「楽天市場」を100%活用する 6つの方法 case #2 アフィリエイト編

国内最大の仮想モールである「楽天市場」。運営する楽天では、出店する4万5000もの店舗に対し、手厚いサポートを提供している。店舗がこうした有形無形のサポートを有効活用するにはどうすればいいのか。楽天市場で売り上げを伸ばすための効果的な施策について、連載でお届けする。

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「アフィリエイトに注力したら売り上げが急速に伸びて、一時は在庫切れになりました」

楽天 アシスタントマネージャー 阿部 博嗣 氏

今回取り上げるのは、販促の基本ともいえるアフィリエイト。楽天市場の場合、全出店者が最低でも1%の報酬を支払っているわけだが、「広告と比較してどちらが効率良いのかが分からない」などの理由で、あまり積極的に活用してない店舗もいるのではないだろうか。今回は「Myu」を運営するMchicの岩科茜社長と、楽天のアフィリエイト/広告グループユーザーサポートチーム・阿部博嗣アシスタントマネージャーに、楽天アフィリエイトの効果的な活用法を語ってもらう。さらには、画像共有SNS「インスタグラム」を活用した店舗向け販促支援の成果をソーシャルメディアマーケティングチームの長谷川まどか氏に聞いた。

力あるブロガーを動かすことが重要

――楽天アフィリエイトの特徴は。

阿部博嗣アシスタントマネージャー(以下、阿部):他のアフィリエイトサービスに比べて使ってもらいやすいのが特徴です。一般的には、サイト運営者はまずサービスを手がける企業に登録、審査後に自分が紹介したい広告主を申請するという形式です。しかし、当社は申請が不要で、全店舗の商品を誰もが紹介することができます。ですから、法人・個人を問わず、さまざまなウェブサイトに使ってもらえているわけです。

――出店店舗からすると、広告を買った方がいいのか、アフィリエイトに力を入れた方がいいのか、迷うことがあると思います。

阿部:まず、発生する費用については、広告は掲載されれば必ず払う必要がありますが、アフィリエイトは商品が売れない限り必要ありません。また、売り上げの発生については、広告は表示回数が増えれば効果が出やすいのですが、アフィリエイトは紹介者が増えないと効果はなかなか上がりません。大きなトラフィックを有するブロガーが商品を紹介することで、売り上げが大きく跳ね上がることはありますが、店舗がコントロールするのは難しくなります。売り上げへの貢献度ですが、やや私の主観的な見方になりますが、アフィリエイトは店舗によって位置付けがまったく違うので、売り上げに占めるシェアはまちまちです。広告はアフィリエイトほどバラつかない印象です。掲載内容は、広告であれば出稿する店舗が「こんなバナーを出したい」など、自由に決めることができますが、アフィリエイトは媒体側がどのように商品を紹介するかを決めるので、コントロールすることができません。しかし、これにはメリットもあり、第三者の視点で紹介してもらえるということでもあります。最後にコスト効率ですが、広告は掲載費用が一定であり、「いくら売れたか」「どれくらい誘導できたか」で変わってきます。一方、アフィリエイトは従量課金なので、売れた分にしか費用は発生しません。そのため、効率という面では常に一定です。

――アフィリエイトに注力している店舗は多いのですか。

ブロガーを招き、楽天市場の店舗が出展するファ ッションフェアを定期的に開催している

阿部:アフィリエイトに人手をかけている店舗様はあまり多くないのが実情です。あまり意識することなく使っているので、運用にもあまり力を入れていない。ただ、広告は申し込みをしたり、入稿したりといった手間が発生しますが、アフィリエイトは仕組みが揃っています。例えば、一般的なアフィリエイトサービス企業の場合、自社商品を紹介してもらいたい場合は、商品データを登録しなければなりません。しかし、当社の場合は、RMS(店舗管理システム)からデータを引っ張ってくることができるので、何もしなくても全商品がアフィリエイトで紹介されうる状態が整っています。

――「アドバンスオプション」に申し込むと、成功報酬の料率を変更することができます。利益を最大化するための料率の設定は。

阿部:絶対的なものはありませんが、売り上げが高いブロガー、つまり力のあるブロガーを動かすことが重要です。アフィリエイターは売り上げ額によってS・A・B・C・Dの5段階に分かれていますが、Sランクの人気ブロガーが商品を紹介すると、下位ランクのブロガーもこぞって紹介するという波及効果も期待できます。また、単価の高い商品は、上位ランクの人なら売れても、下位ランクの人ではあまり売れないということもあります。ですから、商材による部分もありますが、ランクが高いアフィリエイターには高い料率を設定し、傾斜をつける方が良いでしょう。どのランクでも料率が同じなのは一見公平ではありますが、ランクを上げることでアフィリエイターとして強くなってもらうことが大事です。

――アドバンスオプションは2年前に無料化しました。

阿部:無料化以降、利用は4倍以上増えました。料率を増やしていただける店舗様の数を増やすことで、アフィリエイターの収益を増やす、そうなればもっと記事を書いてもらえる、ということで良いサイクルに入っています。

――出店店舗におけるアフィリエイト経由の売り上げはどの程度でしょうか。

阿部:3分の1程度が標準的です。ただ、店舗様によってまちまちで、20%台の店舗様があれば50%を超える店舗様もあります。

――「Myu」はアフィリエイトで急速に売り上げを伸ばしたとのことですが、アフィリエイト経由の売り上げ比率は。

Mchic 代表取締役 岩科 茜 氏

Mchicの岩科茜社長(以下、岩科):もともと「ママが発信するおしゃれ」というコンセプトでこぢんまりと商売をしていたのですが、3年ほど前にある女性ブロガーから「Myuの商品を紹介したい」という要望が楽天さんの方にあり、そこからアフィリエイトに力を入れ始めました。一時は80%がアフィリエイト経由の売り上げで、売れすぎて在庫を切らしてしまう状態でした。
阿部:力のあるアフィリエイターが商品を紹介すると一気に火が付いて、売り上げのあまり大きくない店舗様だと在庫切れになってしまうこともあります。
岩科:楽天市場に出店していなければ起こり得ないことなので本当にびっくりしたし、おかげさまで売り上げを伸ばすことができました。

――それまではアフィリエイトには注力していなかった。

岩科:実はもともとブロガーだったので、ブロガーが欲しいと思うような商品を作っていたのは確かです。
阿部:当社はコンタクトの取れるブロガーの数が多いので、「Myuさんの商品を紹介しませんか」とお願いをすることで、流通額を自然と上がっていきます。売れているブロガーは転換率がすごく高いので、商品さえ紹介してもらえれば自ずと結果は出ます。ブロガーにうまくハマった店舗様であれば、売り上げに占めるアフィリエイト経由のシェアが半分を超えるわけです。

――売り上げそのものも急速に伸びたわけですね。

岩科:はい。ただ、アフィリエイトだけを頼みにしてはいけないので、売り上げ規模が拡大した分、今は比率は下がっています。ただ、火が付く商品はブロガー発ということは多いです。人気ブロガーの場合、ブログで紹介した商品の色が特に売れます。他の色が売り切れても特に問い合わせがないのに、紹介された色が完売になると問い合わせが入ります。楽天さんの良いところは「この色の商品を多く仕入れた方が良いのでは?」と事前に提案してくれるところです。当社としても計画が立てられますから、ロスが少なくなります。
阿部:紹介した色がそのまま売れるので、ブロガーとしてもその色の商品が在庫切れになると売り逃しとなってしまいます。店舗様の売り上げもブロガーの売り上げも、そもそも在庫がないと意味がないので、売れそうな色に関しては、前もって担当のECコンサルタントを通じて店舗様にお知らせしています。ブロガーが紹介した色が売れるという現象については他でも同じです。逆に「これまでまったく売れなかった色が紹介されたことで急に売れた」というケースもあります。
岩科:全然動いていない商品が売れだすと、誰かが紹介したのだろうということで、スタッフが検索しています楽天さんに出店していなかったら絶対なかったことです。阿部さんには「楽天ドリームをつかみました!」といつも言ってます。私は普通の母親で、細々と続けてきましたから、本当にびっくりです。やはり、大手企業にちゃんとしたサポートを受けることは大事ですね。

――3年前と比較して月商はどれくらい伸びましたか。

岩科:当時は月商300万円程度でしたが、今は月商1500 ~ 2000万円くらいです。

――アフィリエイトを使ってここまで大きく伸びるケースは他にもあるのですか。

阿部:1つの商品が爆発するのは良くあることですが、ここまで継続的に成長するケースはかなり珍しいですね。少しずつファンのブロガーを増やして売り上げを伸ばしていったMyuさんは稀有な存在です。岩科社長がブロガー出身ということで、ブロガーの気持ちを良く分かっていたということがポイントでしょう。また、当社が手がけている「ブロガーを囲い込んで商品を提供し、記事を書いてもらう」という仕組みを継続的に使っていただけたことも大きい。一度試して成果が出ないとすぐに諦めてしまう店舗様もありますが、継続すると少しずつファンのブロガーが増えていく効果があります。

「ブロガーと店をつなげてくれる会社は、楽天さんしかありません」

――岩科さんから見て、楽天アフィリエイトサービスの強みとは。

岩科:他の仮想モールにも出店していますが、楽天さんほどブロガーと店舗をちゃんとつなげてくれるところはないです。ブロガーはあくまで個人ですから、いきなり店舗から「商品紹介記事を書いてほしい」と言われたら警戒しますよね。そこで、楽天さんという大企業が仲介することで承諾をもらいやすくなります。こういうことをやってくれる仮想モールは他にありません。
阿部:自社でアフィリエイトを手がけている強みといえるでしょうね。
岩科:仮想モール各社それぞれに良い点はありますが、家族みたいに付き合ってくれるというか、親身になってくれるのは楽天さんです。右も左も分からない時に出店したんですが、EC コンサルタントがとても良い人で、さらには阿部さんに出会って、「頑張ろうかな」という気持ちになりました。大手なのにこんなに温かいのはすごいなと思ってます。

─商品開発にあたってブロガーを意識していますか。

岩科:好まれそうなデザインにしています。また、知り合いのブロガーとコラボレーションして商品を作り、楽天アフィリエイトに出すと、そのブロガーの友人が商品を紹介してくれて、ヒット商品になるということもあります。
阿部:一度に同じ商品が紹介されると「広告くさい」と思われてしまうこともありますが、単発ではあまり効果がありません。適度な数で記事が出ると「この商品は最近人気があるのかな」というイメージをユーザーに持っていただける、という印象があります。

――今後もアフィリエイト中心で事業を進めるのですか。

岩科:それだけに頼っていてはいけないと思っています。ただ、売り上げの軸は今後もブロガーになりそうです。

阿部:アフィリエイトを使ってもらえるのはありがたいのですが、偏りすぎは良いことではありません。ですから、きちんと事業のポートフォリオを組んで、その中で柱として据えていただければと思っています。

――最近はブログを見る人自体が減っているという声もありますが。

阿部:購買者の数という点でいえば、パソコンからスマホに移ったというだけで、変わってないですね。インスタグラムが世界的に流行するなど、メディアも多様化していますが、ブログ経由の売り上げが減っているかというと、それはありません。今後は「売れる人がより売れる」「売れない人はもっと売れなくなる」という二極化が進むかもしれません。

店舗とインスタグラマー仲介提供した商品が大きく伸びる

─SNSに関しては、インスタグラム活用も進めています。

楽天 長谷川 まどか 氏

長谷川まどか氏(以下、長谷川):外部調査によると、インスタグラムに投稿された商品を購入したことがあるユーザーは30%を超えており、中でもファッションアイテムは人気があります。そこで当社では、今年からインスタグラムに注力しています。楽天市場の公式インスタアカウントとは別に、ファッションのアカウントを開設しており、今のところフォロワーは1万3000 です。一般ユーザーや楽天市場に出店する店舗様が投稿した画像をリポストする形で運用しており、ユーザーが楽天市場の商品を着用した画像(UGC)が10万件以上集まっているのが特徴です。

――ファションジャンルの出店店舗が、インスタグラムのユーザーをマッチングする企画も始めました。

長谷川:インスタグラマーと店舗様の間にスポンサー契約を結び、半年間、商品を送って商品を着用した画像をインスタグラムに投稿してもらうというものです。インフルエンサーの方へは、商品提供のみですが、みなさん楽しみながらコーディネートを投稿して頂いています。1回ごとに約30店が参加、現在は第4回まで進んでおり、アンバサダーの人数は約350名です。アンバサダーの総フォロワー数は600万人以上となっています。企画に参加するメリットとしては、知名度が上がること、インスタのフォロワー数増加です。商品を着用して紹介する際に、アットマーク以降のアカウント名や、あらかじめ指定したハッシュタグをつけることになっており、それをもとに供給元の店舗様にたどり着くことができます。また、アンバサダーの画像を商品ページや広告に転用できるのもメリットです。

――どんな成果が出ていますか。

長谷川:レディースの靴を扱っている店舗様では、2000円台のストラップサンダルを7名のアンバサダーに配布したところ、商品発送後の6月以降、かなりの売り上げ増となっています。他にも、キッズ商品を扱う店舗様の場合、2000円台のデニムのオールインワンを3名のアンバサダーに配ったところ、1月以降かなりの成果が出ており、「一番売れた商品になった」とのことです。また、楽天市場内に「スタイリングブック」というページも作っており、これはインスタグラマーや店舗など特定のハッシュタグつけて投稿した、楽天市場で売られている商品を使ったコーディネート写真を掲載、商品ページに誘導するというものです。このページ経由の売り上げが好調で、実際にインスタグラムで見たコーデをそのまま買えるという取り組みはこれまでなかったものですから、ユーザーにとっては新しい探し方であり買いといえるのではないでしょうか。

――インスタは購買意欲を喚起するわけですね。

長谷川:これはアンケート調査になりますが、楽天市場のファッション分野で直近3カ月のうちに買い物をした人の中で、楽天ファッションのインスタフォロワーと、まだフォローしていない人を比較しました。楽天市場のファッション関連ページに関して、週1回以上閲覧している人の割合は、フォロワーが非フォロワーを23ポイント上回りました。楽天市場でのファッション購入頻度についても、月1回以上購入している人の割合はフォロワーが非フォロワーを34ポイント上回っています。1カ月以内に5000円以上購入している人もフォロワーが非フォロワーを27 ポイント上回りました。

――スタイリングブックは面白い取り組みですね。

長谷川:店舗様が同様の取り組みをしているケースもあって、成果を上げています。インスタは商品ページに直接リンクできないので、自社で運用するのであれば受け皿ページの作成が必須だと思っています。今後は店舗様が楽天市場でスタイリングブックのようなコンテンツを簡単に作れるサービスを提供したいですね。

――アンバサダーを活用する店舗からの反響は。

長谷川:無料ということもあり、非常に好評です。普通、こうしたサービスを広告代理店経由で利用するとかなりの費用がかかります。そのため、回を追うごとに申し込む店舗様が増えています。

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