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健康食品機能性表示制度の全貌

消費者庁が検討する健康食品の新たな機能性表示制度の概要が明らかになってきた。「食品の新たな機能性表示に関する検討会」ではこれまで4回に渡り、健食の「安全性確保」に関する議論を開催。第5回会合から議論は「機能性表示のあり方」に入った。ただ、新制度は企業に、従来より高いハードルの安全性確認や機能性の根拠確認を求めるもの。新制度のハードルが高まれば、参加できる企業は少なくなり、今後も市場にあいまいな表示を行う〝いわゆる健康食品〟が溢れ、市場の混乱が続くことになりそうだ。

成分ベースでトクホ並みの安全確認

これまでに明らかにされた新制度の概要を振り返りたい。

米国制度が企業の自己責任で表示する制度であるように、安全性も事業者はこれを自ら評価し、結果を広く情報開示することを求められる。

評価は、①関与成分(5回会合より名称を『保健機能成分』に改めるが理由は後述)を中心とする食品そのものの安全性、②関与成分と医薬品の相互作用─の2点から確認する。①ではまず、「食経験」で評価し、食経験が不十分な場合、「安全性試験」に関する情報を評価する2段階で行うことが求められる。

「食経験」は、食習慣などから関与成分を含む食品の摂取量データ、その食品が市販されていた時期、摂取している集団の特徴(年齢、性別、健康状態)、摂取者の頻度や規模などから評価する必要がある。その際、全国規模など広範囲の集団による一定期間の食経験を求めていく。海外の事例である場合は、日本人と食生活、栄養状態が近いことなどに留意する必要もある。これら条件を踏まえると、天然にある成分を濃縮して加工することが多く、まだ市場が形成されて歴史の浅い健食は食経験が十分でないと判断されるケースが多くなる。つまり、結果として安全性の確認には、これに関する文献情報などを集める必要が求められる。

そこで求められる安全性確認のレベルは、「トクホの安全性評価に必要な情報」を参考にするとされている。トクホは、in vitro試験(試験管内試験)や動物を用いたin vivo(生体内試験)で遺伝毒性や急性毒性、反復投与などに関する試験を行うことが求められている。また、ヒトを対象にした過剰摂取試験(3倍量、4週)や長期摂取試験(12週)も行う必要がある。

確認は成分ベースで良いため、自ら試験を行う必要はなく、文献調査をすれば良い。ただ、文献によって安全性が確認できない場合、製品で自ら安全性試験を行う必要性もある。

②では、自らが扱った関与成分と医薬品の相互作用の有無を確認する必要がある。関与成分が複数に渡る場合、関与成分同士の相互作用の有無の確認も求められる。これはすでに知られている情報を文献などから集めれば良いことになっている。

品質管理、GMPは義務化できず

品質の確保は、機能性を表示する食品の製品分析を行うことによって確保する。事業者は自らの製品に使う成分の規格を設定し、その成分量に加え、原料に含まれる体に悪影響を及ぼしかねない成分、製造過程で混入する可能性のある不純物など安全性に関わる成分の量を分析する必要がある。また、これら情報も安全性の確認と同様、広く情報開示する必要がある。

こうして事業者が自ら定めた規格の製品がきちんと製造されているか、これは、品質管理に関わる製造基準である「HACCP」「ISO」「FSSC」「GMP」などの取得状況を事業者が消費者にHPなどで公表することで品質が確保されていることを示す。

米国では健食の製造に特化した製造基準「cGMP」による製造が義務化されている。ただ、日本の「健食GMP」はあくまで業界団体などが運用する自主基準。このため、消費者庁では事業者に義務化を求めることができず、代替案としてGMP以外の品質管理基準でも良いことにした。

製造を外部に委託する事業者の場合、製造元の品質管理に関する取り組み状況を確認すれば良いためそれほど負担ではない。ただ、GMPを義務化しないことを問題視する関係者もいる。というのもこれら品質管理基準は、その目的、内容がそれぞれ異なるためだ。

少し乱暴な言い方だが、ISOは例えばピザの宅配業者が宅配中に雑菌などが商品に付着しないように衛生管理し、顧客に届けるためなどにも使われたりする。HACCPは、牛乳の加熱処理工程の管理など、ある製品を加工する上で、重点的に管理する必要性のある部分の「設定」と「管理」に使われたりする。健食の品質確保に特化して作られたGMPと根本的に考えが異なる。にも関わらず、消費者からすれば、GMPより知名度の高いISOやHACCPを取得していることが〝品質管理のレベルが高い〟と誤解されてしまう可能性があるわけだ。

一般食品などの加工事業者にとってISOの取得などは浸透している。食品と健食は製造工程で求められている管理が大きく異なるはずだが、それにもかかわらず、仮にISOのみを取得するような工場で健食が作られたとしても良いことになってしまう。GMP義務化は、健食を扱う事業者の信頼を高める上でも今後、議論が必要な争点の1つと言えるだろう。健康被害、報告を義務化かさらに、新たに整備するのが、健康被害に関する報告制度だ。

現在、健食に関する有害事象は、消費者や医療関係者、業界関係者などから「国民生活センターが運用するパイオネット」「保健所」「医療機関」「厚生労働省」「消費者庁」などに寄せられている。これまで事業者は健康被害を保健所に報告する食品衛生法上の義務はあったが、消費者庁への報告義務はなかった。

新制度では、これを改める。事業者は、健康被害の相談を受け付ける対応部署や相談体制を構築、消費者に窓口の周知する必要がある。受け付けた相談は、処理経過も含めて記録、保存し、社内の共有体制や緊急時の対応体制を整備。保健所に報告する場合、併せて消費者庁に報告することも求める。

商品パッケージにも、お客様相談室の電話番号など連絡先の表示を求め、「体調に異常を感じた際は速やかに摂取を中止し、医師に相談すべき旨」の表示も行う。これら報告をどの程度まで義務化するかは未定だが、消費者庁はこれにより、健康被害情報を集め、消費者被害を防ぐための迅速な対応を目指す。

特保より表示可能な範囲は広がる可能性

ここまでは「安全性確保」「品質確保」「被害防止・対応」に向けた消費者庁の方針。さらに検討会第5回会合では、「機能性表示」に必要な要件が示され、制度の全貌が明らかになった。

新制度では、機能性の表示が可能な範囲について、「疾病名を含む表示」を対象としないとする一方、「健康維持・増進に関する表現」は可能としている。これを額面通りに受け取れば、目、骨、関節、など構造機能に関わる表示の全般が対象になるということ。同じ構造機能表示でも対象範囲が限られるトクホに比べ、大幅に範囲が広がることが想定される。

また、「主観的な指標によってのみ評価可能な機能の表示も対象になりうる」としている。つまり、〝疲労感〟なども研究が充実していれば表示につなげることができる可能性がある。まだ、対象範囲は具体的に説明されていないため、今後の検討にもよるが、今までのトクホにはなかったものであり、米国制度とほぼ同じ内容といえる。

対象者は「生活習慣病等の疾病に〝り患する前の人〟または〝境界線上の人〟」とされる一方、「未成年者、妊産婦、授乳婦」は対象外とした。米国ではこれらも対象としており、この点は米国制度より対象者が絞られていることになる。これには「妊産婦に必要な栄養成分などもあり、妊産婦は情報を求めて自ら調べたりしている。対象としないことで逆に正確な情報が伝わらなくなってしまう」という業界関係者の指摘もある。

表示のコモディティ化が進む

表示する機能性の根拠確認は、「最終製品を用いたヒト試験による実証」か「適切な研究レビューによる実証」のいずれかを求める。前者は、機能面で他社と差別化した表示を行いたい場合に行うことが想定されるもの。

企業自らが試験を行う必要があり、試験コストも数千万円かかると思われる。後者は、成分ベースで文献調査を行うもの。文献調査は企業自ら行う必要があるが、関係者によると「内容にもよるが調査にかかる費用は70~150万程度」とされ、中小の事業者でも対応は可能といえそうだ。

加えて、調査した内容、手法は、消費者に公開する必要があるため、ある意味、同業他社もこれをチェックすることができ、他社が行った手法を真似て文献調査を行うこともできてしまう可能性がある。結果として、同じ成分、規格の製品が増え、企業が収集する根拠情報は同一になり、表示内容のコモディティ化が進むことが想定される。

機能の根拠確認の手順を明示

具体的な根拠の蓄積方法について、まず「最終製品による実証」から。その手法は原則、トクホに準じる必要があり、ヒト試験で有効性を確認する必要がある。

ただ、試験結果には、否定的な研究結果を公表しない「出版バイアス」や、利益を得るものが試験に参加する「利益相反」の問題がある。こうした偏りを極力避けるための具体的なルールが整備されている。

一つは、何らかの研究を行う場合、その研究計画を「UMIN(ユーミン)臨床試験登録システム」などに事前登録する必要があること。聞きなれない言葉だが、これは、〝このような人、人数を対象にし、こういったテーマで研究を始めます〟と宣言するようなもの。研究過程を含めて第三者の監視の目にさらされることで、否定的な結果が出た場合も、公表が求められることになる。

もう一つ、国際的な研究の指針である「CONSORT(コンサート)声明」に準拠した形式で研究を行うことも求められる。これは、国際的に合意が得られるような研究の手順を示したもの。数十のチェック項目があり、これに準拠した研究である必要がある。さらにこうして得た研究を〝査読付き〟の学術誌に掲載することで、はじめて〝根拠〟として認められることになる。

一方、成分ベースで、すでにある研究実績の文献検索から評価が可能な「研究レビューによる実証」。ここでは、査読付き論文を使った「システマティック・レビュー」を必須とする。

「システマティック・レビュー」とは、例えば機能を肯定する一つの論文だけを根拠とするのではなく、ネガティブな論文も含めて研究結果を広く集め、そこから総合的に機能の有無を判断すること。「システマティック・レビュー」もその具体的な手順は一般に明らかにされており、これによって出版バイアスや利益相反を避ける。

米国は「トータリティ・オブ・エビデンス」(出版バイアスなどを避けるための科学的根拠の総合的な判断)という考えに基づき、根拠確認することを求めているが、今回、消費者庁が示した方針ほど、具体的に手順は示されていない。米国では行政の調査によって「トータリティ・オブ・エビデンス」に叶う根拠確認をしていた事業者が少なかったことが問題と浮上しており、日本ではより明確に手順を示すことで、根拠が適切か否かを峻別する判断基準を明確にしたと思われる。

このほか、消費者への情報開示として容器包装に「表示内容が国の評価を受けていない旨」「未成年者、妊産婦等を対象としていない旨」「バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言」を表示することを求める。

植物エキスの大半、新制度から漏れる懸念も

制度の全貌はほぼ明らかになっているが、検討会当初から依然として明らかにされていないものがある。冒頭で述べた「関与成分」という言葉の定義だ。

「関与成分」とはトクホに使われている言葉。トクホ制度では、機能を発揮する成分を指している。一方、健食は、必ずしも〝成分レベル〟で有効性が明らかなものばかりではない。

グルコサミンやアントシアニンといった成分は、成分レベルで機能が特定されているもの。ただ、例えばローヤルゼリー、黒酢など日本の伝承的な素材は、どの成分が機能を発揮しているかは明確ではなく、〝エキスに含まれる複数の成分が複合的に作用して機能を発揮している〟と理解されている。新制度の対象が「関与成分」が特定されているものならば、これら素材は、新制度から漏れてしまう可能性が大きいわけだ。

米国では、必ずしも関与成分を特定する必要はなく、例えば、イチョウ葉エキスは、エキス全体で発揮した機能を商品に表示できている。代わりに事業者は、原料に使うイチョウ葉エキスが産地や季節で成分量に変化がなく、毎ロット同じであることを示すため、「テンペルノイド」と「フラボノイド」を〝指標成分(原料の同一性を確認するために定めた成分)〟として規格化。

毎回、一定率の濃度で含まれていることを確認している。これにより、必ずしも機能性成分が特定されていない場合でも、指標成分が同じであれば、毎回、同じ規格のエキスが原料として使われていると判断され、エキス全体として体に良い影響があれば表示できるようにしているわけだ。

このように〝指標成分〟で規格が安定している素材であれば、新制度に参加できるのか、消費者庁は明らかにしていない。業界サイドの委員による再三に渡る指摘を受け、第5回会合で消費者庁は、「関与成分」という表現をなくし、「保健機能成分」と言い換えている。ただ、これは言い回しを変更しただけ。定義も変わっているかは明らかにしておらず、今後、この点が新制度に参加できる素材を大幅に増やすか、狭めるかを分ける最大の争点となる。

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