パル 前期もEC売上38%増と好調

 総合アパレルのパルは、2022年2月期のEC売上高が前年比38・4%増の約329億円となり、目標の300億円を突破した。アパレル業界ではコロナ1年目のEC急拡大の反動で前期はマイナス成長となる企業が散見される中、同社は前々期の伸長率(34・7%増)を上回るなど好調を維持している。

 EC売上高の内訳は「ゾゾタウン」経由が前年比28・5%増の174億円、自社通販サイト「パルクローゼット」が同55・3%増の115億円、その他モール経由が同45・0%増の39億円で、自社EC比率は35・1%に拡大。全社衣料品売上高に占めるEC化率は同6・4ポイント増の37・8%だった。

 パルではコロナ禍でEC利用者が拡大する中、服などをECで購入するのに慣れていないユーザーでも安心して利用できるサイト作りに注力してきた。

 自社ECでは例えば、ユーザーレビューや商品に対する販売スタッフのコメントを商品詳細ページに掲載したほか、商品の説明文は長くなり過ぎないようにするとともに、アイテムの特徴を伝える1分程度の動画を積極的に掲載。動画掲載商品の購入率は高いという。
 また、各ブランドの販売スタッフによる情報発信を強めており、ブランドだけでなくスタッフ個人のSNSアカウントでフォロワーを獲得するなど、SNS経由のサイト訪問者が増えている。

 アプリ会員数は前期末時点で583万人、足もとでは600万人を超え、会員基盤が強固になっている。

 アプリ会員の増加は、「スリーコインズ」など雑貨ブランドのECを開始したことや、各ブランドの店頭でアプリ利用をアナウンスしていることが奏功。情報発信もアプリ利用も店頭販売員が起点となることで、EC売上高への貢献だけでなく、店舗への再来店にもつなげている。

 加えて、この2年間で各ブランドにおけるEC人材も育ってきた。各種施策に手間をかけられるようになり、ノウハウが蓄積されてきているという。

 「パルクローゼット」では自社の60近いブランドを取り扱っているが、ECが好調なブランドの事例やノウハウをほかのブランドに移植することでEC好調ブランドの数が増え、全体の底上げにつなげている。

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ブランド横断型の企画を強化へ

 今期(23年2月期)の売り上げはECチャネル全体で400億円、自社ECは150億円を目標に掲げており、「パルクローゼット」の価値をさらに高めるためにもブランド横断型の企画を強化する。

 3月下旬には自社EC内に小柄な女性向けの商品を集めた「低身長女子」コーナーを設けた。同社では、小柄女性向けの専用ブランドを新たに立ち上げるのではなく、各ブランドがそれぞれ当該ターゲットに向けた商品を作った方がデザインやテイストなどを含めて選択肢が増えると判断した。

 「低身長女子」コーナーでは各ブランドの商品を集めて展開するだけでなく、低身長のショップスタッフによるコーディネート提案なども発信するほか、ユーザーの声を吸い上げる場としても活用していく。

 6月2日からは、30以上の人気ブランドが参加し、”必要なものを必要なだけ生産する”という完全受注生産スタイルで各ブランドがSDGsのテーマをもとにデザインしたオリジナルTシャツ「パルTee」の予約販売を開始した(画像)。

 同日公開の特設ページでは「#ちょっとイイコト」プロジェクトと題し、「パルTee」に込めた作り手の思い、パルスタッフが普段の生活の中で取り組んでいる「#ちょっとイイコト」や、「パルTee」の着こなしを発信している。

 「お客様にとってはECチャネルで展開した方がひとつの売り場で購入できるメリットがある」(堀田覚執行役員プロモーション推進部部長)とし、「低身長女子」などのブランド横断型企画を継続的に展開していく。

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