大正製薬、審査請求が棄却――光触媒マスクで景表法処分、取消訴訟へ

消費者庁は、景品表示法に基づき、「アフィリエイト広告」を対象に3例目となる措置命令を下した。新卒や第二新卒、既卒者を対象にした就職支援サービスを提供するDYMを対象にしたもの。アフィリエイト広告をめぐっては、今年2月、アフィリエイターが作成した広告であっても、広告責任を原則、広告主 大正製薬が景品表示法に基づく処分を不服として行っていた審査請求が今年4月、棄却された。光触媒技術を活用したマスクの広告表示をめぐるもの。19年7月、消費者庁が同法に基づき措置命令を下していた。これを受け、同社では、行政不服審査法に基づく審査請求を行っていた。同社は行政不服審査会の採決について、「誠に遺憾」としており、現在、改めて行政処分取消訴訟の提起に向けた準備を進めているという。

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「花粉等を光触媒で分解」と広告

販売する「パブロンマスク365」シリーズについて、マスクに付着した粒子が分解されているイメージ図とともに「ウイルス」、「花粉アレルゲン」、「光触媒で分解」、「太陽光、室内光でも」などと表示していた。

 消費者庁は、不実証広告規制に基づき、表示の裏付けとなる合理的根拠を要求。同社は、複数の第三者試験で実施した製品試験の結果を提出した。消費者庁はこれを根拠と認めず、商品を装着することで太陽光や室内光下において、光触媒の効果により付着した花粉由来のアレルギー原因物質やウイルスの原因物質等を分解し、体内に吸入されることを防ぐ効果があるかのように示す表示を行っていたとして景表法に基づく措置命令(優良誤認)を下した。

大正製薬が措置命令を受けた「パブロンマスク365」シリーズ

「二酸化炭素に分解と言ってない」

 大正製薬は、処分を判断するにあたり、消費者庁が独自に行った試験のデザインに問題があると指摘していた。

 提出した根拠は、マスク片にインフルエンザウイルスやスギ花粉を含む溶液を付着させ、光照射による分解を確認した抗ウイルス試験や、アレルゲンに対する反応試験の結果。抗菌性試験でも効果を確認していた。

 同社によると、消費者庁が行った試験は、光触媒技術により花粉を分解した後の「二酸化炭素濃度」に着目したものだったという。処分を受けた19年当時、大正製薬とともに光触媒技術を使ったマスクで同時処分を受けた他社製品に「花粉等を水と二酸化炭素に分解する」といった表示があったため。試験の結果、二酸化炭素濃度は増加せず、消費者庁から「花粉などの有害物質は光触媒により分解されず、根拠がない」との説明を受けたという。

 ただ、大正製薬は、「花粉等を水と二酸化炭素に分解する」といった表示を行っておらず、二酸化炭素の増加量にのみ着目した試験デザイン、評価を不適切としている。

 適切でない理由として、花粉からは発生しうる二酸化炭素量は極小で検出が困難であることや、マスク使用時の条件を考慮していないこと、また、光触媒により発生した二酸化炭素は水分や塩類と結合して一部が炭酸塩になるため、二酸化炭素の測定のみで分解の有無を判断できないことなどをあげている。

措置命令、決着まで何年?

 19年に同時処分を受けたのは、大正製薬のほかDR.医薬、アイリスオーヤマ、玉川衛材の3社。アイリスオーヤマ、玉川衛材の商品は、花粉等を二酸化炭素と水に分解するかのような表示を行っていたとして処分を受けた。

 行政処分に不服がある場合、行政不服審査法に基づき、処分を知ってから3カ月以内に審査請求できる。審査請求を行った場合、公正性を確保する観点から、総務省に設置した行政不服審査会で審理が行われる。また、処分取り消しを求める場合は、行政事件訴訟法に基づき、処分を知ってから6カ月以内に処分取り消しの訴えを提起することができる。審査請求を行う場合、その裁決から6カ月以内に訴訟を提起することもできる。つまり、審査請求を行った場合、さらに取消訴訟も行える建付けになっている。

 処分は19年7月。すでに3年が経過している。行政訴訟となれば、一審、東京地裁の審理でも1年前後かかるとみられる。審理はこれからだから、仮に二審、最高裁などと進んだ場合、決着は早くとも24年頃になるのではないか。消費者はすでに処分を忘れているはずだし、その間、大正製薬は「パブロンマスク」を販売できる。リニューアルなど行った場合は、当該命令とは関係のない商品との扱いにもなる。

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