LINE、デリバリーサービスを開始 ――「出前館」と連携、1万4000店に対応

LINEが新たに始めたデリバリサービス「LINEデリマ」

LINEは7月26日、デリバリーサービスを開始した。宅配ポータルサイト「出前館」を展開している夢の街創造委員会と連携し、通信アプリ「LINE」を通じてユーザーが飲食店のメニューを手軽に注文できるようにする。今後はカテゴリーを拡充し生鮮食品や日用雑貨、医薬品なども取り扱っていくもようだ。LINEは以前も小規模ながらデリバリー事業に着手したが、サービスを停止している。新サービスではどの程度、ユーザーから利用されるか注目される。

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ジャンルやエリアに加えチャットでの店舗検索も

LINEが新たに始めたサービスは「LINEデリマ」。全国1万4000店舗のフードメニューを「LINE」から検索して注文すると、商品が配達されるというもの。注文できるメニューにはピザ、寿司、カレー、弁当、中華、ケータリング、酒などを掲載している。

ジャンルやエリアで検索ができるほか、LINEアカウントを通じてチャット形式で店舗を探すこともできる。例えばチャット上で「寿司」や「ピザ」といった単語を入力すると、自動的に配達可能な店舗やジャンルの一覧が表示される。今後はユーザーの購入履歴や属性などをもとに、おすすめ商品をプッシュ通知したり、ランキングなどの機能も追加する計画だ。

全国1万4000店のメニューを簡単に注文できる

LINEデリマで注文するとLINEポイントが付与され、貯まったポイントは注文時に1ポイント1円として使用することが可能で、LINEの決済サービスLINE Payや、スタンプ購入などに使えるLINEコインと交換することもできるようだ。

デリバリーサービスは10%以上伸長の成長市場

過去にさかのぼると、LINEは2014年11月に高級弁当の配達サービス「LINEWOW(ワウ)」を展開。渋谷など一部のエリアのみでデリバリー事業を行っていた。LINEの出澤剛社長は「非常に大きな可能性を見出しつつも、スピード感を持って日本全国に展開していくときに、単独でやるのがいいのかと考えた」と説明する。その結果、いったん「LINEWOW」は閉鎖した。その後、2016年10月に夢の街創造委員会に資本参加し、LINEデリマの準備を進めてきたようだ。
出澤社長によると、国内のデリバリーサービスは4000億円の市場規模があり、前年比で10%以上伸長している成長市場だという。今までは電話で注文していたが、今ではインターネット、スマホと進化しており、「さらに『LINE』を通じて簡単に出前ができるようになることで、さらに市場が拡大するのではないか」(出澤社長)と意気込んでいる。

公式アカウントではチャット上で単語を入力して 検索することも可能

事前のテスト段階では女性の比率が7割以上

7月26日に行われたLINEデリマの記者発表会の場で、LINEの藤井英雄執行役員は「いますぐどこからでも」というサービスのコンセプトについて、「『LINE』というプラットフォームを用いて時間や場所に制約されず、今自分がほしいものを手に入れるということを実現したいと考えた」と述べる。
藤井執行役員によると、昨年「出前館」と共同で「出前館オンライン」というテストアカウントを立ち上げたようだ。そこで、スタンプやLINEポイントによるキャンペーン、LINE Payによる決済の促進などを行ったところ、取扱高は順調に拡大したという。
「特筆すべきは会員属性」と藤井氏。通常の「出前館」のユーザー属性とは大きく異なり、「出前館」の場合は男性45%、女性55%という比率だが、「出前館オンライン」では女性72%、男性28%と女性の比率が7割を超えた。こうした結果を踏まえ、「『LINE』が新たな顧客開拓ができることを証明した」(藤井氏)と分析する。
LINEが考えるLINEデリマが実現する世界としては、例えば「働く女性が仕事帰りの電車の中で、LINEデリマから注文して家に到着すると、すぐに出前が届いてご飯が食べられるからジムに行く時間ができた、あるいは子供と触れあう時間ができた、といった役割を担っていく」(同)とのこと。

LINEデリマの記者発表会に登壇したLINE出澤社長㊥、夢の街創造委員会中村社長㊨、吉野家河村社長

店舗側は女性客の取り込みにも期待

記者発表会では夢の街創造委員会の中村利江社長と、吉野家の河村泰貴社長も登壇した。
夢の街創造委員会の中村社長は現在のデリバリーサービスの動向について「これまで日本の出前はポストに入っているチラシやリーフレットを見て電話するのが常識だった。これがスマートフォンの普及で全く変わっており、今どんどんスマートフォンからの注文が伸びている」とする。さらに中村社長は「食品宅配の市場は現在2兆円以上に拡大しており、ますますニーズは高まっている」とし、その背景として独り暮らしの増加や女性の社会進出に伴って家で作る時間がないため、温かい食事を届けてほしいという需要が増えているという。

吉野家では「出前館」と共同で今年3月から東京・恵比寿店でデリバリーサービスをテスト的に開始。「初動から多くの利用をいただいた。今は10店舗くらいまでテスト店舗を増やしている」と吉野家の河村社長。デリバリーを利用するユーザー属性については「吉野家の店舗は8割くらいが男性だが、デリバリーの利用者は女性のほうが多いというデータも出ている」(河村社長)ようだ。
河村社長は「出前館オンライン」のユーザー属性として女性が72%にのぼるという数字に触れて「それ(女性層)は吉野家からするとどんなに頑張っても取り込みにくいマーケット。そこへの期待もある」と述べた。

LINEデリマは、集客の入り口をLINEが担い、裏側のシステムや営業面は夢の街創造委員会が行うといった役割分担で展開していく。LINEによるデリバリー市場の参入、果たしてどのような実を結ぶのだろうか。

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