高島屋、ショールーミングストア事業に参入――新宿店を皮切りに5年で10店舗計画

 

 高島屋は3月4日、トランスコスモスとの合弁会社であるタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマース(TTIC)と共同でショールーミングストア事業を開始すると発表した。第1号店については4月下旬に高島屋新宿店2階にオープンする予定だ。将来的には国内外の高島屋店舗に加え、アセアンを中心に高島屋以外への店舗への出店も目指す考えで、5年後までに10店舗の出店を計画する。

 ショールーミングストアにはD2Cブランドを中心に誘致する。店頭には展示品だけを置き、在庫は持たない。購入は専用のオンラインサイトを用意してEC購入を促す。参加するブランドからは出展料と専用サイトで売れた際に手数料を徴収するビジネスモデルとなる。

高島屋が展開するショールーミングストアの店舗イメージ

 今回、ブランド力やきめ細かな接客サービスを強みとする高島屋と、デジタルサービス、システム構築を得意とするトランスコスモス、さまざまなD2C企業との接点を持つTTICが組み、ショールーミング事業のスキームを構築した。

 百貨店ならではの接客サービス、ギフト機能を充実させた専用オンラインサイト、D2C企業を中心とした従来の百貨店にはない品ぞろえを三位一体となって実現することで、百貨店に馴染みが薄い消費者との接点を獲得するとともに、既存顧客に新しい価値を提案していくという。

 ショールーミング事業は、店頭では専属スタッフが展示アイテムの説明やオンラインサイトの利用方法などをアドバイスし、ユーザーニーズに合わせたショッピング体験をサポートする。また、店内には予約式のオンライン接客専用ブースを設置。来店できない消費者も店頭同様の接客が受けられるようにする。

 また、店内に設置したAIカメラからの取得データ、オンラインストアやSNSから得た閲覧データなどを組み合わせた定量分析に加え、専属販売員が接客を通じて得たユーザーの購買意欲や動機などの定性情報を出展企業に提供する。

 専用オンラインサイトはTTICが運営するため、出展者は店頭用の展示サンプルと販売用商品の手配など、最小限の準備でさまざまなユーザーとの接点を持つことができるとする。

 ギフトに適した商品セレクトに加え、オンラインサイトで購入した商品はユーザーの要望に応じてギフト包装での配送が可能なほか、ソーシャルギフトにも対応。SNSやメールなどを通じて住所を知らない相手にも手軽にギフトを贈ることが可能だ。

 ショールーミングストアの品ぞろえは、「食・グルメ」「ライフスタイル」「ビューティー」「日本アート&クラフト」「エシカル」など、それぞれのテーマに精通する5人の目利きキュレーターが商品の一部をセレクト。当該キュレーターが商品の価値や魅力などを独自の目線で発信することで、思いがけない商品との出会いを提供する。

 4月下旬の高島屋新宿店を皮切りに国内外でショールーミングストアを出店するほか、同事業で得たD2C事業者とのネットワークを、現在TTICで取り組んでいる越境EC事業に生かすことで、参画企業に対して海外販路を提供するとともにインバウンド需要を取り込み、さらなる事業成長を図るとしている。

 なお、大手百貨店はOMOストアやショールーミングストアといったデジタルを活用した次世代型店舗の開発に積極的で、そごう・西武は2021年9月、西武渋谷店にOMOストアの「チューズベースシブヤ」を開設。半年ごとに編集テーマを設け、共感するD2Cブランドなどの商品を扱う。商品に付いたQRコードを読み込んでEC購入できるほか、店頭で決済して持ち帰ることもできる。一方、大丸松坂屋百貨店も21年10月、大丸東京店にその場では商品を売らないショールーミングスペースを開設し、D2Cブランドの商品を提案する。商品は各ブランドのECで購入してもらう形で、大丸松坂屋は各ブランドから出店料だけを徴収するスキームで展開している。

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