田辺久美子●NTTドコモライフスタイルサービスコマース推進担当課長

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モールの力・規模が急拡大、出店者開拓へ本腰

 NTTドコモの仮想モール「dショッピング」が順調に流通額を伸ばしている。巣ごもり消費増という追い風に乗りつつ、同社の携帯電話や独自クレジットカードの利用者をポイントやクーポンをフックに集客する施策が奏功していることに加えて、昨夏からオールアバウトライフマーケティング(以下、AALM)とともに共同運営する形に転換したことを機に、ポイント付与率を高めたキャンペーンや出店事業者の販促支援策の強化、新規出店者の開拓の成功などが貢献し、大きく躍進を遂げている。NTTドコモでコマース関連事業などを管轄するビジネスクリエーション部の田辺久美子ライフスタイルサービスコマース推進担当課長が語る「dショッピング」の今後の展開とは──。

“巣ごもり”も追い風直近1年の成長著しく

「安心安全に買い物できるモール」

─「dショッピング」の現状について教えてください。

 NTTドコモは携帯電話会社ですが、金融・決済、エンタテインメント、そしてコマースなど非通信分野もスマートライフ事業として注力しておりまして、同事業の直近の売上高は6000億円規模まで成長しており、順調に伸びています。

 同事業の一環として展開しています「dショッピング」も2013年のスタート以来、順調に成長してきましたが、直近1年は特に(流通総額の)成長が著しいです。前年対比でかなり大きく(流通総額を)伸ばしています。

─「dショッピング」が成長している理由は何ですか。

 巣ごもり消費増が追い風となっていることは間違いありません。

 それに加えて、「dショッピング」のスタート当初から、闇雲に出店者を増やすのではなく、出店頂きたい優良事業者お声がけさせて頂き、厳選された商品のみを販売する質の高いECモールを目指してきました。

 「dショッピング」の中心利用者は30~50代で、さらに全国の「ドコモショップ」でスマートフォンの使い方を教えている「スマホ教室」でネット通販の利用方法をお伝えする際に、「dショッピング」をお薦めするなどでシニア層まで広い世代に利用頂いております。そのため、(競合仮想モールと比べると)利用者の年齢層が比較的高いこともあり、「安心安全に買い物ができるモール」という認識を利用者に持って頂けていることは大きいと思います。

 安心安全という意味では毎月の携帯電話代金に支払いと合算して商品代金の決済ができるキャリア決済に対応しており、特にクレジットカードを持っていなかったり、クレジットカード決済に不安感を持つお客様にとっては買い物しやすいはずだと思います。これに加えて、当社全体で注力しているポイントやクレジットカードをフックにした販促および新規顧客獲得施策も「dショッピング」の成長に寄与していると思います。

ポイントやクレジットカードの特典で集客

─ポイントやクレジットカードをフックとした施策とはどんなものなのでしょうか。

 当社では携帯電話の利用額や街のお店、ネット通販での買物額に応じて、進呈する独自ポイント「dポイント」を発行・運営しておりまして、現状、dポイントを貯めたり、使ったりできる「dポイントクラブ会員」は約8000万人となっています。先ほど申し上げたように携帯電話の料金に対してポイントが毎月、進呈しているため、ポイント発行量が多く、お客様にとっても貯まりやすい身近なポイントとなっていると思います。このポイントの消費先の1つとしてdショッピング」を案内させて頂いています。

 近年、利用者拡大のために注力しております当社のクレジットカード「dカード」の利用者を「dショッピング」に誘導していることも貢献していると思います。「dカード」は利用額に応じて、「dポイント」を進呈したり、特に当社がプッシュしている上位カードの「dカードGOLD」ではよりポイント進呈率を高めたり、年間の利用額に応じて1万1000円または2万2000円相当のクーポンを進呈していますが、「dショッピング」でも利用できるようにしています。

 テレビCMなど様々なプロモーションを強化していることもあり、「dカード」は約1500万枚、「dカードGOLD」は800万枚とこの数年で急激に発行枚数を伸ばしています。カード発行枚数の母数が増えることで、ポイントやクーポンを経由して「dショッピング」を利用されるお客様が増えています。

AALMと共同で営業活動を強化

─「dショッピング」の出店者も増えているようです。

 「dショッピング」はこれまで当社単独で運営してきましたが、昨年7月に、資本業務提携を結んでいるオールアバウトの子会社のオールアバウトライフマーケティング(AALM)と一緒に運営していく形に変えました。

 これを機にAALMと共同でさらに「dショッピング」を成長させるための様々な施策を本格的に始動したところです。その一環として、加盟店(出店者)の開拓も強化していまして、1年前は60~70程度だった店舗を、昨年から今年にかけて月に4~5店舗ずつ厳選して増やしていまして、現状は(全出店者合計で)100弱まで増えています。加盟店を増やすことで品ぞろえが増し、それによりさらにお客様が増え、(流通総額の伸びに)貢献しているのではないかと思います。

─「dショッピング」上での各種販促キャンペーンも特に今年に入って増えました。

 これもAALMと共同運営を開始して以降、実施している施策の一環でキャンペーンの内容や頻度なども見直しておりまして、お客様、また加盟店にとってよりよい売り場作りを進めています。これに関しては着実に貢献してきていると思います。

─具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。

 「dショッピング」内の複数店舗で購入したお客様にポイントを多く進呈する「買いまわりキャンペーン」や期間中に一定金額以上を購入したお客様にポイントを山分けする「山分けキャンぺーン」など様々な販促キャンペーンを実施する回数を増やし、種類と手数は増やしてきています。

 大きなところではメインの販促キャンペーンである「dショッピングデー」の内容を改めました。従来まで毎月20日、全ての商品を対象に、合計4400円以上、購入した顧客へポイント進呈率を、2000ポイントを上限に一律通常進呈率(※110円につき1ポイント)の20倍にしていましたが、9月からは毎月10日と20日の2回、実施して、ポイント進呈率も一律でなく、商品ごとに10・20・30・40倍として、上限も5000ポイントに増やしました。

 これによって、お客様にとってはお得に購入いただける機会が増えますし、これまで以上にポイント還元率が増える商品もあり、メリットが高いと思います。当社や加盟店側としても、キャンペーン回数を増やすことで、お客様の来店動機を増やし、購入頻度の向上が狙えますし、そのほか、ポイント進呈を「一律」ではなく、商品単位で10~40倍に設定できるようにしたことで、季節商品や特定の記念日向けのギフト品など「今、売りたい商品」に高い倍率を設定できるようになり、販促施策として加盟店側の使い勝手もよくなったと思っています。

食品やアウトドアなどの新規出店者を獲得したい

─「最大40倍」というポイント還元は魅力です。ただ、その原資の負担はどうしているのでしょうか。

 10倍の原資はすべてこちらで負担し、20、30、40倍の場合は、加盟店に一部を負担してもらうことにはなりますが、加盟店側の負担割合は低く抑えています。

 また、高い倍率の商品についてはメールマガジンや「dポイントクラブ」などのドコモのオウンドメディアなどでも告知します。このほか、商品一覧ページでも「付与ポイントがアップしている」という旨を表記するなど、しっかりと集客できるよう導線を強化しておりまして、成果につながりやすいと思っています。

 これまでのキャンペーンも一定の効果はあったとは思いますが、全品一律20倍だったため、その中でお客様に個別の商品を認知頂くことは難しい部分もあったと思います。今回の変更で旬のものや販売するタイミングが限定的なものなど、「今売りたい商品」を販売する側がコントロールして推せるようになったことについては、加盟店側からもかなり、賛同の声を頂いています。

─加盟店側で売りたい商品をPRできるという意味では広告商品も重要です。

 先ほどのポイントキャンペーンと同様ですが、今、売りたい商品を自分たちのコントロールで効果的にPRできる手段は必要です。

 例えば「母の日」向けのギフト用商品などは「特定の期間」が勝負となり、そこでしっかりと打ち出せないと厳しいわけです。広告についても同様です。これまでは運営主体でキャンペーン全体に誘導するバナーなどをドコモのオウンドメディアなどに露出することはありましたが、加盟店側に提供する有償広告枠というのはあまり提供してきませんでした。

 広告についてもAALMと共同運営体制となったことを機に、増やし、料金体系もなるべく加盟店側が活用できるよう、単価を抑えて、細かい単位で購入でき、必要であれば積み上げることもできる設計にしました。

買い手と売り手双方にとってよい売り場を

─「dショッピング」の今後の方向性は。

 引き続き、各種キャンペーンの積極的な展開や内容の強化を進めつつ、さらに魅力的な売り場を目指すため、品ぞろえの強化、加盟店数のべースを増やしていきたいです。

 優良な出店者、商品がそろっている質の高い安心安全なプレミアムモールという方針に沿って、例えば、コロナ禍もあり、需要が高まっているアウトドア用品やDIY関連、食品などのジャンルで優良な事業者にぜひ出店頂きたいと思っています。

 “厳選”しているからこそ、お客様にとって安心安全であり、また、「他のモールよりも売り上げがあがる」と多くの加盟店から評価を頂けていると思っています。買い手売り手双方にとってよい売り場として拡大していきたいです。

 当社としてもキャンペーンの強化や「dポイント」「dカード」の利用者を増やしていくプロモーションなどをさらに進めていき、増えた利用者を積極的に「dショッピング」へ誘導して、集客することで「dショッピング」の加盟店の売り上げ拡大を強力にサポートしていきたいと思っています。


田辺久美子(たなべ・くみこ)氏

NTTドコモで現在、コマース関連事業などを管轄するビジネスクリエーション部で「dショッピング」などを統括するライフスタイルサービスコマース推進担当課長を務める。

◇ 取材後メモ

「多くのお店が出店していて、なんでもそろっている」というショッピングモールはとても魅力的ですが、一方で、そのたくさんのお店で売っている多くの商品の中から、最適なものをチョイスして、購入するには大変です。お店や商品をくまなく見て回れる時間があまりとれない場合や、希望の商品の中から、最適なものを見つけるための情報収集が難しい人にとってはむしろ、「何でもある」よりも、一定の基準をもとに「これがおすすめ!」という厳選された商品の中から買い物をした方がよいということもあるでしょう。それはリアルの売り場だけでなく、インターネット上の売り場でも同じです。「dショッピング」が支持される理由もまさにここにあります。さらに「dショッピング」は優良出店者のみを厳選し、質の良い安心安全なプレミアムモールという路線はそのままに、より出店者にとってよりよい売り場にすべく、改革を進めているといいます。売り手買い手双方にとって、どのような魅力的なインターネット上の売り場になるのか期待したいです。

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