楽天グループの仮想モール「楽天市場」は6月1日、月額出店料を現行料金から約3割値上げする。2月22日に出店店舗へ通知した。同社では値上げについて「今後も中長期的な店舗運営支援とユーザー利便性の向上・改善を図ることが目的」としており、さらなるシステム投資や、物価高など外部環境への対応、AI(人工知能)などイノベーションへの適応を行うための原資の一部とする。
現行3プランについては「がんばれ!プラン」は月額2万1450円から2万7500円に、「スタンダードプラン」は同5万5000円から7万1500円に、「メガショッププラン」は月額11万円から14万3000円にそれぞれ値上げする。現在は申し込めない旧プランなどについては、「ライトプラン」は4万3780円から5万7200円に、「プレミアムライトプラン」は4万3780円から5万7200円に、「IchibaBasicShopOpenPlan」は5万5000円から7万1500円に値上げする(料金はいずれも税込み)。
値上げの一方、「がんばれ!プラン」「スタンダードプラン」については、画像容量と登録可能商品数を大きく引き上げる。「がんばれ!プラン」は現在の500MBから1.5GBに「スタンダードプラン」は画像容量を5GBから100GBにそれぞれ増やす予定。登録可能商品数も、「がんばれ!プラン」は5000商品から1万商品に、「スタンダードプラン」は2万商品から5万商品に、それぞれ上限が上がる予定だ。
出店料値上げに伴い、3月以降に出店規約とガイドラインの変更を行う。なお、現行プランは1年契約のため、通常は解約・プラン変更はできないが、特例として契約期間中でも解約やプラン変更が行えるようにする。
1997年に開設した楽天市場は当初、月額5万円(税別)の基本出店料のみを徴収するプランからスタート。2001年に「楽天ライト(現ライトプラン)」として、月額出店料に加えてシステム利用料を徴収する従量課金制を導入した。03年には、ライトプランと同額で登録商品数の多い「プレミアムライト」を追加。08年からは現行の料金体系となっており、月額出店料を値上げするのは08年以降では初となる。
新規出店に影響も
多数のEC企業をクライアントとして抱えるコンサルタントは「さまざまな名目で毎年のように実質的に徴収される金額が上がってきたが、基本出店料値上げは初なので『ついに来たか』という印象。来年以降どこまで値上がりするのか」と顔を曇らせる。そして「出店者にとって厳しいのは間違いないが、新たにECを始める事業者にとって敷居が高くなるのではないか。月額3万円近くのプランが最安となると、月額出店料5390円のアマゾンや、月額出店料が無いヤフーに流れてしまう恐れがある」と指摘する。
現行3プランのうち、「スタンダードプラン」と「メガショッププラン」は料金体系が同じだが、画像を多く使用するアパレル店舗などは「メガショッププラン」を利用することが多い。また、「がんばれ!プラン」は月間売上高から徴収するシステム利用料率が高いため、主に月商140万円以下の店舗が利用している。そのため、「スタンダードプラン」を利用する店舗が多く、その場合年間では19万8000円の値上げとなる。
楽天市場に複数店舗を出店する大手企業の担当者は「4月からクーポン利用料が有料化され、1枚利用されるごとに50円徴収されることになるが、その上出店料まで上がるとは。さまざまなしわ寄せが店舗に来ているように感じる」とため息。
同社では「メガショッププラン」と「スタンダードプラン」双方を利用しているが「画像容量の上限が変更されるので、『スタンダードプラン』『がんばれ!プラン』に、『メガショッププラン』は『スタンダードプラン』への変更を検討する」と明かす。先のコンサルタントも「アパレル店舗を中心に、『メガショッププラン』から『スタンダードプラン』にダウングレードする店舗が出てくるのではないか」と予測する。
一方、他の店舗からは「画像の容量が増えたり、AIによる業務サポートが受けられたりといったプラス効果もあるので、あまりマイナスには捉えていない」「昨今の状況を考えれば仕方がない部分もある。3割値上げといっても、スタンダードプランの場合は年間20万円弱のコスト増なので、売り上げを増やすことでカバーしたい」といった声も聞かれた。
楽天では今回の値上げを踏まえて、「出店店舗とユーザーの双方に選ばれ続けるプラットフォームの実現を目指し、AIをはじめとする最新テクノロジーを活用した改善を進め、より高品質なサービスの提供を目指す」(EC広報)とする。