有力EC実施企業各社に聞いた今年の景気の行方は?

株安で幕を開けた2016年。これまで市場規模を拡大してきたEC業界だが、今年はどのような年になるのだろうか。EC事業者だけでなく、大手仮想モールも“次の手”を準備しているとみられる。市場はどう動くのか、消費動向は上向くのか。有力EC実施各社の予想をもとに、2016年をうらなう。

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2016年のEC市場はこうなる!①EC各社に聞く・今年の市場規模は?

今年のEC市場、74%が「拡大」「縮小」を予想した企業はなし

ネット販売実施企業は2016年の市場や景気動向についてどのように展望しているのだろうか。本誌では1月上旬までに各社に対してアンケートや聞き取り調査を実施。アンケートでは2016年の市場予想についての見通しについて質問し、「拡大する」「横ばい」「縮小する」という3つの選択肢の中から回答を選んでもらった。その結果、「拡大する」という回答は74%、「横ばい」は26%、「縮小する」は0%となった(グラフ参照)

ECへの参入はまだまだ増える

「拡大する」とした企業の声を見ると、まだまだネット販売の利用が広がるとの意見が多く、EC化率がさらに伸びていくとの予想が目立った。

具体的に見ていくと、まず大手通販企業で「ネット通販の参入障壁の低さにより、まだまだ参入企業が増えると思っている」(千趣会)といった反応のほか、テレビ通販実施企業からも「ネット通販の拡大は継続すると見ている」(日本テレビ)との声が寄せられた。ほかにも「大手EC企業が牽引し、拡大が続く」(ヒラキ)や、「ネット通販のさらなる拡大」(マルハニチロ)などのほか、「web通販の一般化がさらに進む」(ムラウチドットコム)、「EC向けのテクノロジー・ITの開発が進む」(アダストリア)などの反応もあった。

さらに特徴的な回答としては、EC専業企業が“EC化率”というキーワードを使って市場拡大を予想する声があった。

例えば「日本全体の低いEC化率の上昇」(アスクル)、「海外諸国と比べて全体的にEC化率がまだ低く、それゆえEC化率の向上の余地はまだまだ大きいと思われるため」(ロコンド)、「国内EC化率の成長と越境ECの成長」(白鳩)といった具合だ。

“機能性表示”が健食に追い風か

「拡大」と予想した理由に「機能性表示食品制度」を挙げる企業も目立った。同制度は安全性機能性に関する必要事項を国に届け出ることで「機能性表示食品」として販売できるというもので、2015年4月に施行している。

各社の反応を見ると、「機能性表示制度の導入により、健康食品市場は拡大する見込み」(山田養蜂場)といったものや、「高齢化社会と機能性表示食品制度の開始」(えがお)、さらには「機能性表示などにより健食が伸びる」(北の達人コーポレーション)という回答があった。加えて「機能性表示食品など、健食を扱うメーカーにとっては追い風が吹いている」(日本第一製薬)といった声も。

「拡大する」という理由として“利便性”にフォーカスした回答もあった。「利便性向上(短時間配送など)」(ベルーナ)や「通販の利便性拡充で、若年層と高齢者の利用者拡大を見込んでいる」(ミズノ)、「利便性、ライフスタイルの変化」(dazzy)といったものだ。

こうした回答のほかに「通販市場全体は、社会認知度がさらに上がり、購入手段の一つとして、より一般していく」(アベルネット)、「通販利用者の増加と環境の整備」(夢グループ)など、“認知度”や“環境整備”という言葉で拡大を予想する企業もあった。

スマホの普及などによりEC化率はますます向上していくのだろうか

売り買いのハードルが低下

「拡大する」と予想した回答理由としてほかには、「中小の事業者やC2Cのサービスが増えている。また、今までは閲覧の道具だったスマホが注文や出品につかわれるようになり、売り買いのハードルが下がってきている」(キタムラ)というものもあった。

あるいは「2017年4月以降の消費税率アップを前に駆け込み需要が入ることも予想され、市場は拡大するものと期待する」(田中貴金属ジュエリー)など、スマホの利用拡大や2017年の消費増税前の駆け込み需要によって市場拡大を予想する企業も。

さらには「冷蔵・冷凍商材の拡大」(マルハニチロ)といった声や「グローバル視点で販路拡大の可能性有り」(アダストリア)、「異業種企業の参入活発化」(アクアクララ)などの意見も寄せられた。

ヒット商材の気配なく…

「横ばい」と予想した企業の回答を見ていくと、テレビ通販実施企業からは「通販業界を牽引する大型ヒット商材の気配がなく、消費税増税の導入による駆け込み需要も先のことであるため」(ロッピングライフ)という回答があった。

ほかには「アマゾンや楽天市場のようなプラットフォーム型の通販市場は成長すると思うが、単品通販会社は参入会社も多く、大きな成長は見込めないと思われる」(ティーエージェント)や「楽天やアマゾン、ヤフーなどのモールは成長しているが、価格比較サイトの集客が減少しているため」(ディーライズ)といった具合に、大手の仮想モールが成長していく一方で、その他の企業は苦戦するといった見方をする企業もあった。

あるいは「消費動向を見る中で、来年度までは安定的な見方が強いため」(全日空商事)という回答や、「昨年の消費増税以降、個人消費における動向は依然厳しさを増してきており、消費者心理としても本当に必要なもの、本当に良いものしか購入が進まない傾向にある」(JALUX)、「通販自体の伸びは予測するものの、所得環境の改善が見られないため」(RHトラベラー)などの意見も寄せられた。

なお、「縮小する」と予想する企業は、1社もなかった。このように今回のアンケートでは市場規模が拡大するとの見通しが目立った。

インバウンドをどう取り込むか

また、本誌は聞き取りでも景気動向を探った。そこでは「ECや訪日外国人のインバウンド需要は伸びており、市場全体も拡大すると思う」(トランスコスモス・日本直販事業)と予想する声があった。

そのほか「ネット通販は相変わらず成長しているので、全体としては伸びるだろうが、総合通販企業は厳しいのでは」(スクロール)や、「商品の企画開発力や海外での知名度などでインバウンド需要をどの程度取り込めるか企業間格差が出てくる」(オルビス)という意見もあった。あるいは「IoTなどを使い、ネット通販の進化した形が生まれるのではないか」(ブルックス)と予想する企業も。

足元は暖冬の影響で苦戦

また、2016年の足元の状況についても聞き取り調査を行ったところ、暖冬の影響で苦戦しているとの声が多く聞かれた。

例えば「暖冬の影響で厳しい。コートや『あったかインナー』などは売れない」(ベルーナ)や、「暖冬の影響で11月から12月中旬にかけて苦戦したが、キャンペーン等の効果もあり、12月下旬以降は持ち直した」(ディノス・セシール)、「足元はよくない。例年より暖かいことが響いている」(JAFサービス)など。

さらにテレビ通販系でも「12月は掃除用品を軸に売り上げが例年以上に伸びたが、暖冬の影響もあり1~2月でどの程度、冬物が売れるかがポイントになりそう」(テレビ東京ダイレクト)との声が聞かれる。これは百貨店でも同様のようで「百貨店の強みが出せる企画は引き続き好調で、昨年12月の『おせち』の売り上げも前年比20%増だった。一方で衣料品は暖冬の影響を受けている」(高島屋)とのこと。

2桁増と好調の企業も

その一方、「昨年に種まきしてきたことが花を開き始めており、足元の業績は順調」(カタログハウス)との声も聞かれ、「通販サイトの12月の売上実績は前年同月比で120%と好調を維持」(全日空商事)や、「月次売上高は2桁増収と足元は堅調」(世田谷自然食品)、「12月は堅調。1月もまずまず」(オルビス)、「順調。月次では2桁増収で推移している」(ダイドードリンコ)といった堅調な出足を見せる企業も多く見受けられた。

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