ナノ・ユニバースがアプリを刷新 ――表示速度上げ、店舗送客機能も

マイストアボタンを押すと、マイストアに在庫のあるお気に入り登録アイテムが一覧で確認できる

アパレル大手のTSIホールディングス子会社でセレクトショップを運営するナノ・ユニバースは2017年12月11日、スマホアプリを大幅にリニューアルした。購入に至るまでの表示速度にこだわった“ECアプリ”に改修したのに加え、実店舗への送客につながる新機能を搭載するなど、リアルとネット(EC)の併用を促す仕掛けを本格化する。
同社では今回、ブラウザを介して動作する一般的なウェブアプリから、スマホ端末の処理で動くスピーディーな表示を実現したネイティブアプリに刷新した。
従来から同社のスマホアプリは特集などのコンテンツ制作に力を注いでおり、アクセス数も順調に伸びていたものの、消費者が欲しいと思ってもアプリ内でウェブが立ち上ってスピーディーに購入できなかったため、ネイティブアプリ化することでストレスなく買い物ができるようにした。
速度の面では、例えば4G携帯で商品検索などを行う場合、「ナノ・ユニバース」のスマホサイト(ウェブブラウザ)では結果が表示されるまでに3秒程度かかるが、新アプリは2秒以下と速く、閲覧ページ数の多いECでは大きな差が生じるという。
また、今回の改修に合わせてチャットの利便性も高めた。新アプリでは各商品ページに問い合わせボタンを配置。ユーザーがどの商品を見ながらボタンを押したかを運営側は把握できるため、利用者は気になる商品の説明をすぐに受けることができる。
まだチャット利用者の母数は少ないものの、「接客できるメリットがある」(越智将平経営企画本部WEB戦略部長)とし、問い合わせボタンを押したユーザーの購入率はサイト全体の平均値よりも10倍程度高いという。ただ、チャット機能についてはウェブで読み込んでいるため、夏ごろをメドにネイティブアプリ内に組み込んでいく計画だ。

また、今後はチャット利用者の増加に合わせて人材の確保を検討するほか、将来的には社内のルールを整備した上で、店頭スタッフのアイドルタイムを有効活用してチャット対応を強化し、人事評価に反映できるようにしたい意向だ。

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店舗に近づくと在庫のあるお気に入り登録商品を通知

アプリ利用者がリアル店舗でチェックインすると来店スタンプが貯まり、20スタンプで1000ポイントを贈 呈する取り組みも継続して行う

一方、新アプリにはリアル店舗の売り上げに貢献できる機能も実装している。アプリではお気に入り店舗(マイストア)を1店舗設定でき、当該店に行く前にマイストアボタンを押すと、過去にお気に入り登録した商品のうち、同店に在庫のあるアイテムだけが一覧で表示される。
店舗在庫については、以前から通販サイトでも確認できるようにしているが、各商品の詳細ページからそれぞれ確認する仕組みだ。アプリではマイストアボタンで一気に閲覧できるため手間がかからない。

加えて、スマホのGPS機能を活用し、ユーザーがマイストアボタンを押さなくてもお気に入り登録した商品がマイストアにあれば、利用者が当該店の近くに来たタイミングでプッシュ通知を行うことで来店を促す。
通知には「ナノ・ユニバースの○○店にあなたのお気に入り商品があります」とシンプルに表示し、これを開くと在庫のあるお気に入り商品が一覧で確認できる仕組みで、現状は店舗から200メートル以内に近づくと知らせる設定のほか、毎日、同じ場所で通知してしまうことで利用者にストレスを与えないように、同じ内容の通知は1週間以内には送らない設定だという。
お気に入り登録した商品の在庫がすぐ近くの店舗にあることが分かれば、“せっかくだから試着だけでもしていこう”という気持ちになり、来店や売り上げにつながると見ている。在庫の状況は完全なリアルタイムではないが、通販サイトの仕組みと同様に1時間ごとの更新情報をもとにしている。
さらに、新アプリでは実店舗への送客効果が見込める割引クーポンも発行する。通常、通販サイトで発行するクーポンはクーポンコードで制御し、利用者がカートでコードを入力すると安くなるが、実店舗では使用できない。同社はECだけでなく、店舗も含めた顧客購買情報に基づくさまざまなクーポンを発行。店頭でクーポンを使う場合は対象のバーコードを表示し、店舗販売スタッフが読み込むことで使用できる。
また、アプリには実店舗でチェックインすると1日1回まで来店スタンプが貯まり、20スタンプで1000ポイントを贈呈する取り組みを従来アプリから継続して行う。

実店舗とECの併用客開拓アプリで店舗送客を後押し

以前から支持されているコンテンツ力はそのまま に、スピーディーな表示速度のネイティブアプリ に刷新した

ナノ・ユニバースの自社EC売上高に占めるアプリ経由売上高はリニューアル前の時点で15%程度だが、ネイティブECアプリに刷新して以降、確実に増えているようだ。また、18年1月中旬時点のアプリダウンロード数は約92万で、刷新から1カ月程度で2万程度増えている。
人口減少に伴って国内ファッション産業のマーケット縮小は避けられず、アパレルEC市場は伸びているものの、ナノ・ユニバースはすでにEC化率が約4割に達し、ECの成長でリアル店舗の売り上げ減少分を補う他のアパレル企業とは状況が異なるため、「既存顧客のロイヤルカスタマー化が間違いなく大事になる」(越智部長)としている。同社では、スマホで事前に下調べをしてから店舗に来店した顧客は店頭コンバージョン率が大幅に上昇することが分かっており、とくに店頭とECの併用客を増やすことで成長をとめない体制を築く。

店舗起点でECを利用するようになった顧客をもう一度店舗に送客することが“伸びしろ”になると判断。新アプリで後押ししたい考えだ。

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