期待のヤフーの新モール 使いこなすポイントは? どうなの? PayPay モール

新設したPayPayモール(PC版とアプリ版㊨)

ヤフーが新たに立ち上げた大手および優良店のみに出店を制限した仮想モール「PayPayモール」が本格始動した。10月16日からPC版をオープンしたが、同24日からはアプリ版(iOS・Android)もスタート。さらに11月1日からは「PayPay」で決済した場合、通常の還元率1%に加え、9%分の合計10%分を還元。加えてヤフーの有料会員「ヤフープレミアム会員」にはさらに5%、同じくソフトバンクらワイモバイルのスマホ利用者の場合もさらに5%を追加付与し、最大で20%分を「PayPay」の電子マネーで還元する「PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン」と題した大規模なキャッシュバックキャンペーンを開始。同時にテレビCMも実施するなどプロモーションも強化して集客策を本格化し始めた。通販実施各社からの関心も高い盛り上がりを見せるスマホ決済サービスの名を冠したインターネット上の新たな売り場はその期待通り、出店者にとって集客力・売上アップという福音をもたらすことになるか。PayPayモールの実力と使いこなすためのポイントとは?─。

まず、おさらいをしておくと、PayPayモールとはヤフーの仮想モール「ヤフーショッピング」でユーザーからの評価や受注商品の出荷の速さなどヤフーが定める店舗としてのレベルを一定期間、維持している優良店であり、かつ年間のヤフーショッピング経由の流通総額が1.2億円以上または出店者の中でも優良な店舗を選び表彰する「ヤフーショッピングベストストアアワード」を18年度以降受賞したことがあるなどの条件をクリアした上位の優良店または当該社、または親会社などグループ会社が上場していること、またはグループを含む年商規模が100億円以上(家電カテゴリーは500億円以上)という条件をクリアした大手企業のみが出店できる、グループ会社が運営するスマホ決済サービス「PayPay」の利用者向けのプレミアムモールという位置付けだ。同モールでは2013年の事業方針の転換以来、「ヤフーショッピング」ではやめた売り上げに応じた手数料を復活させ、売上の3%を出店者から徴収している。モールの構成も工夫。モール内の構成はシンプルにし、分かりやすさを意識。例えばファッションや家電など商品ジャンルごとに適切なデザインを採用し、また、検索のしやすさ、価格比較などの機能も見やすさなどを重視した作りにした。また、購入商品が顧客のもとに到着後、14日以内であればサイズ間違いなどの返品・交換が可能にするなる利用者にとって安心感を高める制度も導入している。

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PayPay モールの売れ行きは?

肝心のPayPayモールの売れ行きは現状、どうなっているのだろうか。ヤフーショッピングと新設したPayPayモールとヤフーの2つの仮想モール事業などを統括する同社・コマースカンパニー ショッピング統括本部長の畑中基執行役員によると、PayPay モールの立ち上げの状況について「高い目標を掲げているが、その想定通り、好調に(流通総額を)伸ばしている」と胸を張る。11月1日以降はキャンペーンによるキャッシュバックの効果もあり、型番商品などが特に順調に売れ行きを伸ばしているとし、流通額も計画通りに推移しており、出店者からも好評だとしている。

実際に出店しているEC事業者側の評価はどうか。複数のEC事業者らのコンサルティングを手掛けるHameeコンサルティングの宮本篤コンサルティング部部長は「ヤフーの思惑どおりにはいっていないのではないか。正直言って(PayPayモールの)爆発力はあまりない。『100億円キャンペーン』も徐々に浸透していく段階ではないか」と話す。

宮本部長によると確かに11月11日に実施したここ数年は毎年、実施している大型販促イベント「いい買い物の日」に関しては、売り上げが好調だった店舗は多かったようだが、これについてもヤフーショッピングの商品検索から来訪したユーザーが多いとみられるため、PayPayモールそのものが順調に推移している、とは言いがたいよう。現在、ヤフーショッピング経由の売り上げなのか、PayPayモールのサイトやアプリからの売り上げなのかが明確に表示されているわけではないが、「参照元」のURLは分かるため、手作業で「どのモールから流入したのか」振り分けることは可能という。同社のコンサルタントによれば、こうした点から施策面でのやりにくさを感じている店舗もあるようだが、今のところはヤフーショッピング経由が大半を占めているもよう。

ヤフーショッピング自体の集客力が上がっていることを考えると、PayPayモールを新設したメリットが見えてこないのが実情といえる。ヤフーは出店店舗に対して、事前に使用できるタグの指定など設定面での要望を通知し、10月24日のアプリ版のリリースに間に合うよう、出店者はトップページの構成変更や商品設定の書き換えなど、急ピッチで対応してきた店舗もあるだけに、肩透かし感は否めないようだ。
とはいえ、PayPayモールの今後については期待を寄せる事業者は多いと宮本部長は話す。「PayPayのアプリ自体は普及率が確実に高まっているし、PayPayアプリからの導線が確保できれば非常に強いと思う。日本でキャッシュレスがどれだけ進むか、ライバルとのシェア争いも重要になってくるだろう。また、ゾゾタウンが出店すればアパレルの商品数が圧倒的に増え、注目度も上がるはずだし、今後に期待したい部分もある」と話している。

また、ある出店者はPayPay モールがヤフーショッピングに対して、独自色を打ち出していく戦略を懸念している。例えば、ヤフーショッピングでは以前から販促企画として「5のつく日」というキャンペーンを実施している。PayPayモールは違いを出すという意味合いなどもあって、「5のつく日」はPayPayモールでは実施しないとしており、こうした点では不満を持つ出店者も多いようだ。

とはいえ、現状を見ると、「ヤフーショッピングの既存店の売り上げが落ちているという感じはしている」(前出の出店者) のようだ。つまりPayPayモールへ移行できていないショップは、新モールに売り上げをとられているとの見立てだ。一方で、「楽天市場」や「アマゾン」といった他の仮想モールについては、「急激に売り上げは落ちないのでは」(同)とする。ヤフーがヤフーショッピングの出店料を無料にする「eコマース革命」を実施した際も、短期的な影響は軽微だったことから、今回も競合モールが顧客をとられるようなことにはならないとみている。それは見方を変えると、現在のPayPayモールの売り上げはヤフーショッピングからの流入ではないかと推測している。その結果として「ヤフー内の商流が変わるだけで、グロスの売り上げは変わらない」(同)というわけだ。

それでもPayPayモールには相応の価値もあるとみる。今はアマゾンの偽レビューなどの問題もあり、ユーザー側は粗悪なものを買わされたくないという心理が働く。となると、一定の出店基準を設けているPayPayモールはユーザーからすると安心して買い物ができる売り場となる。ショップ側はPayPayモールに入っているだけで有利になるのではないかと評価している。

PayPay モールへの出店メリット及び効果的に活用するためのポイント、【ヤフーの畑中基ショッピング統括本部長に聞くPayPay モールの現状と今後】については、本誌にて→購入はこちら

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