セブン&アイ、倉庫型ネットスーパーが始動――ピークの500億円を超える売り上げ規模へ

 セブン&アイ・ホールディングスはイトーヨーカドーネットスーパーの再編を進めている。新設したネットスーパー専用倉庫に事業を移管、集約する。これまで店舗スタッフが行っていたピッキングなどの業務を機械化することで生産性を向上する。効率化によって受注件数のキャパシティを拡大し、事業の成長を目指す。倉庫型ネットスーパーの売上高は、ピークとなった2015年2月期の500億円を超える規模へと拡大を目指す。

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“必ず買えて受け取れる”サービスを実現

 ネットスーパー事業は新会社イトーヨーカドーネットスーパーが手掛ける。新たに物流センター「イトーヨーカドーネットスーパー新横浜センター」(横浜市都筑区)を賃貸で設けた。面積は3万6456m2、1日あたりの出荷件数は約1万2000件となる。商圏は約30kmとなる。店舗から出荷していたネットスーパーのうち商圏内の36店舗を移管する。

品ぞろえは店舗同様の1万2000~1万5000アイテムで、冷凍食品やミールキットなどを拡充した

 品ぞろえは1万2000~1万5000アイテム。店舗と同様の品ぞろえに加えて、冷凍食品やミールキットなどの簡便性の高い商品を拡充した。生鮮品の鮮度や品質にこだわったほか、プライベートブランド「セブンプレミアム」やグループの赤ちゃん本舗の商品を取り扱うことで他社との差別化を図る。

 倉庫型モデルへの移管に伴って、店内で調理していた寿司やコロッケなどの総菜、弁当などは配送時間の関係で取り扱いが難しくなる。このため、総菜に代わる商品として、冷凍の刺身やステーキなどの新たな商品を開発した。

 配送時間は午前10時~午後10時までで、2時間ごとに区切り6便体制とした。配送料金は変動制を導入し、配送日や時間帯で異なる。子育て世帯向けに、母子手帳の掲示を条件に登録日から4年間にわたって送料を半額に割り引く。最低注文料金を設けず、配達指定日を注文日から7日先まで選べる。置配サービスを導入し、玄関先など顧客が指定した場所へ配達する。

 2024年8月以降に、新たな配送拠点として「イトーヨーカドーネットスーパー流山センター」を稼働する予定。セブン&アイ・ホールディングスの2023年2月期のネットスーパー売上高は前期比8.1%減の388億2900万円だった。倉庫型モデルへの再編で、これまでの店舗型にあった欠品や配達可能件数の制限といった課題を解消していく。“必ず買えて必ず受け取れる”サービスを実現し、ピーク時の売上高500億円超まで引き上げる。

倉庫型への転換は「自然」

 イトーヨーカ堂だけでなくイオンも、倉庫型モデルへ転換を図っている。

 イオンは7月10日に、倉庫型ネットスーパー「グリーンビーンズ」をスタート。千葉県・誉田に物流拠点「誉田顧客フルフィルメントセンター」を開設し、東京5区と千葉県3市でサービスを開始した。7月24日に東京2区と千葉1市を追加してエリアを拡大し、1年をメドに東京23区全域で展開する計画だ。

 配送拠点の立ち上げにあたっては、英国のテクノロジー企業「Ocado-Group」と提携した。庫内では1000台のロボットが稼働し、6分間に50個をピッキングする。配達は午前7時から午後11時まで、1時間ごとに指定できるようにした。

 大手GMSの倉庫型へのシフトは「当然の流れ」と食品宅配事業を行う幹部は指摘する。店舗出荷型のモデルでは店舗と在庫を共有するため、店頭商品の売り切れで欠品が発生しやすい。店内の商品棚は回遊を目的に配置され、ここから商品をピッキングすることは効率が悪かった。加えて、数時間ごとに区切る配達枠の中の受注可能件数には限りがあり、高まる宅配需要を取りこぼす要因になっていた。

 さらに、大手ECと組むスーパーが倉庫型モデルで売り上げを拡大していたことも大きいだろう。楽天と組む西友は24年に流通総額1000億円に到達する見込みで、当初計画を1年前倒して達成するという。アマゾンと組むライフコーポレーションはネットスーパーを大きく伸ばし、前期(23年2月期)は売上高142億円となるなど躍進していた。

 大手GMSが倉庫型モデルにシフトしたことで、宅配需要の獲得を巡って食品小売における競争は激化しそうだ。「食品宅配自体の認知度が向上し、これまで利用経験がない新規客層が食品宅配を利用するようになる。EC化率の向上に貢献することを期待したい」(食品宅配幹部)とした。

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