ARミラーでバーチャルメイク体験、京東集団が日本へ投入 ――気に入った商品はEC購入、データ収集でマーケ支援も

疑似メイクで好みの化粧品を試すことができる「AR化粧鏡」(「JAPANドラッグ ストアショー」の京東集団の展示ブースにて)

「様々なブランド、商品のメイクの色合い、実際には試さずに“試せます”」──。中国大手のネット販売事業者で仮想モール事業も手掛ける京東集団(ジンドン)は今春から、AR(拡張現実)技術を使って、モニター画面上に映し出された利用者の顔に、様々な色合いの口紅やアイシャドー、ファンデーションのほか、カラーコンタクトなどを重ねて表示し、あたかも当該商品を使ってメイクをしているように見せるツール「京東AR化粧鏡」の販売を日本でも開始する。実店舗を運営する小売業者や化粧品のメーカーなどに向けて導入を促していく。

同ツールを通じ、利用者は実際に商品を試さなくとも、画面上で様々なブランドの様々な化粧品で疑似メイクができ、自身に合う化粧品を見つけ出すための1つのツールとして利用できる。気に入った商品は画面上に表示されたQRコードを通じ、当該商品を販売している通販サイトで購入したり、ドラッグストアなどに設置している場合は店頭での購入もできるという。

「AR化粧鏡」でのメイクの疑似体験による商品の販促に加えて、疑似メイクを利用していない時間帯には広告を表示できるデジタル看板として活用できるほか、試した商品や色などの利用時のデータを収集でき、マーケティングや商品開発などにも利用できるなど、複数の利点を訴求して、日本でも導入企業を増やしていきたい考えだ。

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ECアプリの機能を転用

アイシャドーは細かな塗り方も選択できる

「AR化粧鏡」は京東集団が開発したタッチパネル型の化粧品販促用デジタル機器で画面サイズが21.5インチの縦置き型と32インチの横置き型の2種類を用意した。モニターとシステムをセットで販売していく予定。販売価格は未定としている。

もともと同社が中国で配信するスマートフォン向け通販アプリで口紅など一部の化粧品の商品ページで搭載しているスマホのカメラを映し出された利用者の顔に、選んだ化粧品を重ねて、あたかも当該化粧品でメイクをしているように見せる“バーチャルメイク機能”を転用したもの。同社によるとその“バーチャルメイク機能”の効果として、商品のコンバージョン率がアップしたり、「どの商品のどの色をどの程度のユーザーが試したのか」といったマーケティングに役立つデータの収集などにも効果があがったことなどもあり、実店舗でも同様の仕組みを提供することで同じような効果が得られるのではないかと考え、製品の開発に着手。中国では昨年から京東集団が運営する中国・北京の直営店などに導入をスタート。効果検証などを行い、上々の効果が得られたことなどから、グループ外の小売事業者などにも導入に向けた具体的な動きを進めており、日本を含む海外でも拡販を開始した。

疑似メイク後はEC購入も

試した化粧品が気に入れば通 販サイトに誘導するQR コードを表示してネット購入も促す

「AR化粧鏡」では画面上のアイコンをタッチして口紅、チーク、眉墨、アイシャドー、アイライン、ファンデーション、マスカラのほか、カラーコンタクトといったカテゴリーを選択し、都度、化粧を行い、顔に重ねていく疑似メイク体験ができるもの。試したいブランドを選ぶと、当該ブランドが展開する色の化粧品を画面上で試せる。選択ブランドの1つにすれば当該ブランドの商品のみを試すこともできる。また、例えばアイシャドーなどは目頭の上は黄色、目尻は茶色というように塗り方の細かい指定も可能となっている。同社によると、疑似メイクは単に画面上の顔に色を張り付けるのではなく、顔の画像認識に特化したアルゴリズムにより、利用者の顔の特徴や輪郭を正確に識別し、頭の動きや表情に合わせて不自然にならないよう表示しているという。なお、画質は一眼レフ並みの画像精度だとしている。

画面右のアイコンをタッチすると、擬似メイクをしていない「素顔」が表示される機能もあり画面上で化粧前後の対比の確認もできる。また、疑似メイク画像は利用者のスマホなどに送信できたり、SNSでシェアすることもできる。

疑似メイク体験で気に入った商品は、画面下の購入ボタンでカートに入れることができ、カート画面で当該商品を販売する通販サイトに誘導するQRコードが表示され、利用者はスマホで読み取ることでそこからネット購入もできる。また、実店舗の決済システムやPOS機器などと連携させることで、「AR化粧鏡」を設置している店舗でそのまま当該商品を購入することもできるようになるという。

また、利用者が疑似メイク体験を行っていない時間帯にはデジタル看板として広告などを表示することもできる。静止画だけでなく、動画なども表示でき、集客ツールとしても活用できるという。

ビッグデータの収集も

「AR化粧鏡」は化粧品の疑似メイク体験による商品の販促や集客の施策としての活用のほか、今後のマーケティングや商品開発などに役立つビッグデータの収集にも寄与するという。特定の時間でどの程度、疑似メイク体験されたか、ユーザー1人あたりの平均使用時間、特定の化粧品やカラーのメイクアップ回数、疑似メイクを行った利用者の実際の商品購入率などのデータを収集できるほか、「AR化粧鏡」にはWiFi機能も搭載しており、同機が設置している周辺での人流なども測定でき、当該データを分析することで商品選定や店内の棚割り、客流の増加のほか、デジタル看板として広告を出す際に時間帯や客層によって表示する広告内容の最適化を図れたりするという。
今後、「AR化粧鏡」は機能をより拡充していくという。疑似メイクの機能として、例えば「パーティーメイク」など目的に合わせたメイク方法を画面上でアドバイスする機能や疑似メイクを出来を採点して点数に応じて商品を割引で購入できる機能、疑似メイクで使った化粧品の説明として通販サイトのユーザーレビューを表示させる機能などを追加するなどし、より疑似メイクの精度やそれによる販売促進力をアップさせていきたい考え。

小売店のほか美容院や駅などにも

京東集団では日本においても、商品の販促や集客に活かすことができる百貨店やドラッグストアなどを運営する小売事業者への「AR化粧鏡」の導入を進めていくことに加えて、美容院やネイルサロン、空港や駅などへの設置も想定しているようだ。例えば、「待ち時間」などに利用を促し、来店客や利用者が商品を購入した場合、成果報酬を得ることができる形にすることなどで設置場所を増やしていく構想などもあるようだ。

まずは3月14日から開催した美容・健康関連の商品の展示会「JAPANドラッグストアショー」に京東集団として初出展して、「AR化粧鏡」のPRなどを開始したほか、インターフェイスやシステムの日本語化を進めるとともに日本の企業の要望に応じて、例えば疑似メイクができるカテゴリーをヘアカラーや髪用アクセサリーなどまで増やしたりするなど機能強化やカスタマイズを進める意向。

日本においてもAR技術を活用した販促ツールが広がりつつあるが、先を行く中国のEC大手が仕掛ける「AR化粧鏡」の効果はどうなのか。日本でフィットするか否かも含め、注目したい。

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