ChatGPT活用のEC支援サービスが相次ぎスタート――SNS投稿文や商品説明、メルマガなど簡単生成

 OpenAI社が提供する人間を相手にしている時と同じような対話ができる、自然言語処理技術を用いたAIチャットサービス「ChatGPT」を活用した様々なサービスが各社から相次ぎ、発表されているが、EC関連でも利便性の高いサービスが登場し始めているようだ。

「ChatGPT」を活用して SNS 投稿用の宣伝文章を自動生成する「カラーミーショップ」の新機能「カラー ミー AI アシスタント」
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10秒でSNS投稿用宣伝文を作成

 GMOインターネットグループのGMOペパボは3月22日から、展開する通販サイト構築サービス「カラーミーショップbyGMOペパボ」を利用して通販サイトを構築する事業者ら向けに、「ChatGPT」を活用してSNS投稿用の宣伝文章を自動生成する機能「カラーミーAIアシスタント」の提供を開始した。まずはベータ版として無償で利用できるようにした。

 利用事業者が「カラーミーショップ」のiOSアプリ上の商品設定画面から「カラーミーAIアシスタント」のアイコンをタップすると、最短10秒でユーザーが登録した商品情報をもとにAIがツイッターやインスタグラムなどのSNSに共通して投稿可能なSNS投稿用の宣伝文を作成。投稿したいSNSを選択して投稿できる。最適なキーワードやハッシュタグ・絵文字を含んだ文章が生成され、効果的な投稿が行えるほか、SNS投稿のためのリサーチ時間の削減できるメリットもあるという。

 「ChatGPT」のAPIを活用した機能は「カラーミーショップ」のほか、同社が展開する個人がオリジナルグッズを作成して販売できるプラットフォーム「SUZURI(スズリ)」でも3月27日から、提供をスタート。ユーザーが入力した商品名やキーワードをもとに商品の説明文章を生成する。また、購入者が検索窓に入力した情報をもとに関連キーワードを提案する機能も3月下旬にアプリで提供している。同じく同社運営のハンドメイド品を取り扱う仮想モール「minne(ミンネ)byGMOペパボ」でも3月下旬から「カラーミーAIアシスタント」と同様、ユーザーが登録している商品情報をもとにAIがSNS向けの宣伝内容を自動で生成する機能をブラウザ版で提供している。

商品説明文を簡単生成

 無料で通販サイトが作れるサービス「BASE」を提供するBASEは4月6日から、「ChatGPT」を活用したAI機能「BASEAIアシスタント」の提供を開始した。

 ChatGPTの文章生成機能を活用し、商品説明文や顧客に送付するメールマガジンの文章、SNSへ投稿する文章の作成をサポートするというもの。「BASE」とChatGPTを連携させることで、「BASE」を利用する通販サイト運営者の文章作成業務の負担を減らす狙いがある。

 第1弾では、商品説明文の作成をサポートする機能を提供する。「BASE」の商品登録画面上で利用可能で、入力した商品名から商品の特徴や訴求内容を含む400文字前後の商品説明文を自動で生成することができる。これまでは何もないところから商品説明文を作成する必要があったが、新機能を利用することでAIが30秒程度で生成した文章を参考にしながら清書する、もしくは誤植部分のみを修正するだけで商品説明文を作成できるようになる。

 なお、商品名だけでなく、商品の特徴やキーワードを入力してから文章生成を行うことで、より意図に沿った商品説明文の作成ができるという。

LINE投稿文やメルマガ文の作成も

 GMOインターネットグループでマーケティング支援事業を展開するGMONIKKOでは4月18日から、展開中の事業者向けLINE公式アカウントの運用ツール「TRUEConnectbyGMO」の新機能として「ChatGPT」のAPIを活用したメッセージ自動生成機能「AIメッセージレコメンド」の提供を開始した。

 同ツールを活用するLINE公式アカウントの運用担当者がメッセージの配信目的やターゲットユーザーの属性、商品・ブランド情報、キャンペーン・発売情報、過去の配信結果(メッセージのクリック率)などを専用のフォームに入力することで、メッセージのアイディア、文章をAIが生成する機能で、業種ごとのイベントカレンダーをプロンプトに含めることで、イベントに合わせたメッセージの生成にも対応。ターゲットユーザーごとに最適なメッセージをより効率的に制作・配信することができるようになるという。

 このほか、業務支援システム開発・販売事業やウェブマーケティング事業などを行うファブリカコミュニケーションズが展開する通販事業者向けCRMツール「アクションリンク」の新機能として4月11日から、ChatGPTを用いたマーケティング支援機能「AIアシスタント」の提供を開始。同ツールのメール配信予約画面内で「AIアシスタント」ボタンを押し、ChatGPTに指示を出すための画面に件名とともに配信の目的、キャンペーン等の場合には実施期間や特に訴求したいポイント、リンク先URLを指示。
「原稿を生成する」というボタンを押すことでChatGPTが指示通りの原稿案を生成と3ステップの簡単な指示を出すだけで、メールマガジン用の原稿を3分以内に生成できるもの。

 今後、さらに進化していくであろうAIチャットサービスをいかに自社のECビジネスに活用できるのか、検討しておく必要がありそうだ。

カラクリの小田CEOに聞く ECにおけるChatGPTの効果的な利用方法とは?

 さまざまな分野で活用が広がっている、OpenAIの人口知能(AI)チャットボットChatGPT。AIチャットボットを提供するカラクリの小田志門CEOに、ChatGPTの優位性や、ECにおける効果的な利用方法などについて聞いた。

Q:ChatGPTで用いられている大規模言語モデル(LLM)とは、何が新しいのでしょうか

A:一言で言えば、汎用的なモデルであるという点です。今まで「何かの分野に強いAI」というのはたくさんあって、例えば「将棋が強い」とか「囲碁が強い」といったものが代表です。あとは「ある企業のデータを教え込ませることでカスタマーサポートに優れている」など、特化型モデルの方が使いやすい、というのが一般的な常識でした。ところが、汎用モデルでここまでできてしまう。英語で聞こうが中国語で聞こうが日本語で聞こうが答えてくれるし、医療の話でも法律の話でも歴史の話でも動物の話でも、それらしい回答を生成してくれる。そして、人間との会話が成り立って、連続した会話の中で回答を生み出してくれる。また、入力した言語から音楽や画像、動画が生成され、さらにはインプットに画像や動画を使える可能性もあります。言語モデルの学習データを増やすと、こんなことまでできるのか、という驚きがあります。Q:わざわざ特化したAIを作る必要がなくなる。A:当社の場合でも、例えば「FAQコンテンツを生成するAI」と「メール問い合わせフォームで動くAI」は別々に作っていたわけです。とはいえ、リソースは限られているわけで、何でもかんでもできるわけではなかったものが、全てChatGPTで間に合う可能性がある。ワークフローの中にAIを組み込むのがかなり楽になったといえます。Q:ECでの効果的な活用方法については。A:1つはコールセンターやコンタクトセンターでの顧客対応です。そもそも、顧客対応でAIを使う場合、顧客からの問いから回答を生み出す「生成」か、決まった答えを返す「定型」か、どちらが効果的かはシーンによって異なります。BtoCのエンドユーザーへの応対で、顧客自身が正解かどうか分からない問題に対しては、定型の方が向いていると思います。ChatGPTは大量のデータを学習することで新しいコンテンツを生み出す「生成AI」なわけですが、間違った回答もします。間違いの発生率は下がってきてはいるものの、おかしな回答をすることは多々あります。そしてChatGPTの場合、もっともらしい回答を提示するので、間違いに気づくのが難しいこともあります。顧客対応などで間違いを許容しづらいシーンでの投資対効果は低くなります。Q:定型なら使いやすいわけですか。A:顧客が入力した自然文に対するAIの回答なので、間違うことはありますが、定型では「明らかに違う」というトンチンカンな内容になるので、顧客が勘違いを起こすことは考えにくい。デメリットとしては、定型文を作る作業が必要になること。定型文の作り込みのち外で解決率に差が出てきます。定型の回答コンテンツの作成にChatGPTは非常に向いていると思います。まずChatGPTが文章の骨組みを作り、企業の担当者が肉付けをしていき、ChatGPTがさらに分かりやすさを追求する、という使い方が良いでしょう。FAQ作成はもちろん、メール返信やチャット返信などにも使えます。ラフ案の作成から誤字脱字チェック、「より良いものを」というルールに基づいたリライトも可能です。また、コンタクトセンターの応対ログから要点をまとめたり、顧客からの問い合わせ理由を正確に把握したり、といったものも考えられます。他には、製品のマニュアルや仕様書の要約などにも使えるはずです。Q:コンタクトセンター以外ではいかがですか。A:通販サイトの作成に関しても、プロンプト(応答を生成するための命令文)だけで作ってしまうデモがありました。さすがにそのままでは使えないでしょうが、担当者が手直しすれば問題ないと思います。あとはランディングページや広告の制作もできるでしょうね。「何かの作成」という点では、AIによる支援が全く使われない分野は無いと思います。Q:レコメンドにも使えそうです。A:旅行予約サイトのエクスペディアがOpenAI社と提携しており、ChatGPTが旅行の提案をしてくれるようになっています。ただ、既存のレコメンドエンジンより優位性があるかどうかはまだ分からないですね。Q:入力したデータが学習に使われるため、機密情報の漏えいを懸念し、ChatGPTの利用を禁止する企業が増えています。A:当社ではOpenAI社のAPIを活用し、プロンプト管理機能を備えた「コールセンターGPT」と呼べるようなサービスを提供する予定です。APIを利用する場合、ユーザーが送信したデータが学習に利用されなかったり、30日後に送信されたデータが削除されたりと、Web上のChatGPTよりはセキュアに使えます。プロンプトの入力補佐やプロンプトのナレッジ化など、コンタクトセンター内でChatGPTを使い、試行錯誤できるようなサービスにしていきたいと思っています。
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