媒体を選別して出稿することで、ターゲットへの確実なリーチを図っていくようだ。
オムニチャネル化を推進
ターゲットを絞った商品展開と同時に、今後は「オムニチャネル化」を推進する。ネットと店舗の両方のチャネルを持ち、顧客が最も便利なチャネルを選んで購入することが当たり前の時代になると予想するためだ。
昨年から進めてきたこれまでのオムニチャネル展開では、実店舗展開を加速し、ネット販売で取り扱う商品の試着や購入を通じて満足度を高めてきた。現状、東京と大阪など主要都市で5店舗を構え、ネットと店舗の在庫連動を実現。顧客の要望に合わせて、ネット販売で取り扱う商品を店舗に取り寄せて試着できるサービスも実施している。店舗で獲得した顧客がネット販売を利用する傾向もみられるなど自然な相互送客が発生しているという。
将来的には、店舗ネットと店舗の顧客データを統合し、ネットと店舗の購入履歴を時系列で閲覧できるようにしたい考え。「オムニチャネルで理想的な形は、顧客の会員番号を入力すると、実店舗では通販を含めた過去の購入履歴を一覧できること。一元化したデータを参考に、店員がコーディネートを提案できるようにしたい」(同)とする。
店舗で試着、ネットで購入を実現
オムニチャネル展開を進める新たな試みとして、店頭のタブレット端末で商品の購入ができる店舗「ショールームストア」を3月7日に開設した。東京・渋谷の商業施設に「夢展望ショールームストア 渋谷PARCO店」を出店。タブレット端末を操作して商品を探すことができるほか、着せ替えアプリを使ってコーディネートをシュミレーションすることが可能となる。
商品購入は設置したタブレット端末で行い、通販サイト上で決済ができるほか、店頭で支払を済ませることが可能となる。店内で在庫があればそのまま持ち帰ることができるし、後日自宅で受け取ることができる。
品ぞろえは靴やボトムスを中心に展開した。通販サイトの3000アイテムの中から、300アイテムをラインアップした。試着の要望が多い靴は全サイズを陳列し、ユーザーは試し履きをしたうえで商品の購入を決めることができるようにした。
このほか、店頭の販促の一環として、プロジェクターやモニターを導入。外の通行人に向けて、ブランドのイメージ動画や通販サイトの売れ筋商品ランキングなどを配信し集客する。「顧客のニーズに応えられるかが重要。試着したい人は店舗で、便利に購入したい人はネットでと消費者に選んでもらえればいいと思う」(岡社長)とした。
顧客主義に回帰して業績の回復を目指す夢展望。果たして、健康コーポレーション傘下で、その強みを活かせるか注目されている。