11年のモバイル通販市場は33%増 ───スマホが市場拡大の起爆剤に

総務省と一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)が7月20日に発表した2011年(1~12月)のモバイルコンテンツ関連市場規模調査によると、「物販系」の市場規模は前年比32.9%増の5839億円と大きく伸びた。スマートフォンやタブレットなど、商品を比較検討しやすい端末の普及が市場拡大の起爆剤となったようだ。

オットージャパンは電子透かし技術を採用したカタログを発刊し、スマホ利用を促す

経産省の依頼を受けて実際に調査に当たったMCFでは、従来の携帯電話(フィーチャーフォン)より画面が大きくPCに似た表現力を持ちつつも、場所を選ばずにアクセスできる利便性がモバイルコマース市場に新たな活力をもたらしていると指摘。また、大手をはじめとする通販企業の多くがPCやモバイルサイトなど既存のリソースを有効活用したスマホサイトの最適化を進めたことで、既存顧客がすんなりとスマホによる買い物に移行できたと見ている。

今夏に実施した本誌調査でも、スマホサイトの開設に当たっては「携帯サイトをスマホサイトに変換した」(セシール、ディノス)などの回答が目立っており、拡大するスマホ利用者への対応としてモバイルサイトをベースにしたようだ。セシールとディノスの両社については「今後はPC版ベースでスマホサイトを構築する」とし、同様の取り組みを進める企業も多いのが実情と言えそう。

近年、成長率が低下していたモバイルの物販市場だが、通販専業だけでなく、リアル店舗を持つ専門店などもOtoO(オンライン・トゥー・オフライン)戦略の観点からスマホ対応を加速しており、再び成長軌道に乗ってきそうだ。

また、今後、海外で広がっているタブレット型端末の普及次第では、「さらなる市場拡大が期待できるのでは」(MCF)としている。

なお、総務省とMCFの調査では、モバイルコマース市場を「物販系」「サービス系」「トランザクション系」の3つに分類しており、全体では前年比16.2%増の1兆1716億円に拡大。やはり、「物販系」の伸びが全体をけん引した格好と言える。

有力企業もスマホ強化へ

本誌調査でスマホ利用者の特徴やPC・携帯版との売れ筋の違いについて聞いたところ、「フィーチャーフォンに比べて男性客の比率が高く、商品としては家具の購入が多い」(ニッセン)や「若年層顧客が多く、若者向け商品が売れやすい」(ベルーナ)、「10~40代前半までの構成比が高い」(セシール)などの声があるほか、「スマホの方が単価・点数が少ない」(ヒラキ)、「日中の入客数や買上客数に山谷が少ない」(ユナイテッドアローズ)などの特徴もあるようだ。

サイト自体の特徴については、「タッチスクリーンの操作性を意識し、個別の機能ごとにボタンをアイコン化するなど視認性・操作性を高めた」(ゴルフダイジェスト・オンライン)など、操作性を考慮した取り組みが多い。

また、今後の課題については、「スマホならでは操作性を生かしたアプリ開発を行う。カタログで掲載していない情報をスマホで流すことなども必要になる」(ニッセン)や、「スマホの売り場をウィンドーショッピングの場ではなく、いかに目的買いをしやすくするかが課題」(ヒラキ)との意見が出た。

スマホサイトの売り上げシェアについては「フィーチャーフォンをすでに逆転しており、今後はPC版との逆転もある」(ユナイテッドアローズ)との声も聞かれた。

アプリ活用でEC化促進

スマホやタブレット端末の利用者が増える中、紙媒体に紐付く顧客のネット化を進める目的でもスマホ利用を促すケースが出てきている。例えば、千趣会は今年5月上旬からスマホやタブレット端末で動画が閲覧できるチラシの配布を始めている。ナレッジワークスの無料スマホアプリを活用したもので、チラシは約195万部を配布。紙媒体では伝えきれない商品特徴などの情報を動画で提供し、実購買につなげる狙いだ。

千趣会が配布するのは「夏の超最強アイテム」チラシ(タブロイド版カラー8ページ)で、夏に向けた推奨商品15アイテムを掲載。動画は9種類を用意しており、専用アプリを起動して同チラシの「動画が見られる」マークのついた商品画像にスマホをかざすと見られる仕組み。サイトへのリンクも簡単にできるAR技術を使い、商品の在庫確認や購入手続が行えるようにした。

チラシは、全国のドラッグストアや100円ショップの購入物への同梱、ポスティングなどで展開している。

一方、オットージャパンも6月中旬、電子透かし技術を採用したカタログを通販業界で初めて発刊した。専用アプリを取り込んだスマホを誌面にかざすだけで商品詳細ページに遷移して閲覧・購入できるようにすることで、消費者の利便性を高めるとともに、コンバージョン率の向上にもつなげる。

電子透かし技術を用いたのは通販カタログ「オットーウィメン2012年盛夏号」。本誌ではなくネットユーザー向けのB5判60ページのカタログ(発行部数8万部)に導入し、当該顧客に配布した。

人の目では識別できないデジタルコードを埋め込み、印刷物と連動したデジタルコンテンツをスマホ向けに配信する大日本印刷の「QUEMA(キューマ)」を採用。利用者は専用アプリをダウンロードして起動させ、カタログに掲載されている一押し商品にスマホのカメラをかざすと、ウェブサイトで展開する商品詳細や在庫の有無、レビューなどの付加情報が閲覧できる。

通常、カタログを見ながらスマホやPCで詳細情報を閲覧する場合、トップページから検索する必要があるが、スマホをかざすだけで直接、当該商品のページに飛べるため、「より楽しくスムーズに買い物ができる」(オットージャパン)とする。QRコードのように、誌面に無機質なバーコードを記載する必要がないのも利点だ。

対象商品は表紙と裏表紙、2ページ目に掲載している一押しのワンピースとチュニック3品番のみだが、利用者の反応を検証して対象商品を拡充するとともに、本誌への採用も検討する。

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