押さえておきたい「LINE」のEC活用法 第2回 【ビジネスコネクト】

LINE Bizセンター ビジネスコンサルティングチーム マネージャー 佐藤 瑛実 氏

当コーナーでは、国内に7000 万人の月間アクティブユーザーを抱える「LINE」の活用法について、LINE の担当者に解説してもらいます。2回目は「LINEビジネスコネクト」を取りあげます。前回紹介した公式アカウントの場合、メッセージ配信はフォロワーである「友だち」全員に対して同じタイミングで送ることになります。一方、ビジネスコネクトはLINE と顧客企業のシステムをつなぎ、ユーザーを絞ってメッセージを出し分けることが可能になります。メルマガに代わる新たな情報発信チャネルとして大企業を中心に利用が広がっているようです。ビジネスコネクトの特徴や使い方などについてLINE の佐藤瑛実氏に説明してもらいます。

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企業はどうしてビジネスコネクトを使うの?

ビジネスコネクトと公式アカウントとの違いを説明しますと、公式アカウントの場合はたくさんの友だちに対して同一のタイミングで同一のメッセージを一斉に配信することになります。つまりマス向けのアプローチです。
これに対してビジネスコネクトはLINEとクライアント企業のシステムをAPIでつないでメッセージを配信するため、友だち全員に配信することもできますが、「1to1」であったり、特定の属性に対して「1対N」で送ることも可能です。ビジネスコネクトは公式アカウントとセットにして使う「API型公式アカウント」というものと、ビジネスコネクト単体で「ビジネスコネクトアカウント」として使うケースとに分かれます。

ビジネスコネク トはLINE と利 用企業のシステ ム間をAPI でつ なぎ、企業とユ ーザーで1to1 や双方向でのコ ミュニケーショ ンが可能になる

新しくアカウントを開設する時にどちらにするかはアカウントを選ぶ際に悩まれることもありますが、アカウントの目的を明確にすると、それほど悩まなくなると思います。簡単に言いますと、公式アカウントはマスでの“新規獲得”で、ビジネスコネクトアカウントは“CRM”というイメージです。

つまり、電話やメールなどのコミュニケーションチャネルが衰退してきている中で、ビジネスコネクトアカウントを使われる企業さんは自分たちの手が届く範囲のユーザー向けに「LINE」のチャネルを設けて継続的にユーザーとコミュニケーションをとっていきたいというところが多いです。

逆に公式アカウントを選択される企業さんは、「LINE」が抱える7000万人のユーザーの中から新規のユーザーを獲得します。サービスラインアップや商品群が少ない場合は、クーポンや商品情報を一斉配信し、個別の対応はあまり必要ありません。しかしアパレルやコスメなどを扱う企業さんであれば、個々の趣味・嗜好、相性といった点から細かくパーソナライズできます。そういう企業さんはAPI型公式アカウントにして、公式アカウントではブランディングなどをしつつ、ビジネスコネクトで1to1でコミュニケーションをとってエンゲージメントを高めていくというパターンが多いです。

7月末時点で、ビジネスコネクトアカウントは80アカウント、API型公式アカウントは120アカウントが使われており、毎月7、8アカウントずつ増えている状況です。

公式アカウントはメ ッセージはすべて の友だちに一斉に 配信されるが、ビ ジネスコネクトを 使うと配信先をセ グメントして最適 な属性に向けて メッセージを送る ことができる

導入方法や費用面はどうなっているの?

ビジネスコネクトを導入・運用するにあたっては、当社が公式にパートナー契約を結んでいる広告代理店やシステムベンダーなどが13社あります。導入は基本的にパートナー企業を通じて行っております。
ビジネスコネクトアカウントの運用にかかる費用については、パートナー企業が個別に設定しているため各社で少し違ってきますが、イメージとしてはツール費込みで月額100万円前後になります。これにメッセージを配信した際に1通ごとに通数課金がされ、その料金は大体2~5円となっています。
また、公式アカウントを開設していてビジネスコネクトも利用する、いわゆるAPI型公式アカウントの場合ですと、ビジネスコネクトアカウント費用はかかりませんので、月額の費用はその分安くなります。
クライアントさんからお話を聞くと、パートナー企業の選定では、値段が安いからというよりも、機能面などを見て選んでおられるようです。というのもAPIを通じたコミュニケーションでは、いろいろなコンテンツを配信できます。例えば、画像・動画・音声・位置情報・スタンプなどを送れますが、どのコンテンツを配信できるかによって、キャンペーンなどの施策時に多様性が広がります。当社でもAPI関連のオプションを提供しており、そうしたものに素早く対応できているかといった点もパートナー選定時に重視されているようです。あるいは運用時にどのような企画を行うかといった提案内容もパートナー企業ごとに異なりますので、そこも選択の際の材料になるかもしれません。

導入までの期間は2~3カ月が目安となります。導入に向けてキャンペーンや企画の中身を詰めたり、コンテンツの制作、使用する単語の選定、個別マニュアル作成などを行います。また、ECサイトのデータベースと連携させる場合は、EC側のシステムとつなぐ必要があるため、導入までに半年程度かかります。LINEへの申請はリリース開始の10 営業日前までであれば大丈夫です。

LINE はビ ジネスコネ クトの導入 にあたって 13 社とパ ートナー契 約を結んで おり、ツー ルの提供な どはパート ナー企業が 行っている

運用の仕方はどうしたらいいの?

次に実際に運用を始めてからですが、公式アカウントをやっていれば友だちはいると思われますが、ゼロからビジネスコネクトアカウントを立ち上げた場合は、友だちの獲得が必要になります。

友だち獲得のためにビジネスコネクトアカウントでも打てる「ダイレクトスタンプ」などの広告メニューをINEでも用意していますし、オウンドメディアや店舗を使って告知してもらい友だちを集めます。
友だちを集めた後に大事になるのは、そのアカウントがどういうことができるのかをきちんと訴求するということです。これをしないとあまり成功しません。今はリッチメニューという画面の下部分に表示できるコンテンツを設けており、それを使っていただいてアカウントで何ができるかを伝えるの重要です。あるいは、友だち追加した際のメッセージで、どういうアカウントかをちゃんと説明することも大切です。企業さんによってはユーザーが接点を持つのは「LINE」の中だけではないので、特設のランディングページ(LP)を作って、LINE アカウントで設けている機能をLP経由でユーザーに明示しています。
ビジネスコネクトの運用方法は自由度がかなり高く、定まったやり方があるわけではありません。そのため企業さんは自社のアカウントで何ができるかをお伝えしていただきたいと思います。実際にうまく運用されている企業さんは、アカウントをどの様に育てていくのか、ユーザーとどうコミュニケーションをとるのかをきちんと考えておられることが多いです。

メッセージ配 信では、ボタ ンを使ったも のや横に画像 が並ぶカルー セル型のもの など、ビジネ スコネクト独 自のテンプ レートを用意 している

どんな時にメッセージを送るの?

公式アカウントの場合は、ゴールデンタイムなどメッセージの配信に適した時間帯がありましたが、ビジネスコネクトでは事情は異なってきます。
例えばECであれば、ユーザーがカートに入れてから離脱したとして、30分以内にメッセージを配信すると、一番コンバージョンが高いようです。気持ちがホットなうちに送るという設定をされている企業さんが多いです。それ以外では、「値下げしました」や「お気に入り商品が入荷しました」「残り1点です」といった内容のメッセージはリアルタイムにコミュニケーションをとる必要があります。「残り1つ」というメッセージが遅れて配信されると、メッセージが届いた段階には当該商品がなくなっている可能性があります。ですから、在庫データと連動させて即時にメッセージを送ることが求められます。

ただ、こうしたECとの連動を行うには、ユーザーがECサイトに登録しているID と「LINEアカウント」を紐付けなければいけません。そのためのツールとしては、最近ではユーザーが紐付け作業を行うとスタンプを提供するというインセンティブ型の「ミッションスタンプ」がよく利用されています。あるいは、EC サイトに「LINEログイン」という機能を導入すると、ユーザーはECサイトでのログイン時に「LINE」との紐付け作業が自動的に行えるため、ECサイトとLINEアカウント双方に連携したというユーザーがじわじわと増える傾向にあるようです。

メッセージを配信する際のコツはあるの?

ビジネスコネクトは通数課金のため、配信数を気にされることはあります。ただ、メールと比べるとCVRは倍以上、CTRだけだと10~15倍といった企業さんもいらっしゃいます。

やり方としましては「カート落ち」「値下げ」「再入荷」「残り1つ」といった様々な顧客のステイタスがありますが、すべてに対してメッセージを配信しなくても、最初はまず「カート落ち」のお客様にだけ配信してみて成果を見るといったことでも良いと思います。
具体的な使い方として、リッチメニューを使って会員証のような機能として使われることもアパレルさんなどでは見られます。これにより手軽にオンラインでも店頭でも顧客情報を一元的に管理することが可能になるため、利用される企業さんは多いです。リッチメニュー内の会員証の欄をタップするとバーコードの画面に遷移するパターンや、トーク画面にバーコードが表示されるものなどいくつか形式はあるのですが、目的は同じです。
リッチメニューは最大6分割(上段× 3+下段× 3)してそれぞれに別の内容の画像を使えますが、上段はキャンペーンなどの告知に使われる場合が多いようです。その場合、下段では会員証やクーポン提供などの機能を盛り込むといった形になります。また、6分割して使えるのですが、分割せずにまとめて1つのコンテンツだけを見せるということも可能です。
ちなみに、プッシュでキャンペーンの告知メッセージを送った際に、リッチメニューでも同じ内容のキャンペーン情報を告知していると、圧倒的にリッチメニューのほうがクリック率は高くなります。つまりリッチメニューのほうがユーザーはタップしやすいようです。推測ですが、親指の可動域としてリッチメニューの場所がちょうど具合がいいのだと思われます。また、プッシュメッセージをきちんと見てほしい際などには一時的にリッチメニューを非表示にしておくことも管理画面からできます。
メッセージを送る際にもボタンやカルーセル型で複数の情報を並べて表示することなどもできます。これらはビジネスコネクトならではの独自のテンプレートを用意しています。

失敗しないためのコツを教えて

ビジネスコネクト運用にあたって、最初はミニマムスタートだったとしても、ゆくゆくはどういう形でスケールさせるのか先を見据えて設計されることをお薦めします。
それなりの投資になりますので、コンテンツやキャンペーンを事前に考案されていないとなると、ツール費用だけがかさみ効果が薄いということにもなりかねません。どういう世界観を作って、どんなコミュニケーションを行うのかを決めていただきたいです。もちろん困った際は当社やパートナーがいつでもご相談に乗らせていただきます。

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