アフィリエイト規制、本格化へ 景品表示法で初判断

  • 2021年3月25日
  • 2021年4月25日
  • 特集1

 消費者庁が今年3月、「アフィリエイト広告」を対象に景品表示法の措置命令を下した。育毛剤通販を行うT.Sコーポレーションに対するもの。これまで、アフィリエイターによる作成を前提とする広告に対する国の執行の前例はない。そのため「聖域」とみなされ、不当表示も氾濫していた。今回、表示の企業責任を初めて認定。処分は、消費者庁の執行方針の転換を意味している。今後、「アフィリエイト広告」を対象にした執行が増える可能性が高い。

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アフィリエイト「広告手法はテ レビと同じ」

 「広告手法は、テレビと同じ」。処分にあたり、消費者庁表示対策課の担当官はこう話す。「成果報酬型」という仕組みは新しいものの、代理店、孫請けと制作や放映を依頼するテレビCMと、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)を介して再委託されるアフィリエイトの広告手法自体は同義。当然、規制対象になるというものだ。

 判断にある事業者は「衝撃を受けた」と話す。これまでアフィリエイト広告をテレビや新聞、ウェブのバナー広告などペイドメディアと異なる〝特殊な広告〟と認識していたためだ。アフィリエイト広告は、あくまで第三者であるアフィリエイターによる制作物。企業の関与の度合いもケースで異なる。

 広告責任をめぐる専門家の見解も分かれる。「禁止事項を細かく指示するほど関与が深い、反対に不当表示でも一切ノータッチなら関与が薄いとみられるかもしれない」(景表法に詳しい弁護士)、「放置したらそれはそれで管理責任を問われるかもしれないが、全くの白紙委任で景表法上の責任を問えるかというと厳しい」(公取OB)などの見方があった。

 管理の難しさもある。中には、承認後、成果のために、チェックの行き届かない夜中に表示を改変して成果発生を狙うアフィリエイターもいる。「掲載可能な媒体社、広告案件も膨大でチェックしきれない。企業側も確信犯、無知のケースに分かれ、積極的に関与していないと言い逃れできてしまう」(ウェブ広告の業界団体関係者)。このため、景表法上の責任を免れる「聖域」とみる企業も少なからずいた。

2月 12 日からは「優良配送キャッシュバックキャンペーン」をスタートし、「優良配送」の活用を出店者に 促す(ヤフーの資料より)

「修正できる立場」で広告への関与を認定

 過去に執行例もない。消費者庁は18年、ブレインハーツを景表法で処分。アフィリエイト広告に対する企業の関与にも言及した。ただ、あくまで違法認定の対象は、アフィリエイト広告からリンクしたランディングページ(LP)だった。

 だが、今年3月公表のT.Sコーポレーションに対する景表法処分の対象は、アフィリエイト広告そのもの。そこで示されたのが、冒頭の見解だ。

 同時期に公表した消費者安全法に基づく「アフィリエイト広告の注意喚起」でも、広告の表示責任を企業に求めている。対象は、Libeiro(以下、リベイロ)、シズカニューヨークが販売する2商品。そこでも「ASPへの委託、再委託を承知し、広告内容を把握していた。内容が虚偽・誇大なら修正できる権限を有していたが放置した」(消費者庁政策課財産被害対策室)として、「表示内容の決定に関与した」と景表法上の責任に言及している。

 ブレインハーツの処分当時も「認定は可能だが、アフィリエイトサイトの数が多く、行政効率を考えた」(表示対策課)と取締りは否定していなかった。

シズカニューヨークは、お詫びも、「広告への関与」は否定。
リベイロも「広告への関与」は否定。

方針転換の背景に目にあまる不適切な広告の氾濫か

 方針転換の背景には、アフィリエイト広告市場の成熟があるとみられる。当初、個人の副業的要素が強かったアフィリエイトは、徐々に構造が複雑化。有力アフィリエイターの法人化や代理店による囲い込み、自ら広告主となり、アフィリエイトサイトへの誘導を目的に広告出稿を行う者の台頭など、近年は、企業との連携、組織的な関与が強まっていた。

 20年には、国に先行して埼玉県がアフィリエイト広告を対象にした景表法処分も行っている。

 今回の執行も消費者庁の強い問題意識の表れだろう。広告出稿は、ASPを介して企業が禁止事項などレギュレーションを提示。アフィリエイターが作成・申請した広告を承認する形でなされる。成果の発生以前、以後に表示内容もチェックできる。そうであれば、表示主体者の判断における「自ら内容を決定できるにもかかわらず、他の事業者にその決定を委ねた者=修正できる権限を有する」ということだろう。

 T.Sコーポレーションの場合、自ら表示への関与を認め、アフィリエイターに広告素材も提供。「決定を委ねた者というより、他者と共同で積極的に内容を決定した」(表示対策課)と、関与の度合いはより強い。埼玉県も当時の処分に「認定の手法は色々だが一般的に事業者が認めた場合が一番堅い」(消費生活課)と話す。

「アフィリエイト広告」そのものを対象に、販売企業の責任を問う、国の処分は初めて。(20 年に埼玉県が先行して判断)

ASP業界「規制は健全化にプラス」と前向きも、広告主は活用に慎重姿勢

処分を受け、企業からは「禁止事項の提示も免罪符にならない。アフィリエイトは減るのでは」、「管理しきれない。やるなら安全なところにしか頼めない」と、活用に慎重姿勢を示す声がある。

 ASP業界からは、「不正を検知できるサービスの提供など対応策も行っている。知識の習得など実施のハードルは上がっているが、広告案件は増えている」(ASP運営者)、「健全でない広告の公表自体は賛同。広告主、アフィリエイターの減少にはつながらない。健全化が進み広告は増える」(日本アフィリエイト・サービス協会)、「業界にはプラス。適正化に向けどんどんやってほしい」(別の団体関係者)と歓迎の声が占める。

 ただ、アフィリエイト広告をめぐる問題は、まだ緒についてばかりだ。同時期に公表を受けた「アフィリエイト広告の注意喚起」に対する問題がまだ残っているからだ。

「健食留意事項」ではアフィリエイト広告に対する責任に言及

注目される、注意喚起2社に対する対応

 消費者庁が対象にしたのはリベイロ、シズカニューヨークが行っていた広告。リベイロが販売する化粧品「エゴイプセライズ」は、「確実にシミが取れる?」などと広告。製品を使用すれば3日から1週間程度で肌のシミが確実に消えるかのように表示していたが、実際にそのような効果はなかった。体験談もアフィリエイターが作成した架空のものだった。また、期間限定で「通常9800円のところ、69%オフの2980円で特別セール開催中」などと表示していたが、期間の経過後も同価格で販売していた。シズカニューヨークが販売する医薬部外品「シズカゲル」も同様の広告を行っていた。

 消費者庁は、表示についてリベイロの代表者に確認。即効性がないことを認めたという。シズカニューヨークも顧客からの苦情に対し、即効性がないと説明していることを会社に確認した。これを受けて虚偽・誇大広告と判断。消費者に注意喚起した。

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注意喚起→行政処分の 流れも、健康被害と製 品の関連は現在も不明

消安法、基準なき運用に課題も

アフィリエイト違反認定の背景は本誌にて
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