「就職率96%」も実際は10%程度――就職支援のDYMに措置命令

消費者庁は、景品表示法に基づき、「アフィリエイト広告」を対象に3例目となる措置命令を下した。新卒や第二新卒、既卒者を対象にした就職支援サービスを提供するDYMを対象にしたもの。アフィリエイト広告をめぐっては、今年2月、アフィリエイターが作成した広告であっても、広告責任を原則、広告主に求め、厳正な法執行を行うとする報告書をまとめた。今回の処分はこれを体現したものといえる。一方、気になるのは、今回、是正を求められた「相談からの就職率96%」という表示だ。企業の広告では、就職率に限らず、顧客満足度などさまざまな場面で同様の表示がみられる。こうした表示はどう評価されるのだろうか。

スポンサードリンク

正社員採用や書類選考なしと広告

 消費者庁は今年4月、DYMが行っていた自社サイト、アフィリエイト広告、動画広告(ユーチューブ)を対象に景表法に基づく措置命令(優良誤認)を下した。

同社は、新卒向け「DYM新卒」や第二新卒、既卒者、フリーター向け「DYM就職」というサイトを運営。「相談からの就職率96%」といった表示や、「今までフリーターとして生活してきて、今更正社員になれるの?」など、紹介案件に人材派遣企業を通じた派遣業務が含まれないかのように示す表示、2500社以上の就職以上の求人情報を有しているかのように示す表示、書類選考を経ずに紹介されるすべての企業の採用面接を受けることができるかのように示す表示を行っていた。

 実際は、「96%」という数値は、DYMが任意の方法で算定した特定の一時点における最も高い数値を採用していた。また、紹介案件には、派遣業務が含まれていたほか、保有する求人情報も最大2000社程度だった。書類選考が必要な企業もあった。

DYMの広告。「相談からの就職率96%」などと表示。

条件表示していても違反の可能性

 通販企業にとっても注目されるのは「就職率96%」との表示だ。通販では、化粧品や健康食品など各種商品における広告において、顧客満足度の比率を示すなどして訴求するケースがある。「任意の方法で算定した、一時点の最も高い数値」は、何が違反行為ととられたのか。

 DYMの場合、算定方法は、「企業への紹介者の6割」を分母、「内定者」を分子とし、最も高い数値を採用していた。6割とした理由は定かではないものの、消費者庁によると紹介を受けた者が実際には面接に行かなかった可能性などを考慮したとみられるという。

 ただ、「就職率」には決まった算定法はない。調査の過程で消費者庁が参考まで「面談者」の数を分母に、「就職者」を分子とした場合の就職率は約10%だった。内定者では、複数企業に重複して内定を得るケースも考えられるため、「就職者」を分母としたという。ただ、これもあくまで参考値。決まった方法がないため、消費者庁としてもこれを正式な方法としているわけではない。

 問題視された理由の一つに、DYMが、調査の条件を表示していない広告があったことが考えられる。一部は「2017年実績」などの表示もあった。ただ、条件が表示されていても、消費者庁は「消費者が条件表示を含め、96%という数値を正しく理解するとは一概に言えない」(表示対策課)と評価する。仮に条件として企業への紹介者の6割であることや、実績が良かった時の数値であることを示しても「大々的に96%と強調表示している点とのバランスを考えると正しく伝わらない可能性が高い」(同)とする。

 画一的な統計手法はなく、これら表示は、広告全体の印象から個別事案ごとに判断される。健康食品における体験談の「※個人の感想です」などの打消し表示も同様、強調表示が消費者の商品選択に与える影響を考慮しつつ、打消しや条件表示のバランスを考慮する必要がありそうだ。

 DYMは処分を受け、「命令を真摯に受け止め、再発防止に努める」との謝罪文をホームページに掲載している。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG