アマゾンジャパンのサイトで「素材構成100%カシミヤ」などとうたったストールの広告が偽物であるとして、消費者庁は2021年12月、消費者安全法に基づき出品事業者3社の社名を公表した。アマゾンは、すでに該当商品についてサイトから削除したとしている。た今回の検討会だが、〝何人規制〟など、景表法の適用範囲が大きく変わる大改正は見送られる公算が大きい。
素材はポリエステルやレーヨン
ストールの販売元は、teamma、ailan国際貿易、HoomoiJapan(メーカー直営店)の3社(店舗名)。1400~2400円ほどで販売されていた。ストールの素材として「100%カシミヤ」などと表示していたが、消費者庁が購入して調査したところ、素材はポリエステルやレーヨンだった。
消費者庁は、虚偽広告・表示にあたるとして消費者安全法に基づき消費者への注意喚起を行った。「大手サイトで販売されているからといって広告を鵜呑みにせず、購入前に販売業者が信用できるかよく確認してほしい」などとしている。2社については21年11月時点で「カシミア100%」等の広告で販売が行われており、今後も同様の手口で偽表示商品の販売が繰り返される可能性が高いとしている。
消費者庁、販売元の実体把握できず
虚偽広告は、匿名の情報提供で明らかになった。消費者庁は21年4月以降にailan国際貿易、HoomoiJAPAN(メーカー直営店)に対する調査を行ったが実体を把握できなかった。
teammaについては調査過程において、当該店舗のサイト画像を記録していたものの、URLが鮮明に記録できておらず、その後、販売元の表示が変更されたため、「実体調査の対象にできなかった」(消費者政策課財産被害対策室)とする。
販売元が変更されたサイトでも虚偽表示かは不明だがストール等の販売は行われているという。継続調査を行うかは、「行政処分であれば調査するが、処分ではなく追跡調査はしない。表示が虚偽との情報が改めて寄せられれば調査する」(同)としている。
被害情報の把握はない。「購入して繊維の素材構成を調査したので被害があったとすれば私たち」(同)としている。
消安法は、「生命・身体分野」、「財産分野」の被害が対象。「財産分野」は、虚偽・誇大広告や不実告知を発動要件にする。相談件数など公表の明確な基準はなく、消費者庁が必要と認めた場合に注意喚起できる。一方で、注意喚起が目的で企業への行政処分ではない。このため、今回もアマゾンに対応は要請していない。業務への活用を目的に偽表示商品があったことは伝えたとする。
アマゾンは、当該商品をサイトから削除した。また、違反が疑われる商品は、販売前の対策、販売商品のチェックにより調査の上でサイトから削除するとしている。
アマゾン、連絡先「回答控える」
21年4月に成立した「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(DPF消費者保護法)は22年5月をめどに施行される。国がDPFに対し、商品の安全性を判断する上で必要な重要事項に虚偽等の不備がある「危険商品」の販売停止を要請できる権限がある(第4条)。また、消費者が、一定額以上の損害賠償を行う場合、DPFに販売事業者(出品者等)の名称や住所などの情報開示を求めることができる権限を定める(第5条)。DPFには取引適正化や紛争解決に向けた体制を整備することが努力義務で定める。
今回、消費者庁は被害情報を把握していないが、消費者による損害賠償請求を想定した場合、アマゾンは、出品者の連絡先等の開示を求められる可能性もある。
これについて、確実に連絡がとれる連絡先の把握や事業者への連絡の有無、苦情・相談情報の把握も尋ねたが、「個別案件は回答を控える」(アマゾンジャパン)としている。