アパレル企業を中心に、ECでのチャット対応サービスが広がっている。チャットボットや、専門スタッフによる有人対応など形は様々で、実店舗のようにリアルで着心地を体感できないファッションECでありがちな、スタイリングやサイズに関する悩みなどに対応する。実店舗に近い接客サービスをウェブ上でも提供することで、顧客の不安を解消して購買へとつなげていく狙い。
AOKIでは店長経験者が対応
紳士服などを企画・販売するAOKIは11月1日、EC需要の高まりを受け、実店舗と同じように気軽に販売員に質問ができるオンラインでの「チャットスタイリングサービス」を開始した。
同サービスはAOKIグループの「ORIHICA」で2月より先行導入したもの。同社の販売員がチャットを通じて商品に関する質問や、用途や体型・好みに合わせたスタイリング提案・手持ちのアイテムとのコーディネート相談などに応えていくという。商品情報やコーディネートなどを事前にチャットで相談して、店舗で購入する際に、改めて販売員に相談することでより納得して購入できるセカンドオピニオンとしての要素もある。
利用に当たっては、個人情報の登録が不要となっており、基本的には一問一答形式でのコミュニケーションで必要な情報を簡単に得ることができる(年代・性別のみボットにて確認)。
有人チャットスタイリングサービスは、年始・夏季期間を除いた午前10時~午後7時まで実施。対応に当たるのは店舗スタッフではなく、専門のオペレーター。現在、AOKIとORIHICAで4人在籍しており、それぞれ店長としての経験もあり、接客をはじめ商品特長やコーディネート含め、両ブランドに精通しているという。
先行しているORIHICAでは、サイズ・コーディネート・補正・在庫の有無などに関する問い合わせが多い状況。自分の体型に合うサイズの案内や、手持ちのアイテムとのコーディネートなど、パーソナルな質問にも回答している。
現状、アンケートにおいて、悩み解決率90%以上、満足度97%となっており、ECでの買い物サポートにもつながっていると考えている。また、フレッシャーズの顧客が、チャットで事前にスーツやコーディネートについて相談し、その後、実店舗に来店して購入するケースもあり、店舗送客にもつながっていると見ている。
ユニクロとジーユーでは回答可能な質問範囲を拡大
また、ファーストリテイリンググループの、ユニクロとジーユーでは10月11日に通販サイトでの購入をサポートするチャットボットサービスを「IQ」という名称に統一して刷新した。
ユニクロでは、会話形式で商品やコーディネートの提案をする「UNIQLOIQ」と、配送や返品・交換などの質問に回答する「ユニクロお問い合わせ専用アカウント」の2つのチャットボットサービスを、「LINE」アプリ上で提供していた。しかし、昨今はEC利用者が拡大したこともあり、両機能を統合して、店員が接客するように買い物の一連の流れを切れ目なくサポートするサービスとして刷新した。
新たな「UNIQLOIQ」は、通販サイトのログインページ、ジェンダー別のトップページ、決済ページで利用でき、「ログインできない」、「着こなしを提案してほしい」、「決済や受け取り方法について教えてほしい」といった問い合わせに回答する。
加えて、新たな機能としては着こなし投稿アプリの「StyleHint」に投稿された画像も検索できるようになったほか、チャットボットと専任オペレーターの連携により、回答できる質問の幅も拡大した。
また、UNIQLOIQ上で、チャット画面に表示された選択肢を選ぶか、フリーワードを入力すると、StyleHintを含むデータベースから、旬でリアルな情報を探し、場所や目的に合わせたコーディネートを表示して、欲しい商品を見つける機能もある。
あわせて、ジーユーでは、通販サイト利用時の質問に対応するチャットボットサービス「ジーユーお問い合わせ」を「GUIQ」という名称に変更。同サービスでは、通販サイトのログインページと、ジェンダー別のトップページで利用が可能となる。
商品やコーディネートの提案だけでなく、通販サイトで購入した商品の配送や、返品・交換など、利用に関する全ての内容を質問できるようになっている。
UAでは上位顧客向けに展開
さらに、ユナイテッドアローズ(UA)では10月1日付けでプライベートサービスデスクを開設。具体的には、自社通販サイト「ユナイテッドアローズオンラインストア」の利用だけで高い年間購入金額を持つ顧客に対し、同社コンシェルジュによる電話やチャットなどを使ったパーソナル対応を開始している。
顧客の嗜好やライフスタイルに応じて同社が展開する全ブランドのラインアップから最適な商品を紹介し、スタイリングやアフターケアなどのトータル提案を通じた顧客体験価値の向上を図っている。
ECの上位顧客に個別にアプローチするのはこれが初めて。これまで、同社の強みである接客を受けずにEC上で多くの買い物をしてきたオンラインユーザーに対し、人を介した“接客”を行うことで、さらなるロイヤル化を図る狙いで、パーソナルサービスはEC上などには表示せずに完全シークレットのサービスになっている。