楽天とビックカメラの「楽天ビック」が始動 ―― 配送や設置サービス強化、独自商品開発も

楽天の三木谷浩史社長㊧とビックカメラの宮嶋宏幸社長

楽天とビックカメラは4月11日、楽天が運営する仮想モール「楽天市場」内に、家電の通販サイト「楽天ビック」を開設した。大型家電の設置や配送面などで利便性を向上させるほか、O2O施策も強化。注文当日の配送や、両社による独自商品の開発も視野に入れる。楽天では、家電販売のサービスレベルを向上することで、流通総額の拡大を図る。一方、ビックカメラでは、楽天の持つ女性ユーザーを取り込むことで、ネット販売売上高の倍増を狙う。
両社では、合弁会社として「ビックカメラ楽天」(出資比率はビック51%、楽天49%)と「楽天ビック」(同楽天51%、ビック49%)の2社を設立。前者はビックの秋保徹常務執行役員が代表を、後者は楽天の矢澤俊介執行役員が代表を務める。
新サイトは、「ビックカメラ楽天市場店」を刷新したもの。ビックの通販サイトとほぼ同数の約60万商品を扱う。大型家電の設置や配送などのサービスを強化。楽天の調査によると、「ネットで家電を購入しようとして途中で断念した経験がある」という人は約80%にのぼり、その理由としては「価格が高かった」以外にも「実際に商品を見て購入したかった」「配送設置に不安があった」が多かったという。「こうした問題を解決すれば、家電分野におけるネット販売化はより進むのではないか」(楽天の矢澤俊介執行役員)。楽天の強みである、ネット販売に関する知見と顧客基盤、ビックの強みである家電量販店ならではの商品力や配送網、店舗網を融合することで、楽天市場における家電購入のニーズを喚起する狙いだ。
配送面では、東京23区などで今夏にも注文当日の配送サービスを導入。設置についても、購入時に日付指定を可能にして、専門の配送業者による設置・取り付け工事を行う。
ビックと楽天の物流センターを連携させる。ビックの扱う商品のうち、小物については、今秋をメドに楽天の保有する神奈川県相模原市の物流センターから配送するようにする。また、楽天市場に出店する他の店舗がビックの配送網を活用できるサービスも導入する予定で、その際はビックの千葉県内の物流センターから大型商品が配送できるようになる。
ビックの店舗を活用したO2O施策については、楽天ビックから店舗の展示や在庫がリアルタイムで確認できるようにした。また、将来的にはネットで取り置きして店舗で受け取れるようにする予定。
ビック店舗には楽天の「楽天スーパーポイント」を導入。基本的に商品価格の5%を付与し、ユーザーは購入時にビックのポイントか楽天のポイントか、付与対象を選択する。6月中旬には楽天ポイントの利用も可能とする。商品面では、60万点から拡充する予定で、非家電分野の商材の取り扱いも強化する。価格については「(ビックの自社サイトと)差が出てくることもあるだろうが、ユーザーの声を聞きながら良い形にしたい」(ビックの宮嶋宏幸社長)という。
独自商品も取り扱う。まずはビックグループの専売モデルとなるVRヘッドマウントディスプレイを楽天ビックで先行発売する。今後は、両社の強みを活かした独自商品を開発する予定で、「ビックデータを活用し、女性やさまざまな年齢層の人たち向けに、ユニークな独自商品を開発したい」(楽天の三木谷浩史社長)という。

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ネット売上高倍増目指すビック

楽天市場の家電ジャンルでは、上新電機やエディオンなど、他の家電量販店のほか、いわゆる「バッタ屋」を中心とした独立系の店舗も多数出店しているが、事実上、楽天の直販となる楽天ビックがサービス面などで上回ることになる。競合店舗から不満の声が挙がる恐れもありそうだが、楽天では「『家電をもっと買いやすくしてほしい』という声に応えたサービスであり、当社としてはユーザーにとって良いサービスを出すことが重要だ」(矢澤執行役員)と説明する。サービスレベルの向上やO2O施策などにより、家電ジャンルにおける流通額増を目指す。

ビックの宮嶋社長は「店舗における新規客の取り込みが課題。女性のファンが多い、9500万人の楽天ユーザーに来てもらえるのは大きい」と楽天と組んだ理由を説明する。同社の2017 年8月期売上高は約7900億円、ネット販売売上高は約730億円だが、楽天ビックによるネット販売事業拡大と波及効果がグループ全体の業績向上に寄与するとみており、21年8月期の全社売上高は1兆円、ネット販売売上高は現在の約倍増となる1500 億円を見込む。

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