Qoo10、2022年春にファッション専用売り場――300ブランドで、初年度100億円目指す

 若年層女性を中心にコスメやファッションなどを軸に仮想モールの「Qoo10」アプリを展開しているイーベイジャパンでは、2022年4月より、ファッションブランドに特化した売り場を開設することを発表した。同モールの利用者の約9割が利用している公式アプリ内を軸に展開するもので、まずは、国内外から300のブランド公式ショップの出店誘致を実施。初年度の売り上げは100億円を目指していく。

 同モールでは今年よりアパレルや下着を中心に売り上げが伸びており、それを受けてファッションブランドの公式出店者に特化した売り場を立ち上げることを決定。オリジナルブランドを所有し、同社が審査して厳選した出店者が対象となる。既存のモールからドメインを変えずにそのまま遷移した売り場として運営し、初年度は100億円の売り上げを目指していく。

売り場の特徴としては、まず、商品紹介動画があり、同社が制作会社と連携して出店者の商品のコーディネートや利用シーンを紹介するプロモーション動画を作成して売り場内に設置していく。

 リコメンドについては、AIを活用して顧客ごとに好みや体形にあわせた内容で訴求。また、返品無料サービスも取り入れていき、発送後の顧客都合の返品などについて、同社が送料を負担する。返品回数の制限などはあるものの、顧客のECでの購入に関する心理的なハードルを取り除き、出店者の物流作業にかかる負担も軽減させる狙い。そのほか、カスタマーサポートなどに関する相談窓口も設置する。

 すでに11月より既存の出店者に対して募集を開始。12月からは未出店のブランドに対しても募集を呼び掛けている。既存のモールの売り場に出店しながら参加することが可能となっている。

 韓国ブランドの割合が多くなる見込みで、若年層顧客の支持が高いことから、価格帯としては3000円前後が中心となるもよう。

 12月2日に開催した記者向けの発表会では、丸山恵未ファッション室長が登壇。「新しいサービスでも販売しやすいような料金体系やシステム移行を準備している」と説明し、既存の出店コストに対してさらに大きな負担がかかるような料金体系にはしないことを検討している。1年目についてはキャンペーンを行い、新規出店しやすいような料金の立てつけを提供する考え。

 まずは、既存出店者で日韓合わせて200ブランドほどを獲得できる見通しで、未出店の国内ブランドについても20者程度を誘致する考え。交渉中となっているところでは、韓国ブランドの「NANING9」や、日本ブランドでは「ロペピクニック」「ハニーズ」などがある。

記者発表会に登壇した丸山恵未ファッション室長

 今回の開設理由については、ファッションに寄せたUIの売り場を整えたかったということに加え、各ブランドが集合した訴求力の高い売り場を個別に設けることで、これまで取り込めていなかった新しい顧客の目に映る可能性が高まることも期待している。

 なお、売り場の名称については現時点では未定としている。

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メガ割やライブコマースで拡大

同社によると、現状、同モールでの登録会員数は約1900万人で、月間PVは約6億5000万、登録商品数は12億点以上、店舗数は1万8100店舗と年々増加傾向にある。とりわけ、10代~30代が67%、女性会員の比率が78%と高くなっており、モバイル比率が約90%だという。

 カテゴリー別でのアイテム出品数では「レディースファッション」が28%、次いで「ホーム・生活」が26%、「デジタル・家電」が13%、「食品・ベビー」が12%、「ビューティ・コスメ」が11%、「メンズ・スポーツ」が7%、「エンタメチケット」が3%という順になっている。

 一方で実際のアイテム取引件数で見ると、出品数では1割程度の「ビューティコスメ」が46%となり、他のカテゴリーを大きく引き離して1番高い割合となっている。「レディースファッション」についでは、次点で23%。そのほか、「ホーム・生活」の10%、「食品・ベビー」の9%、「デジタル・家電」の7%、「メンズ・スポーツ」の3%、「エンタメチケット」の2%という順になっている。

 「レディースファッション」については、出品数は多いものの、取引件数では2位となっており、より強い露出を図るための施策が必要となっていた。

 実際に近年はてこ入れが進んだことでレディースファッションの規模が拡大しており、2021年1月~10月までで出店者数が前年同期比50%増となり、公式店舗数が同約280店舗に純増。流通額としても同30%増となり、公式店舗の流通額も同50%となった。とりわけ、公式ブランドや韓国ブランド、SNSインフルエンサーブランドなどが好調となっている。

 11月に行った大型セール企画の「メガ割」ではファッション流通額が同42%増加。「下着・インナー」については同130%増と拡大し、ファッション内のメガ割流通額ランキングのトップ100に39商品がランクイン。

 また、9月に行ったツイッターとも連動したライブコマース企画においては、韓国のスキンケアブランド「Na-tureRepublic」や、「TIRTIR」といったブランドが参加し、限定商品や人気商品などを紹介。9月2日に行ったNatureRepub-licのライブコマースでは、K-POP男性グループの「NCT127」がコメントで出演。K-POPファンは韓国のコスメや文化に興味を持つことが多く、配信当日にQoo10についてのツイートを投稿したユーザーを分析した結果、一般ユーザーに比べ、K-POPへの興味関心は14倍、メイクや美容への興味関心はそれぞれ9倍、7倍程度高いことが判明した。ツイッターでのライブ配信が相乗効果をもたらし、ターゲット層の興味関心を高めたと分析している。

 9月8日に行ったTIRTIRのライブ配信では3万3000人が同時視聴し、65万の「いいね」を獲得。TIRTIRは今回のライブコマースにおいて「マスクフィットクッション」と「マスクフィットオールカバークッション」を1900個以上販売した。インナービューティーラインの「パーフェクトタートチェリー酵素」については、配信20分で完売する記録を達成している。

モール市場でファッション強化の波

 なお、2021年は仮想モールにおいて「ファッション」を巡るサービスが相次いで発表された年でもあった。楽天グループは、東急および両社で設立した楽天東急プランニングの3社で、衣料品専門の仮想モール「楽天ファッション」に出店する約30ブランドの商品をセレクトした期間限定店を11月に渋谷の商業施設に開設。また、「ゾゾタウン」では、参画するブランドの実店舗をシームレスでつなぐOMOプラットフォーム「ゾゾモ」を始動し、
「ゾゾタウン」上でブランド実店舗の在庫確認と店頭での在庫取り置きができるサービスを11月から開始している。

 Qoo10においても、差別化に向けて引き続き、メガ割やライブコマースといった人気企画を展開。合わせて、ファッションブランドに特化した専用の売り場を設けることで、これをベースに、出店者・顧客の双方への支援を手厚くしていき、モール全体で流通量のさらなる拡大を目指していく考え。

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