アマゾンジャパンが販売する独自開発した人工知能(AI)の「Alexa(アレクサ)」を搭載し、話しかけることで、好きな音楽を再生できたり、家電の操作や通販での商品購入ができるスピーカー型端末「Amazon Echo(アマゾンエコー)」が順調に売れ行きを伸ばしているようだ。日本では2017年からの販売開始以来、機能強化した新世代端末や画面付き端末など様々な機種を投入し、徐々に売れ行きを伸ばしてきたが、中でも11月14日から販売を開始した「Echo Flex(エコーフレックス)」は販売開始前に予約注文が殺到し、一部ではすでに納品が発売日に間に合わない事態となるなど特に好調な売れ行きを見せているよう。安価な価格設定のほか、機能性が人気となっているようだ。
電源ケーブルなしで様々な場所に設置可能に
Echo Flexは家のコンセントに差し込んで使用するこれまでのエコーシリーズにはなかった電源ケーブルのないプラグイン式端末。「エコーの発売以来、お客様はそれぞれの目的や利用形態を踏まえて創意工夫をされ、様々な場所で利用頂いてきたが、お客様から要望が多かったことの1つがケーブルが邪魔でキッチンや玄関などに置きにくいというもの。こうした要望に応え、ケーブルの取り回しの心配がなく部屋の隅々で利用できるようにし、お客様の暮らしを便利にするお手伝いができるのがこの『EchoFlex』だ」(Alexaエクスペリエンス&デバイス事業部の大木聡リージョナルディレクターAlexaアジアパシフィック)という。
電源ケーブルが邪魔にならないため、玄関や廊下、キッチンでの利用に適している形状であることに加えて、別売りの音声でオンオフや明るさ、色の調整ができるナイトライトや人の動きを感知して対応する電気や家電などの操作なども可能になるモーションセンサーを接続できるUSBポートも搭載している。
スピーカーとしての機能は他のエコー端末に比べ特別優れているわけではなさそうだが、部屋の様々な場所に設置でき、モーションセンサーなども装着可能になったことで、エコーの一般的な利用方法である会話を介した形だけでなく、「いってきます」など事前に登録しておいた特定ワードを発した際に、部屋の電気を消したり、ロボット掃除機を起動させるといった一連の動作を設定できる機能「定型アクション」の利用などにも向いている端末ではないかとアマゾンでは見ているよう。
価格は2980円と現行のエコーシリーズの全製品の中で最も安価な設定している。
予約殺到で発売日に間に合わず
同社によるとEcho Flexは9月26日のアマゾンの通販サイト上での予約販売開始後、「予約数は非常に盛況。値段も安いし、機能面でもご興味を持たれているお客様が多いのではないか」(大木氏)とし、早々に11月14日の発売日に出荷可能な数量の注文数を超え、販売開始前に出荷が11月末にずれ込むというアナウンスをサイト上で行っているなど出足の売れ行きは上々のようだ。
スマホサイズのスクリーン付き端末の売れ行き好調
アマゾンによると、エコーシリーズ全体では6月26日に発売した5.5型ディスプレイを備えた「Echo show 5」の売れ行きがよく、「そもそも日本のお客様からはスクリーン付き端末の人気が高く、Echo show 5は特に画面がスマートフォンと同等の大きさでサイズ感が日本の住環境にあっているということもあり人気で、具体的な数字は言えないがエコーシリーズ全体の販売量に占めるEchoshow 5の割合は世界で類をみないほど」(大木氏)という。
このほか、10月16日に発売したエコーシリーズで最も売れ筋である小型端末「Echo Dot(エコードット)」の本体前面に時計やタイマー、外気温などを表示できるLEDディスプレイを搭載した「Echo Dot with clock(エコードットウィズクロック)」や現行機からデザインをファブリック調に一新するなどした標準機「Echo(エコー)」、また12月5日から発売を予定しているエコーシリーズのハイエンド機種「Echo Studio(エコースタジオ)」など順次投入を行っている新端末の売れ行きにも期待を寄せており、年末の大型セールなどで拡販を図っていく狙いのようだ。
ECへの活用も徐々に
Echoを介して音声でショッピングを行う利用者も増えてきており、アマゾン自身のほか、Alexaで利用できる音声サービス「スキル」に、アマゾンがネット販売実施事業者向けに提供している独自決済サービスでアマゾンのアカウントに登録されている配送先住所やクレジットカード番号などの顧客情報を利用してそのまま決済できる「Amazon Pay(アマゾンペイ)」を連携させて音声通販を展開する通販実施企業も、直近ではニッポン放送がラジオ通販と連携して、ラジオ通販で紹介した商品などが音声を介して購入できるショッピング系スキル「ニッポン放送ラジオリビング」をリリースするなど徐々に増えつつあり、アマゾンによると物販のほか、寄付などの課金モデルも含めるとすでに100近いAmazon Pay対応スキルが出てきているよう。また、11月11日からはアイピーロジックがAmazon Payに対応したスキルのプラグインをリリース。オープンソースのECサイト構築パッケージ「EC-CUBE」を使って通販サイトを構築している通販実施企業向けの新たなプラグイン機能で、基本的なショッピングスキルの機能をあらかじめ搭載しており、比較的、簡単にショッピングスキルを開発できるようになるもの。これまでショッピング系スキルは各社がそれぞれゼロベースで開発しなければならなかったが、こうしたサービスのリリースで状況は変わりつつあるよう。
また、10月末からはこれまでアマゾンの通販サイトの商品でのみ対応していた「エコー」を介して注文商品の配送状況を音声で通知する機能を「アマゾンペイ」を導入する他の通販事業者にも開放するなどの試みもスタート。すでにパソコンや周辺機器をネット販売するドスパラや海外用のWiFiレンタルサービス「グローバルWiFi」を展開するビジョンらが導入している。現在は大手事業者らを対象に導入を進めているが、今後はAmazon Payを導入している事業者すべて(約1万社)にも門戸を広げる意向。普及し始めたAIスピーカー。これをフックに、どうECへの活用が進むのか。今後の動きが注視されそうだ。