【2011年3月号】ネット販売実施企業で“アプリ”の活用が進んでいる。アプリは「iPhone」などのスマートフォンや、「iPad」や「ギャラクシー」などのタブレット端末上で作動するもので、こうした端末の普及により、各社が“新たな販売チャネル”としてその可能性に着目。直接電話をかけて購入できる仕組みやカメラで撮影した画像との連携など、通常の通販サイトとはまた違う、携帯端末の特徴を活かしたアイデアを取り入れている。果たして今年はネット販売事業者にとっての「アプリ元年」となるのだろうか――。
iPhoneアプリで「テレビ通販」
携帯電話機能を活用し、iPhoneで「テレビ通販」を展開しているのがQVCジャパンだ。
同社は1月20日から、iPhoneでテレビ通販番組を視聴でき、番組内の紹介商品にタッチするとその場で当該商品が購入できるアプリ「QVC iShop」の配信を開始。ケーブルテレビやBS、CS局などで放送するテレビ通販番組の生放送をリアルタイムで配信するもので、同アプリの通販番組の画面をタッチすると、瞬時に当該商品の購入画面に移行する。そこで「カートに入れる」をタッチするとそのまま通販サイトに飛び、ネット購入できる仕組みだ。
また、「電話で注文」をタッチすると電話がオペレーターにつながり、問い合わせや電話注文ができるのが携帯電話の特徴を活かした試み。テレビ通販番組の配信のほか、放送中の番組で紹介する商品や最近放送した番組で紹介した商品の詳細も確認でき、ネット販売や電話で購入することもできる。
同社では今回の新アプリの配信開始でスマートフォン経由の売上高を「今期末(2011年12(総売上高の)1~2%まで引き上げたい」としており、売上高ベースでは10億~20億円弱程度としたい考えのようだ。
ツイッターとの相性の良さに着目
また、リクルートではスマートフォンとの相性の良さに着目し、ツイッターを活用したアプリを展開している。2月、ファッションやエコ雑貨などを扱う自社の通販雑誌「eyeco(アイコ)」のiPhone・iPad用アプリ「eyecoソーシャルカタログ」の提供を開始。「eyeco」の中からお勧めの商品などを選定して掲載するもので、気になる商品にはツイッターで感想などの「くちコミ」を投稿できるのが特徴だ。また、「ユーザーの質問に答えることや最新情報を発信できる」(同)とし、顧客とのコミュニケーションの場にもなると見ている。「ソーシャルとスマートフォンの相性の良さに着目した」(リクルート)とし、ツイッターでの拡散・集客を見込んでいる。
アプリで販売するのは、ファッションやシューズ、エコ雑貨など約250点。「eyeco」のお勧めの新着商品や季節の商品を選定して掲載した。ユーザーが商品をタップするとコメントや商品詳細を表示し、決済は「eyeco」のウェブページに移動して行う仕組みだ。今後は、商品数の拡充や動画の導入、さらにツイッター以外のソーシャルメディアとの連携なども検討していくという。
撮影機能活かしオフィス家具を配置
変わり種はカウネットの「オフィス家具レイアウトシミュレータby カウネット」。その名の通り、オフィス家具の配置シミュレーションができるアプリだ。iPhoneで撮影したオフィスフロア画像に、アプリに組み込まれた、カウネットが販売する机や椅子などを重ね合わせることで配置のシミュレーションができる仕掛け。家具の大きさや向きは自由に変更可能で、アプリは同社の通販サイトと連携しており、選んだ家具はiPhoneから購入できるようになっている。オフィスの移転や新規にオフィス家具購入を検討している事業者に利用してもらい、オフィス家具拡販につなげる構想だ。
スマートフォンの普及に伴って急速に拡大し始めた「アプリ」。「アプリ」の構築には多額の費用が必要な場合もあるが、最近では格安で手軽に作れるサービスも徐々に増え始めており、用途によって使い分けることなども可能だ。今後はよりスマートフォンやタブレット端末の普及が進み、いずれは従来のフィーチャーフォンの所有率を抜く可能性が高いため、こうした“アプリ”の活用はますます進みそう。先行する各社の事例を基に、一考してみる価値はあるだろう。
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