携帯電話キャリア3社が共通でLINE風アプリを配信 ――商用利用も実施でネット販売事業者の活用も

5月から配信を始める「+メッセージ」の画面イメージ

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は5月9日から、新たなコミュニケーションアプリ「+(プラス)メッセージ」の配信を始める。各携帯電話キャリアをまたいで利用者同士がチャット形式で長文のメッセージの交換や写真・動画のやりとりができるもの。通信アプリ「LINE」に近い機能だが、ユーザー登録なしに“電話番号のみ”で利用できることが特徴。開始時点では個人間の利用のみとなるが、近く企業が個人にリーチするためなどの商用利用も実施していく考えで通販実施企業も顧客との接触ツールとして活用できる可能性もあり、注目されそうだ。

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SMSの後継サービス

「+メッセージ」は大手携帯電話キャリア3社が共通の仕様、アイコン、ユーザーインターフェイスで配信するコミュニケーションアプリで従来から各社が展開してきた電話番号を使って文字をやりとりできるSMS(ショートメッセージサービス)の後継サービスで世界各国の携帯電話キャリアが導入しているRCS(リッチコミュニケーションサービス)と呼ばれる技術を導入して展開するもの。

当初はすべて無料でダウンロードできるようにするが、 今後は「LINE」と同様、「スタンプ」の有料販売も行う予定(右) ※ 4月10 日開催の記者発表会で公開したデモ画面
複数人とのメッセージのやり取りも可能(中央)
「LINE」に近しい使用感でメッセージをやり取りできる(左)

従来のSMSでは異なるキャリアにメッセージを送信する際の送信可能文字数が全角70字に制限されていたほか、機種によっては絵文字が文字化けするなどの使いにくさがあったが、「+メッセージ」では文字数は全角2730字まで送信できるようにしたほか、SMSではできなかった写真・動画や地図情報、音声メッセージの送受信をできるようにし、また、複数人と同時にメッセージのやり取りができるグループメッセージ機能なども付けた。また、「LINE」などと同様に専用スタンプ(イラスト)や既読を表示する機能、QRコードの表示・読み取りによる連絡先交換機能、迷惑メールをブロック・通報機能なども備えた。なお、課金方法も1通ごとに料金を徴収するSMSで採用する従量課金ではなく、パケット通信料とした。
「SMSは電話番号だけでテキストが送れて便利という声が多い一方、お客様からは他社(他キャリア)には送りにくいとの要望が多くあった。相手がどこの携帯電話会社かということを意識することなく通信できることを当たり前にしたい」(NTTドコ

モ スマートライフビジネス本部スマートライフ推進部コミュニケーションサービス担当部長の藤間良樹氏)とし、SMSの機能を進化させるとともに、異例とも言える3社共通のサービス仕様で展開することにしたようだ。

事業者の利用も実施へ

「+メッセージ」はスタート当初は個人間のメッセージ交換のみの対応だが、事業者向けの商用利用も始めるよう。具体的な開始時期は未定だが、「LINE」などと同様に企業の公式アカウントの設置や企業スタンプの配布、企業からのメッセージ送信などを行えるようにするようだ。

「イメージとしてはカスタマーサポートや飲食店などの予約確認、申込手続、リマインド通知など企業とそのお客様の円滑なコミュニケーションをサポートできる総合的なプラットフォームにしたい」(藤間部長)という。

利用者数の目標については明らかにしていないが、5月9日から同アプリの無料配信を始め、「SMSをベースにしているため、(競合サービスのLINEのように)特にユーザー登録など必要がなく、電話番号を知っているだけで利用できる」(KDDI 商品・CS統括本部商品企画本部サービス企画部部長の金山由美子氏)というメリットを活かし、ダウンロード数を増やし、現在、主にSMSを利用している30

代以上の層の利用を促していくほか、5月以降からは各社から発売するスマートフォンおよびタブレットの各端末にはあらかじめ同アプリをインストールしておくことで利用者を増やす。
また、今後、Android搭載のフィーチャーフォン(従来型携帯電話)への対応も検討するほか、3キャリア以外のMVMO(仮想移動通信事業者)などにも導入を促していくとしている。

携帯電話3キャリアがそろって臨んだ異例の記者発表となった(左からドコモの藤間氏、KDDIの金山氏、ソ フトバンクの千葉氏)

キャリア発のメッセージサービスと言えば、2014年からサービスを始め、いまいち普及せずに2018年6月でサービスを終了する、通話しながらお互いの画面が共有でき、同じ画面を見ながらコミュニケーションがとれるauのサービス「シンクコール」を含めて、過去において成功したとは言いがたいものが少なくない中、今回の「+メッセージ」はほぼ機能性は「LINE」と同じであり、後発ながらも利用者の多い「LINE」でサービスの有用性は証明済み。また、利用感もすでに多くの利用者が把握している。そして電話番号のみで利用できるという利便性から一定の利用者数は見込めそう。
「コミュニケーションサービスとしての普及のキモはやり取りできる相手をどれくらい広げられるか。キャリアに閉じたサービスではなかなか広がらないが、(+メッセージは)3キャリアで実施して将来的にはMVMOも参加してもらおうと思っているため、十分に普及していける素地はあるはず」(ソフトバンク テクノロジーユニット モバイル技術統括 IoT事業推進本部 事業開発統括部 AIデータコンサルティング部部長の千葉芳紀氏)と普及に自信を見せている。

普及次第と言えそうだが、ネット販売実施企業でも「LINE」を介したマーケティングはもはや当たり前となっている中、「+メッセージ」も同じようにマーケティングに活用できる可能性は高そうでEC事業者は進捗を注視しておく必要がありそうだ。

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