消費者庁、悪質事業者への制裁強化――景表法「繰り返し違反」で課徴金増額も

 消費者庁は、景品表示法違反を繰り返す悪質事業者に対する制裁効果の強化を念頭に、課徴金の算定基準の見直しを検討する。現行の景表法運用の課題について幅広く検討する「景品表示法検討会」において方針が示された。検討会は、今年6月に検討の方向性を示す素案を提示。今後、悪質事業者の判断要素や算定基準について検討を進めるとみられる。

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消費者庁「独禁法を参考に」

 景表法は14年の食品メニュー偽装問題を背景に改正機運が高まり、16年に課徴金制度が導入された。対象は、「優良・有利誤認」。措置命令とセットで行われ、対象期間の商品売上額の3%が課される。ただ、いまだ悪質事業者による〝やり得〟がみられることから「繰り返し違反」を念頭に制裁を強化する。

 見直しについて、消費者庁は「独禁法の規定は参考にできる」(景品表示法検討プロジェクトチーム)としている。独禁法は、「不当な取引制限」(課徴金10%、中小企業は4%)、「私的独占」(課徴金は支配型が10%、排除型が6%)に繰り返し違反で課徴金が割り増しされる規定がある。いずれも10年以内に違反行為を繰り返した場合、課徴金額は1.5倍になる。

スシローの「おとり広告」は、優良・有利誤認では なく3号告示違反、かつ売上額もないため課徴金が 課されないなど、不公平感もある。

 談合やカルテルなど「不当な取引制限」は、複数の企業で行われる場合が基本であるため、主導的役割も考慮される。主導的役割を果たし、かつ繰り返した場合、課徴金額は2倍になる。

 19年改正では、繰り返し違反の割増算定率について、企業グループ単位でコンプライアンスが求められていることを背景に、過去10年以内に、1完全子会社が課徴金納付命令等を受けている場合、2課徴金納付命令を受けた違反事業者の事業を譲受したり、承継している場合──についても割増算定率を適用するよう変更した。

 一方で、同時並行で2つの違反行為を行っていた場合、1回目の課徴金納付命令を受けた時点で調査の有無に関わらず、2つめの違反行為を取りやめていた場合は、繰り返し違反とカウントしないよう改正された。「不当な取引制限」では、主導的役割と判断する行為についても従前から追加された。

 景表法検討会においても、期間を定めた上での繰り返し違反など、悪質性の考慮要素を検討することで、要件を定めていくとみられる。また、悪質事業者への対処では、個人に対する業務禁止命令を規定する特定商取引法との連携も図る。

課徴金制度運用に課題点も

 ただ、課徴金制度の運用をめぐっては課題も生じている。21年12月には、葬儀仲介サイト「小さなお葬式」を運営するユニクエストが、課徴金納付命令の取消訴訟を起こした。課徴金を対象にした取消訴訟は初めてとみられるが、算定の基礎となった売上額に消費者庁と見解の相違があるとしている。消費者庁は、ユニクエストが報告したデータに不自然な点があり、信用性に疑いがあるとして争う姿勢。結果は判決を待つことになるが、同社に限らず、あいまいな運用も少なくない。18年には日産に対する課徴金が取り消された例もある。

 また、都道府県が景表法の措置命令を行った場合、課徴金は消費者庁が調査する運用だが、国と地方の連携が取れていないケースもある。例えば、19年に鹿児島県が措置命令を下した鹿北製油の場合、対象が41商品だった。だが、課徴金調査を行う消費者庁はグラム数の異なる商品を一括りにして25商品と捉え、うち5商品に課徴金を課した。課徴金は150万円以下の裾切り額があり、括ることで課されやすくなるが、なぜ括られたかは説明されていない。別の自治体の事例では、措置命令対象の「表示期間=販売期間」となっていた例もある。その企業は当時、対象商品で年間数十億円売っており、課徴金も億単位が想定されるが、いまだに課徴金納付命令は下されていない。認定された違反期間が適当でないためとみられるが、措置命令とセットが基本である以上〝なかったこと〟にするのは問題だろう。

 こうした運用の問題点も検討される必要がある。

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