auCL、出店者にライブコマースのノウハウ伝授――「売れる」テクニック紹介

 auコマース&ライフ(auCL)は10月24日、運営する仮想モール「auPAYマーケット」出店者を対象にライブコマースのノウハウなどを指南するセミナーを開催した。

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購入へのハードル下げる

 セミナーは「ライブコマースに取り組みたいが配信で何を話せばいいのかわからない」「どのように販売すればいいのか分からない」といったEC事業者の疑問に答えるために実施するもの。auCLでは、スマートフォンアプリ内でライブコマースサービス「ライブTV」を展開しており、直営店「auPAYマーケットダイレクトストア」において社員自らが配信を担当している。セミナーでは事業推進本部新規事業推進部の大森一摩部長がライブコマースを成功させるためのノウハウを指南。さらに、経営企画本部経営企画部ライブコマース事業グループの照井憲宇氏がライブコマースの配信デモを行った。その後、出店店舗がライブコマースを実践した。

 大森氏は「ライブコマースは安くしないと売れないのでは、という声もあるが、そうとも限らない。動画かつ双方向コミュニケーションが実現できるからこそ、購入へのモチベーションが上がる商品を選ぶことが大事だ」と指摘。具体的には、衣料品や食品など、その商品を買った際のベネフィットが配信で良く分かることが重要という。一方、継続利用で効果を実感するような商品などは向かない。

食品やコスメ、ファッション、家電などと相性が良い
成功事例も出ている

 とはいえ、価格も購入の大きなポイントにはなってくる。2万円以下の商品であればライブコマースでも売れやすいという。値引きに関しては「『人気商品30%引き』というような表現ではだめ。なぜ安いのか、どれくらい安いのかを具体的にしつつ、最安値であることを伝える必要がある」(大森氏)。

 さらに大森氏は「実際のところ、配信閲覧者の多くは商品を購入する気があまりない。大事なのは『その商品がほしい』という気持ちを強くすること。購入への心理的ハードルを下げるのは演者だ」と説く。そのためにも出演者は商品について詳細に知っておかなければならない。「単に安いとアピールするだけではなく、商品のストーリー性を消費者に届けることで購買力を高めることが大事。また、商品について詳しい人の言葉を引き出すための進行役も必要になってくる」(大森氏)。

限定感をアピール

  照井憲宇氏によるライブコマースデモでは、配信の具体的なテクニックを紹介。機材はスマートフォンと三脚、簡易な照明があれば問題ないという。また、事前に台本やカンニングペーパートーク用のネタ帳を作っておいたり、実際に商品に触れて操作に慣れておいたりする必要がある。

 商品を買ってもらうためには、「課題の投げかけ」から「悩み解決のための商品紹介」、そして「値引きなど、ライブならではの限定感や付加価値アピール」、そして「購入後のイメージを想像してもらう」といった流れが良いという。「例えばコーヒーメーカーであれば、『簡単に作れるので、余裕のない朝でも本格的なコーヒーが飲めますよ』など、『これを買ったらどうなるのか』というイメージを、きちんと視聴者に伝えることが重要」(照井氏)。

 台本やカンペは、カメラから見えない場所に置いて進行する。スマートフォンに関しては、配信用を含めて2台用意すると良いという。「もう1台のスマホで、自分が配信しているライブを見ながら視聴者のコメントが確認できる」(同)。

 auCLが提供する「ライブTV」では、吉本興業の芸人が出演している番組やインフルエンサーや有名人による番組を配信しているほか、21年11月からは出店店舗が使える「ライブ配信機能」の提供を開始しており、店舗が自身で配信する番組も含めると、毎月50~60本のライブコマースがモール内で行われているかっこうだ。2022年2月23日には、吉本興業のお笑い芸人が商品を紹介するライブコマース番組「生配信!よしもと市場」を開始してから1周年を迎えることを記念し、5時間の生配信を実施するなど、近年は仮想モールとしてライブコマースに注力している。

 視聴数は生放送とアーカイブとの合計で、人気番組は5万程度、店舗が配信する番組は1万程度という。店舗配信番組の価格は1~3万円となっている。

集客力や機能に課題

ライブコマースは、中国ではメジャーな販促手法だが、これまで日本では注目こそされていたものの、あまり浸透していなかった。ただ、コロナ禍を受けた在宅時間増加や、動画サイトなどでライブコンテンツを閲覧する習慣が一般化したことなどもあり、徐々に日本においても成果が出始めているという声も聞こえる。

 ただ、ライブコマースを「新たな販売チャネル」と捉えるには、時期尚早な部分もありそうだ。今回のセミナーにも参加した、ブックオフコーポレーション総合商材EC運営部総合商材EC販売グループの平居宏朗氏は「日本のライブコマースサービスは、現状ではマネタイズが難しいように感じる」と話す。

 日本の場合、あくまで「販促」として使う通販企業が目立つ。配信内での販売だけではなく、自社ブランドの知名度向上、さらには商品を詳細に説明するためのツールとして活用しているわけだ。

 ただブックオフの場合、ライブコマースで販売しているのは中古のブランド品。つまり基本的には「1品もの」だ。「販売手数料以外に利用料まで取られると、商品の販売だけでペイするのは厳しい」(平居氏)。

 同社の場合、アメリカ向けには「ショップショップス」を、中国向けでは「タオバオライブ」を利用しており、成果を挙げているという。平居氏は、海外のサービスを比較した場合、日本のサービスは機能面でも劣る部分が多いという。「その場で簡単に購入できないし、海外サービスはオークション機能や、配信が終わってから消費者が交渉する機能などの便利な機能がある」。

 同社では越境ECも展開しているが、ライブコマースは商品情報を英語に訳す必要などもないことから、通常の越境ECと比較してもコストパフォーマンスは圧倒的に良いのだという。アメリカ向け配信の場合、1回の配信で500人程度は閲覧しているようだ。

 auCLをはじめ、日本でもライブコマースに力を入れる企業は増えている。ただ、機能面はもちろん、根本的に集客力が不足している点は否めないのも事実。日本で本当にライブコマースを普及させるためには、消費者に周知していくとともに、売りやすい・買いやすい環境を整えていくことが必要になるだろう。

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