需要増加で市場は拡大も、国内化粧品市場は2兆円割れーー化粧品通販・EC主要50社売上高調査

 通販新聞社が行った2020年度の「化粧品通販売上高ランキング調査」は、上位50社の売上高総計が前回調査比3.8%増の4883億円だった(姉妹紙の
「週刊通販新聞」には、上位85社のランキングを掲載。売上高総計は同4.0%増の5496億円)。インバウンド需要の消失がありながら、新型コロナウイルス感染症の影響長期化の中で通販の需要は増加。拡大を維持した。一方、国内化粧品市場は、同11%減で2兆円割れとなり低迷が続く。

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オムニチャネルの取り組みで明暗

脚注は末尾に掲載

 コロナ禍においても化粧品市場が堅調な成長を維持した一方、流通や訪販・MLM等を含む「国内化粧品市場」(上位50社の売上高総計)は、前回調査比11.5%減の1兆9888億円と市場が大幅に縮小した。全国に直営店や流通販路を持つ大手が軒並み減収に沈んだことが影響した。

 化粧品通販市場が堅調な成長を果たした背景には、直営店、流通販路を持つ通販大手を中心に店舗顧客の通販への誘導策を行ったことがある。

 トップのファンケルは前年比10%増。コロナ禍において通販と店舗のアプリ統合、通販・店舗のデータを一元管理するシステム基盤を背景に積極的に通販への誘導策を実施した。店舗を直営化していることで、オムニチャネルの強みを迅速に活かせた点もあるとみられる。

 直営化は、総資産の増加など利益を圧迫する側面もある。ただ、化粧品通販企業の中には、百貨店等への卸販売を前提にオフラインの売場を拡大してきた企業もある。こうした企業の場合、あくまで店舗の顧客は「百貨店顧客」。通販と店舗の連携において大胆な誘導策を打ちづらい。コロナ禍において自社の管理下で販売戦略の転換を図れる強みを発揮できた。

 ファンケルの直近の22年3月期第3四半期は、「通販」が2.8%減、「店舗」が同6.7%増。店舗は休業の反動から回復傾向にある。化粧品事業全体では、ファンケルは微減だが、越境ECなど国内外で好調を維持するアテニアが同15.9%増と貢献。事業全体では同1.4%増で着地している。

健食規制強化が化粧品市場にも影響

 コロナ禍の通販需要の増加だけでなく、市場が拡大した背景には、「健康食品市場」の動向も影響しているとみられる。いち早く「内外美容」の提案を打ち出し成長を果たしたファンケルのように、化粧品と健食は、親和性の高い市場でもある。規制やマーケティングの面でも影響を及ぼし合う。

 ここ数年、健康食品市場は規制強化が進んでいた。20年には大阪府警がアフィリエイト広告を対象に、薬機法違反でステラ漢方従業員を逮捕。広告代理店関係者らを含む摘発が業界に衝撃を与えた。大阪府警は、21年もアフィリエイト広告の薬機法違反に絡み、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)への家宅捜索、アフィリエイターの書類送検に踏み切っている。

 こうした中、有力アフィリエイターの多くが広告表現に疑義が生じやすい健食から摘発リスクの少ない化粧品、とくに明確に効果を歌える医薬部外品に流れたことがある。時を同じくして「シワ改善」を表示できる部外品は、複数のOEM企業が承認を得たことで大手・中堅双方で活用が進み市場が拡大した。

「シワ改善」市場が追い風

 2位の新日本製薬は、20年9月に主力のオールインワン美容液ジェルシリーズから高付加価値・高単価の「薬用リンクルストレッチジェル」を発売。直近の22年9月期第1四半期では、同シリーズ5商品で前年同期比約1%の成長を維持した。中核商品であり増収は小幅にとどまるが、「シワ改善」の訴求によるアップセル提案で成長を維持した。コロナ禍で手軽にケアできるオールインワン化粧品の利便性が改めて認知されたことも成長を後押ししたとみられる。

今後の法規制が市場動向に影響

 ただ、化粧品通販市場においても規制環境の変化が今後影響を及ぼしそうだ。21年8月には、改正薬機法が施行されており、医薬品や部外品、化粧品の誇大広告に課徴金が課されることになる。高血圧薬の「ディオバン」に関する研究不正を契機にしたものだが、化粧品、部外品の誇大広告への影響は未知数だ。また、21年3月には、消費者庁が消費者安全法に基づき化粧品通販2社の広告に対する注意喚起を実施。アフィリエイト広告規制強化も進む。今年6月には、定期購入規制を見据えた特定商取引法の改正も控える。今後はこれら規制動向の見極めが必要になる。

国内市場低迷も成長続く企業も

 堅調な推移を遂げた化粧品通販市場に対し、国内化粧品市場は新型コロナの影響を受け低迷が続く。20年度の販路別の市場動向では、「通販」が前年度比6.3%増(日本通信販売協会調べ)であったのに対し、「百貨店」は同39.6%減(日本百貨店協会調べ)と大幅な減少だった。21年度(4~12月)は、店舗再開など反動を受けたとみられ、「通販」は同2.7%減、「百貨店」は同10.1%増で推移する。インバウンド需要の消失、メイク化粧品の需要減などコロナ禍の生活様式の変化を受けて、まだ市場の活性化は進みそうもない。

 その中にあって、成長を遂げた企業の多くはECを起点に事業展開する企業だ。事業規模が200億円ほどに達しながら、なお成長に余力を残すのがプレミアアンチエイジングやI─ne(アイエヌイー)など。化粧品は、ブランドスイッチが起こりやすい市場でもあり、消費者の価値観の変化を捉えた商品・ブランドの提案で新規参入企業にも十分商機がある。

 すでにブランドを確立した大手は、ファンケル、オルビス、新日本製薬などが新ブランドで持続的な成長を目指す。また、100億円規模のブランドに成長する複数の中堅は、市場が低迷する中、海外展開の強化や親和性の高い健康食品事業の強化に傾く。

 こうした中で、プレミアアンチエイジングは、オイルやクリーム、リキッド等の剤型が一般的なクレンジング市場において、〝バーム〟という剤型で新たな価値を提案した。対象の20年7月期は、前年比71%増の約205億円、直近の21年7月期も同60%増の約328億円と勢いは続く。今後、洗顔料やオールインワン化粧品などバーム以外の領域で市場開拓を目指す。

 オールインワン化粧品市場は、競合が乱立しながら手軽さなどが支持され、コロナ禍でも堅調に推移する。これまでドクターシーラボ、新日本製薬の二強が市場を築いてきたが、シニア世代へのアプローチが中心。プレミアアンチエイジングは、若年層をターゲットにする。新日本製薬もすでに若年層向け新ブランドを展開しており、競争が激化しそうだ。ドクターシーラボは、18年にジョンソン・エンド・ジョンソンが買収しており、海外で成長を図るとみられる。

 I─neは、SNSを起点に認知を高め、流通販路を急速に拡大した。20年12月期は同10%増の約233億円、直近の21年第3四半期は同29%増の約209億円。成長に余力を残す。


「20年度化粧品通販売上高ランキング」は、原則、化粧品通販売上高のみをまとめた。調査期間は、20年6月~21年5月に迎えた決算期。一部企業は公表資料や聞き取りなどによって「本紙推計値(※マーク)」を掲載している。社名の前に「◎」マークのある企業は、数字に特定の条件がある。(〇内の数字は売上高順位)。1ファンケルはグループの連結売上高に占める化粧品通販事業の数字。アテニアの化粧品売上高(21年3月期)は前年比2.7%減の123億3700万円(店舗売上高を含む)。また、収益認識基準適用前の実績値の掲載・比較。/2新日本製薬は店舗・卸の実績を含む。/4再春館製薬所は海外の実績を含む。/6富士フイルムヘルスケアラボラトリーは卸の実績を含む。/7アイムは決算期変更に伴う13カ月の変則決算。/8プレミアアンチエイジングは卸の実績を含む。/12ドクターシーラボは2019年に決算期を7月から12月に変更。20年にシーズ・ホールディングスがドクターシーラボに商号変更している。/13ビタブリッドジャパンはベクトルの連結売上高に占めるダイレクトマーケティング事業の売上高の数字。/15ランクアップは海外・卸の実績を含む総売上高。/18メビウス製薬は卸の実績を含む。/19北の達人コーポレーションは健康食品の実績を含む。/20ファーマフーズは一部にヘアケアサプリ等の実績を含む。


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