楽天・三木谷社長が講演で 「早期に流通額10兆円へ」

 楽天グループは1月27日、仮想モール「楽天市場」出店者向けのイベント「楽天新春カンファレンス202」を開催した。

 登壇した同社の三木谷浩史社長(=画像)は「国内EC流通総額10兆円への道」と題し、楽天市場の現状やネットショッピングの未来などについて語った。

 1997年にスタートした楽天市場だが、同社の国内EC流通総額は2009年に1兆円へ到達。その後成長速度は年々加速しており、2兆円は13年、3兆円は17年、4兆円は20年、5兆円は21年に達成している。ただ、経済産業省によると、20年における日本のEC化率は8・1%にとどまっている。三木谷社長は「世界平均の約20%、中国の約40%と比較すると立ち遅れているのが現状だ。ただ、いずれ日本でもEC化率20%に到達するだろう。国内EC流通総額10兆円は、目標として定めた2030年を待たずして、もっと早く達成できるのではないか」と自信を見せた。

 グループサービスのユーザーやポイントが楽天市場へと還流する「楽天エコシステム」のさらなる拡大に向け、新規ユーザー獲得のカギとしているのがモバイル事業だ。三木谷社長によれば、「楽天モバイル」加入後の楽天市場における年間購入額は約1・7倍に上るという。「ポイント施策が効いているのかと思っていたが、恒常的に伸びている。楽天モバイルユーザーが現在の500万人から数千万人単位に増えていけば、店舗の皆さんの流通総額は爆発的に伸びていくだろう」(三木谷社長)。

 また、楽天モバイルユーザーが楽天市場で買い物をする割合(クロスユース率)は59・8%で、ソフトバンクの27・5%、auの8・1%、NTTドコモの1・7%を大きく上回っている。
 楽天モバイルユーザーの顧客獲得スピードは、楽天カードのサービス開始時と比較すると3倍以上という。三木谷社長は「ユーザーが2000万人、2500万人となり、そのほとんどが楽天市場で買い物をしているという状況は、夢物語ではない」を断言した。

 楽天市場における顧客向けサービス強化についても触れた。ポイントアッププログラム(SPU)は年平均成長率28%に。「グループのサービスを使えば使うほど楽天での買い物が得になる。(使う動機の)源泉はサービス自体にあるので、うまく回っている」と述べた。楽天ポイントの21年における総発行数は5300億ポイントに。今年は6000億近いポイントを発行する見込みだ。

 その他にも、ショッピングSNS「ROOM」経由購入者数は、19年から21年の2年間で2・5倍に。昨年、本格提供を開始したライブコマースも強化する予定で、「中国はもちろん、アメリカでも4兆円のマーケットになっており、日本でも普及していくだろう」(三木谷社長)とみる。

 送料無料となる購入額を税込み3980円で全店舗統一する「共通の送料込みライン」に関しては、導入店舗が昨年12月の段階で全体の約92%に到達。導入店舗の流通総額は、未導入店舗と前年同期比を比較すると、約18ポイントも上回っているという。顧客推奨度を示すネットプロモータースコア(NPS)に関して、「送料の分かりやすさ」へのユーザー評価は、施策導入から約3年半で14・9ポイント改善した。

 テクノロジーを活用した店舗支援も強化。AIを活用した価格&在庫最適化エンジン「PIOP」に成果が出ているほか、ドローンや自動配送ロボットを使った配送サービスの実現に向けて、実験を重ねていることを店舗に説明した。

 講演の最後は「グリーン!! グリーン!! グリーン!!」として、サステナビリティ関連の戦略について述べた。同社では楽天市場設立25周年を迎えるにあたり、イメージカラーである「クリムゾンレッド」と「グリーン」を組み合わせたロゴを作成。「赤い楽天からグリーンな楽天へ。『グリーンビジネス・ウィズ・レッドハート』という思いを込めてロゴを作った」という。
 同社は国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟しており、再生可能エネルギー利用率100%という目標を、4年前倒しとなる昨年に達成したという。今後は子会社も含むグループ全体での達成に向けて取り組みを推進する。

 消費者庁が2020年2月に公表した消費者意識調査によれば、サステナブルな商品の購入経験がある人や、購入経験はないが興味あるという人は、81%に及ぶという。これを受けて、三木谷社長は「多少価格がアップしても、サステナブルな方に向かっていくという姿勢が、店舗や商品のファンを増やしていく時代に突入した」と断言。実際に、同社のサステナブルな消費を提案するサイト「アースモール with Rakuten」の21年1~11月流通総額は前年同期比約4倍、アクセス数は同約4・5倍と急拡大している。

 こうした状況を受けて、三木谷社長は「将来的には、楽天市場のすべてのものがサステナブル商品にならざるを得ない。それなら率先してやった方がいいのではないか。前向きに取り組むことがファンを増やし、商売を大きくしていくポイントだと思っている。国内EC流通総額が10兆円になれば、日本の消費の7~8%は楽天経由ということになる。当社の社会的責任はもちろん、皆さんにもこうした問題に取り組んでいただきたい」と店舗に呼びかけた。

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