SNSはダイレクトマーケティングの究極 アライドアーキテクツ 中村壮秀代表取締役社長×大橋茂社外取締役

SNSを活用した企業のマーケティング活動を支援しているアライドアーキテクツでは、近年、ネット販売でのSNSキャンペーン企画や越境ECなど通販業界向けの支援サービスを強化している。3月末にはテレビ通販最大手のジュピターショップチャンネルの社長として同社の拡大の礎を築いた大橋茂氏を社外取締役に迎え、グローバルビジネスやテレビ通販などに関わる幅広い経験・ノウハウを共有。新体制が見た通販業界の現状と今後の展望とは。

スポンサードリンク

住友商事時代 からの縁で社外取締役に就任

テレビ通販での実績と
豊富な海外経験にも期待

――お二人の付き合いが始まったのは、ともに住友商事で働いていた頃からなのでしょうか。

大橋茂社外取締役(以下、大橋):ショップチャンネルに行く1カ月くらい前の頃、ちょうど住友商事で入社2年目の彼と出会ったのが最初でした。直属の上司部下ではありませんでしたが、よく話をするようになりました。非常に面白そうな人物だと思ったので私の方から声をかけました。初めて見た時に非常に「成功するオーラ」を持っているなと感じました。滅多に感じることではないので良く覚えています。
中村壮秀代表取締役社長(以下、中村):私にとっては本当に大先輩ですし、私も大橋さんとの関係をずっと続けたかったので(会社を辞めた後も)大きな変化があれば報告したり何かいいビジネスの話があれば紹介したりして、時々会えるような関係を続けられるように努力していました。

――大橋さんはショップチャンネルでの社長時代に会社を大きく成長させた実績を持っています。

大橋:1998年から2005年までいましたが、入ったころは売り上げが42億円くらいだったと思います。それが2004年には503億円、2005年は途中までいましたがその時に761億円くらいにまでなり、2006年には997億円となりました。私が特別に優秀だったというわけではないのですが、時と場所を得たのだと思っています。

─今回、大橋さんを社外取締役に迎え入れた経緯とは。

大橋:(ショップチャンネルや住友商事などが出資するタイで通販専門チャンネルを運営するショップ・グローバル・タイランドにおいて2013年より社長として設立から陣頭指揮を執っていたが)昨年秋ごろにタイでの仕事に区切りが着くことが決まったので、中村さんにどこか面白い会社の社外取締役を紹介してくれないかとメールでお願いしていました。それからしばらくして「我が社でどうですか」という話を頂いたので、さっそくこちらに伺って実際に色々と社内を見させてもらったところ非常にやっていることも面白そうだったので、そこからはとんとん拍子に就任の話が決まっていきました。
中村:大橋さんは住友商事の中でも圧倒的な成功体験を持っている人です。当社より全然大きい規模を経験されており私たちが見たことのない景色を見られているわけなので、経営アドバイスもたくさんいただきたいです。また、今はソーシャルの世界もどんどんグローバルになっているので、そういったグローバリゼーションの面でも相談にのっていただきたいです。

大橋:もしここがコンベンショナルな業界であったならばやらなかったのかもしれませんが、とにかく何らかの面白みを感じたのです。私は長年ダイレクトマーケティングをやっていたのですが、今やSNSはダイレクトマーケティングの究極の姿だと思っています。ターゲットが明確であり、データが豊富にあり、コンタクトポイントが多いということです。アナログ人間の私にとっては新しい刺激が求められることになると思います。
中村:私も、結局Eコマースとはダイレクトマーケティングのような世界なのだと感じています。大橋さんは顧客の心を掴むような心理的なアプローチを以前からどんどんチャレンジされていました。その感覚とソーシャルとネットが組み合わさったような世界観は必ずやって来ると思います。

今、具体的にそういった事業を始めているわけではないのですが、必ずどこかでダイレクトマーケティングと大橋さんの知見と私たちの持つソーシャルメディアが融合した何かができるような気がするのです。

――就任されてからこの1カ月間で感じられた、実際の社内での空気について。

大橋:若い人たちが早く戦力になろうとしているのをとてもよく感じます。やはり(上の人間が)ある程度方向性を出してあげれば、それを「達成するんだ」というように応えられる人材はたくさんいるでしょう。また、多分これから会社が大きく成長するに従って、古い会社と付き合うことも増えてくると思います。古い会社にもそこでの良さがあって、例えば儀式とか本音と建て前の使い分けなど。その辺の通訳としての潤滑油みたいなものに役立つこともできると思います。
中村:もはやネットが画面をはみだしてきており、スマートフォンやパソコンの中におさまっている時代はこれまでだと思っています。すべての産業がネットにつながるような時代の気配があるので、我々のようなネットビジネス企業の経営者も変わらなくてはいけません。既存の産業の方もきちんとリスペクトして、その中で良い落としどころを見つけていくべきです。ITと既存産業との融合は向こう10年ぐらいの大テーマになるでしょう。

FBの広告運用支援で

越境ECを後押し

――大橋さんは現在タイにいらっしゃいますが、そこでの仕事内容とタイの通販の印象はどうでしょうか。

大橋:現在は(タイ国内流通大手の)サハグループ内でのSNSを使った物販のアドバイザーをはじめ、サハが持つメディアのアドバイザーなどをやっています。
日本の通販の場合はまず紙があって、そこからテレビが出てきてという流れですが、タイの通販では紙がなくていきなりテレビやネットの世界になりました。そのため、まだまだ開拓する余地が十分にあると思います。ネットの通販は味気なく無機質でエンターテインメント性に乏しいということがテレビ通販との最大の違いです。そのために取り扱う商品も変わってくるのですが、その辺の住み分けがまだうまくできていない印象です。日本もそうでしたが、コンテンツに対してどこか無神経で、顧客ごとのニーズへの対応がまだできていないと思います。

--データマイニングのやり方はテレビよりもネットの方が進んでいるイメージがありますが。

大橋:確かに(オペレーターが聞き取りする必要がある)テレビよりもネットの方が傾向やデータは取りやすいです。ただ、データをまだまだ十分に利用し切れていないということでしょう。ターゲットごとの把握もまだ足りないので、タイに来てからはどのようなデータをどうやって収集していくのかなどはよく言い聞かせています。

――大橋さんの直近の経歴がタイにあるので今後タイで何らかの展開があるのかと考えてしまうのですが、それについては。

中村:日本の企業が海外に進出する際どんなマーケティングをするのかとなった時、以前のように大手商社がやっていたファンクション(役割)が今後はどんどんデジタルに置き変わっていく可能性があります。現在フェイスブック(FB)のアクティブユーザーが16.5億人いると言われており、海外で何か売りたいとなった時にFBに広告を出すケースも増えています。当社ではここの交通整理を急ピッチで進めています。当然その中にSNS大国のタイもカバーレッジとして入ってきますが、ただ、どちらかというと今は中国というものが大きくなっているのでそこに注力していくのが先だとは考えています。

――FB広告運用に関する支援サービスとしては具体的にはどのようなものがありますか。

中村:海外越境ECを行う国内企業に向けて、世界各国の言語や文化に最適化したFB広告の運用をワンストップで支援するパッケージサービスの提供を開始しました。広告運用を国・地域ごとにローカライズして「戦略設計」「広告クリエィティブ制作」「広告運用の最適化」「効果測定・レポート」を一気通貫で支援するものです。全ての行程を日本語で行えるため国内で行うマーケティング施策と同様の感覚や期間で、世界市場における最適なFB広告の活用が実現できます。越境ECを本格展開する前に対象国のユーザーの反応を見たり、今後の海外戦略策定の参考にするなどテストマーティングにも活用できると思います。

今後の通 販市場の鍵を握る“動画コマース

顧客ごとにマッチした

コンテンツが重要

――今後の通販市場の展望についてはどう見ていますか。

大橋:やはりネットの動画化というのが相当なテーマになってくると思います。今までのように大きなスタジオも必要なく、作業自体は簡単にできるようになりました。あとはコンテンツのアイデアをどうやって生み出していくか。探し出していくか。それをどのように加工して面白さを出していけるかだと思います。面白さは年代によっても、人種によっても、クラスによっても違うでしょう。そういったものにどうやってうまくストライクを投げていけるか。ストライクでないとお客さんも球を振ってくれないわけですから、ますますセレクティブになっていますね。

――動画の使い方が今後の大きなキーワードになってくるということでしょうか。

中村:動画コマースみたいなものは本当にこれからだと思っています。テレビ通販とネット通販では画面の大きさや時間の使い方も含めて動画の在り方が大きく異なってきます。例えば今、中国では(海外の店頭から商品を実況中継する)越境ECアプリの「bolome(ボロミー)」などが消費者目線であることから人気となっています。まだできたばかりのサービスなのですが、まさにテレビ通販の要素とネットの融合があらわれているものです。
当社も、中国で影響力を持つインフルエンサーをたくさん抱えている現地企業と提携しました。そこでもやはり動画の重要性はよく語られており、私も現地でのイベントに参加したりしていくので今後彼らのネットワークを使いながら色々とやっていくのも有効かもしれません。これから、大橋さんの培われていた感覚とネットの融合がどのような形で進んでいくのか非常に楽しみです。

プロフィール

中村 壮秀(なかむら・まさひで)

アライドアーキテクツ代表取締役社長 1974年生まれ。1997年に慶應義塾大学理工学部計測工学科(現・物理情報学科)卒、同年に住友商事に入社しリテール部門にて新規事業会社の設立・運営を担当、2000年にゴルフダイジェスト・オンラインの設立に参画しEコマース事業の企画・統括、04年7月に同社Eコマース、マーケティング、システム担当執行役員に就任、05年8月にアライドアーキテクツを設立し現職。

大橋 茂(おおはし・しげる)㊧

同社社外取締役1949年生まれ。73年に住友商事入社、84年米国住友商事ロスアンゼルス支店副長代理、2000年ジュピターショップチャンネル代表取締役COO、03年同社社長兼CEO、04年住友商事事、07年同社執行役員ライフスタイル・リテイル事業本部長、13年同社顧問兼SHOPGlobal(Thailand)Co.,Ltd. 代表取締役社長兼CEO、2016年3月に現職。

プロフィール

日本での限られた滞在時間を使っての取材となった。インタビューでの話題の中心はやはりテレビ通販のことで、ショップチャンネル時代の思い出話や今後の行く末などについて本音が飛び出す場面がたびたびあった。現在の大橋氏はタイでの生活をベースに、アライドアーキテクツでの役員会などに合わせて10日間ほど日本に戻ってくるという。就任からまだ1カ月程度しか経過していないものの、時間を見つけては社内で若い社員に声をかけるなど精力的にコミュニケーションを取っているようだ。社外取締役としての任期はとりあえず1年間ということになっているが、取り組むテーマは山積している。同社にとっても大橋氏にとっても刺激的な1年になることは間違いないだろう。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG