【フリマアプリの現状と今後】10~20代のECの入り口に 財布の構造に変化も

オールジャンルを強 みにダウンロード数を伸ばす「メルカリ」

個人が手軽に出品して売買できる個人間取引が活発化している。中でも、スマホで撮影した画像を使って商品を出品し、自由に価格を設定して販売できる「ネット上のフリーマーケット」(フリマ)が伸長傾向にあるようだ。ネット競売と比べて、手軽に出品できスピーディに購入できるとして、スマホを使う10~20代の若年層での利用が広がっている。

ネット上のフリマの広がりによって、消費者の“サイフ”の構造が変わる可能性がある。自宅にある不要なものや、処分を検討しているものを販売して得た収入を使って、新品を購入したいとする消費者ニーズが顕在化しつつあるためだ。フリマを入口に10~20代の若年層がネットでの売買に慣れれば、将来的な通販の見込み客になる可能性がある。フリマの市場感と、各社の取り組みを見てみる。

スマホ特性生かし「早い者勝ち」の取引に

もともと、個人間ネット取引の「フリマ」は2010年ごろに登場し、10~20代向けに始まったもの。スマートフォンを主要ツールとしてアプリを設計したことで、スマホの浸透に伴って参入する企業が増えている。既存のネット競売やリアルのフリーマーケットにはないスピード感と手軽さが、スマホを使いこなす10~20代のし好に合致し、新しい個人間取引の市場を開拓している。

フリマが新たなCtoC市場を開拓したとされているのは、ネット競売にはない手軽さがあったためだ。ネット競売は、販売期間が決まっており、期間中に最も高額な入札価格を示した人が購入者となる。一定期間、商品が掲載されるためニーズや商品価値がはっきりしているものや、型番商品などは取引条件を見比べて探せるメリットがある。商品を落札するまでに、商品の状態の確認などの問い合わせに時間や手間を費やして取引を成立させている。

一方で、フリマは、スマホで撮影した商品画像を使って出品し、出品者が設定した価格で商品を販売できることが特徴。スマホで出品者に商品の問い合わせができ、早ければ数分で商品が売れるケースもあるという。ユーザーは次々と表示される新しいアイテムの中から商品を探して購入するため、「傷の有無など状態を吟味して慎重に取引するよりも、似たような趣味を持つ出品者とつながり、“早いもの勝ち”といったように衝動的に取引が成立する傾向がある」(フリマアプリ運営事業者)という。

こうしたサービスの違いから、フリマはネット競売を利用しない層を中心に浸透。手軽さが商品価値を左右しない、アパレルや雑貨などを中心に取引が活発化しているようだ。

フリマが登場した当初は友人同士のくちコミで広がっていたが、主要な事業者がテレビCMを放送したことをきっかけに、サービスの認知度が向上し、ユーザーが増加。自宅の不要なモノを売って得た資金で新品を購入するユーザーの消費サイクルを作りつつある。こうした状況を背景に、楽天などのネット企業の新規参入が進んでいるようだ。

ただ、現状の流通総額はまだ小さいもよう。今後、主要ユーザーの10~20代だけでなくネット販売のメーン顧客となる30~40代に広がれば、「将来的には市場規模は、ネット競売と並ぶ数百億円まで成長する可能性がある」(フリマアプリ運営事業者)と指摘する声もある。

メルカリ、配送の手間を解消し流通量の拡大をめざす

オールジャンル商品を取り扱うメルカリは2013年7月に、フリマアプリ「メルカリ」をスタート。4月9日時点で、アプリの1300万ダウンロード(DL)を突破している。2015年1月時点の1日の出品数は数十万アイテムで、前年同月と比べて約8倍に伸長。出品から1時間以内に取引が成立するケースが約20%となっており、1日あたりの平均滞在時間は43分となっている。「移動中などにスピーディな取引が行われているのが実態で、ユーザーの粘着性が高い」(メルカリ)と分析する。

メルカリの好調要因は、オールセグメントをターゲットにサービスを展開してきたことだ。「オールターゲットが強みになり、CMをきっかけに一気にマーケットが広がった」(同)と話す。

現状、取り扱うのは衣料品や雑貨、家具、インテリア、CD・DVDのほか、ベビーキッズ用品、家電などオールジャンルとなる。サービス開始当初は友人同士のくちコミやオンライン広告を中心に新規客を開拓。2014年以降、オールジャンルの特性を活かして、タレントを起用したテレビCMを放送し認知度を高めてきた。

今年3月からは、タレントの土屋アンナさんを起用したテレビCMを放送。土屋さんの認知度は90%と高く、年代や性別によって好き嫌いが分かれない特性がある。このため、あらゆるセグメントに対してリーチすることが可能で、新規客層である30代主婦や男性などを取り込めると判断した。立ち上がりは好調で4月から土屋さんを起用したテレビCMの第2弾を放送し、1300万DL突破にも貢献したようだ。

ただ、アプリのダウンロード件数が順調に伸びる中、個人間取引において発送の手間が利用の負担になると分析。梱包サイズや発送先によって配送料金が変わるため、ユーザーにとって出品時に送料を想定して行う値付けが難しいなどの課題があった。

こうしたユーザーの負担の解消をめざし、4月1日から、独自配送サービス「らくらくメルカリ便」の提供を開始した。ヤマト運輸と連携して展開するもので、商品の大きさや重さに合わせて3種類を用意。法人向けに展開する「ネコポス」の利用も可能となっている。送料は種類別に全国一律に設定し、値付けの際に送料を含めて設定しやすい形になっている。

サービス提供に伴い、メルカリのデータベースとヤマト運輸のデータベースを統合。QRコードを活用して配送先の個人情報を伝票に印字することが可能とし、伝票作成の手間を軽減。8月をメドに匿名で発送できる仕組みを導入する予定で、個人情報を第三者に知らせる不安の払拭を図っていく。「個人間取引の手間や不安をサービスレベルの向上によって無くすことは、流通量の伸長にかなり貢献するだろう」(同)としている。

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