北の達人コーポレーション(以下、北の達人)がはぐくみプラスに不正競争防止法に基づく表示の差止めと損害賠償を求めていた訴訟は今年2月、知財高裁がはぐくみプラスに約6890万円の支払いを命じた。北の達人が主張する品質誤認表示、信用毀損行為のいずれも認められた。損害賠償額は、一審判決から約5000万円の増額となった。
オリゴ糖健食めぐり不競法で提訴
北の達人は18年7月、はぐくみプラスが行っていたオリゴ糖配合の健康食品に関する広告が不競法の「品質誤認表示」「信用毀損行為」にあたるとして東京地裁に提訴した。
北の達人によると、はぐくみプラスは、販売する「はぐくみオリゴ」について、オリゴ糖成分が商品の53.29%であるにもかかわらず、「オリゴ糖純度100%」と表示。商品の品質を誤認させると主張していた。
また、アフィリエイター向けイベントで、北の達人が販売する「カイテキオリゴ」について、「カイテキオリゴはオリゴ糖100%じゃない、はぐくみオリゴはその点良品で100%」などと説明、商品の信用を毀損したと訴えていた。
不競法は、競争相手の信用を害する虚偽の事実を流布したり、誹謗中傷すること、また、商品の形態を模倣する行為が品質を誤認させ、公正な競争を阻害する行為として「品質誤認表示」、「信用毀損行為」として規制している。
損害請求、11億円に増額
また、係争中の20年3月には、はぐくみプラスが再び「品質誤認表示」にあたる広告を行っているとして、広告の差止めを求める仮処分の申し立てを行っている。同広告は、はぐくみプラスが既存顧客向けのLINEで配信したもの。自社商品の「はぐくみオリゴ」について、「身体の中から免疫力アップで、コロナウイルス対策!」などと表示していた。北の達人は、「免疫力アップ」や「コロナウイルス対策」といった表示が、オリゴ糖を配合した健食の効用の誤認を生じさせることになり、自社商品の利益を侵害すると訴えた。また、当初1億円の損害賠償を求めていたが、20年2月、訴訟で明らかになった証拠を検討し、損害賠償の請求額を約11億円に引き上げていた。
はぐくみプラスは、広告配信の経緯について、「誤って掲載したもの」と説明している。LINE広告から、風邪対策の記事に誘導するものだった。記事上で、自社商品の説明は行っていなかったとしている。一方で、品質誤認表示との指摘には、「そのような認識はなく争う」としている。
知財高裁、北の達人の主張認める
これら訴訟を受けて東京地裁は21年2月、品質誤認表示であることを認めた一方、信用毀損行為は認定しなかった。はぐくみプラスに約1835万円の支払いを命じた。北の達人は、信用毀損行為の認定に関する判断、損害賠償額の算定を不服として同2月、知財高裁に控訴していた。高裁では、品質誤認表示だけでなく、信用毀損行為も認定する形で損害賠償額の増額となった。
今回、訴訟対象になった広告には、はぐくみプラスが運用していたアフィリエイト広告も含まれる。
消費者庁がこのほどまとめたアフィリエイト広告規制に関する報告書案においても、アフィリエイト広告の責任を広告主に求める方針を示しており、第三者であるアフィリエイターが作成した広告の責任を広告主に求めた今回の判決は、これを追認する結果になった。アフィリエイト広告は、景表法や特商法による法執行だけでなく、競争環境の公正性確保の観点からも、不用意な運用にハイリスクが伴う広告となりそうだ。