コンタクトレンズおよび関連商品の卸販売を行うアイセイは10月1日、利用者の顔写真にカラーコンタクト(カラコン)と口紅などの化粧品などを重ね合わせ、あたかも実際に着用しているように見せるバーチャル試用サービス「トータルカラーコーディネイトbyFace-AR」を開始した。
利用者は自由に好みの色のカラコンや化粧品などを選んで自身の顔に当てはめることができ、気に入った場合は、試着した商品をリンクするECサイトで購入することができる。類似サービスはすでに存在するが、多くは試用できるものカラコンだけ、コスメだけなど単独カテゴリーや導入企業の商品のみ。同サービスでは試用体験を重視するため、「顔周りのアイテム」をトータルで組み合わせて試着できるようにした。
アイセイでは同サービスをカラコンの卸先へ導入を促し、カラコンの販売支援につなげたい狙いのほか、例えば、試用可能な商品としてヘアカラーやメガネ、ピアスなどを追加するなどし、それらの商品を販売する事業者へ同サービスの仕組み自体を販促ツールとして提供したい考えもあるようだ。
実際の商品の色味を再現
「トータルカラーコーディネイトbyFace-AR」はスマートフォンで撮影した利用者の顔を撮影またはあらかじめ用意しているモデルの顔写真(2タイプ)を選び、カラコン、アイシャドウ、チーク、リップ、ヘアスタイルを個別に組み合わせて仮想試着ができるブラウザベースのウェブサービス。アイセイとウェブサービスの企画開発などを行なうOriginalsが共同開発した。
よりリアリティのある試着体験の実現するため、実在するアイテムで再現性の高いシミュレーションを目指し、例えばカラコンの場合、実物の着色直径や本人の瞳色による再現性も考慮。実際に装着した際のギャップを最小限に抑えるよう工夫。メイクアップでは元の肌や唇の質感を損ねることなく、色味をタッチアップすることができるという。
利用者自身が興味あるカラコンやコスメを選んで試着できるほか、透明感、きらめき、はかなげなどいくつかのキーワードに沿ってヘアメイクアップアーティストの名取瞳氏が監修した「トータルコーディネイト」も用意。当該コーディネイトをベースに、カラコンのみ他の色に変えるなどの使い方もできる。
スタート時点で仮想試着できる商品はアイセイが展開する人気カラコンシリーズ「エバーカラー」11色とカネボウ化粧品が展開する化粧品ブランド「KATE」のアイシャドウ7色、チーク2色、口紅6色。なお、ヘアスタイルは「ロング」「ボブ」「ショートヘア」を選べ、カラーリングも3色からできる。ヘアスタイル(ウイッグ)、ヘアカラーについては現状、実商品とは連動していない。
試用後に EC で購入も
仮想試用後に当該画面に下にフリックすると試着した商品画像と商品名、「購入」というボタンを表示。当該ボタンをタップすると商品を購入できる通販サイトまたは販売ページに遷移する仕組みとなっている。現状、カラコンについてはアイセイが「エバーカラー」の卸販売する取引先の中から12のECサイトのリンクを掲載。化粧品については楽天が運営する日用品や生活雑貨の販売サイト「楽天24」の当該商品の販売ページに直接、リンクしている。
「楽しんでもらう」を重視
「トータルカラーコーディネイトbyFace-AR」では「こだわったのは体験。自分に似合うカラコン、メイクはどういったものなのか。商品の販促よりも、ユーザーに楽しんでもらえることを重視した」(アイセイ・川部篤史執行役員)とし、カラコンやコスメといった単独カテゴリーごとではなく、顔周りのアイテムを横断して試用できるようにしたことに加えて、販促目的である他のバーチャル試用サービスにありがちな導入企業が販売したい商品のみを試用できるようにはせず、試用にたえるためにカラーバリエーションの面から必ずしも売れ筋ではない商品も試用できるようにした。
また、試用の際に「実際の商品名」を利用者に選ばせるパターンも多いが、同サービスでは例えばカラコンでは「ナチュラルブラウン」、口紅では「ピンク」などあくまで色を選ぶ仕様としており、商品名は仮想試用後に下部に表示する通販サイトへのリンクの部分のみとするなど配慮したという。
販促感を抑えて、まずはコンテンツとして楽しんで仮想試用をしてもらうことでSNSでの口コミなどを含め話題性や利用を高め、結果として販促に貢献させたい考えのようだ。
導入費用は月額30 万円
今後はアイセイやカネボウ化粧品の卸先の通販サイトなどに同サービスの実装を促していく。また、通販サイトだけでなく、卸先の実店舗にも例えば専用什器などとセットにして提案。来店客に同サービスの利用を促すことで購入の促進を支援する取り組みも実施していく。「カラコンは試着自体、簡単ではない。また、コロナ禍で化粧品も店内でテスターがそもそもなく、試しにくいという現状もある。お客様の『試してみたい』というニーズにこのサービスが応えられるのではないか」(川部氏)という。
同サービスを外部企業が導入する場合、初期費用は数十万円程度、月額は30万円程度を徴収する考え。なお、化粧品メーカーの通販サイトなどに多く導入されている某コスメのバーチャルメイクサービスの場合、年間費用は億単位となるようで、「トータルカラーコーディネイトbyFace-AR」の価格優位性は高いという。また、「トータルカラーコーディネイトbyFace-AR」を利用したユーザーデータの提供も導入企業にしていく考えで、マーケティング施策などに活かせるという利点もあるという。
ヘアカラーなど試用対象品拡 大へ
また、同サービスで試用できるアイテムも増やしていく考え。現状、利用者の顔の画像の上に重ねる形で試用できる髪型を3つの色に変えられる機能があるが、それとは別に実際の利用者の画像上の紙の色を様々に変えることができる「ヘアカラー」にも対応していく予定のほか、メガネやピアスなども増やして、こうしたアイテムも仮想試用できるようにしていくという。これらによって、例えばヘアカラー剤やメガネの販売会社にも同サービスの実装を促していきたいという。今後も利用者や導入先企業の要望などにも対応しながら機能強化などを進めていくという。