小林製薬製造の「紅麹」の健康被害問題を受け、政府は機能性表示食品精度を見直す。法規定はないが、健康被害報告、GMP(製造管理基準)を〝届出事項〟とすることで実質的に義務化する。これにより、食品衛生法の営業禁止・停止、届出製品の撤回など食品表示法の指示・命令を行えるようにする。
健康被害報告、「届出事項」で義務化
健康被害報告は、食表法に基づく届出ガイドラインで因果関係を含め速やかに報告することを求めている。
ただ、小林製薬が報告に2カ月要したことを受け、機能性表示食品は「健康被害が疑われる情報」について、「医師の診断」を前提に「因果関係不明」を含め、消費者庁、自治体(保健所)に情報提供することを、実質的な義務化である届出の遵守事項にする。提供期限は、重篤度に応じて明確にルールを定める。これにより遵守しない場合に機能性表示食品として販売しないよう指示・命令できるようにする。
食衛法では、食品全般で健康被害と疑われるものについて「医師の診断」があるものを保健所に報告するが、努力義務。省令(食品衛生法施行規則)で義務づけ、違反は、同法に基づく営業禁止・停止を行えるようにする。提供された情報は、厚労省に集約。分析・評価を行い定期的に公表する。
健康被害報告、9年でわずか82件
消費者庁は、機能性表示食品約7000件の自主点検(医師、薬剤師など医療従事者からの健康被害報告)を求めていた。結果から、届出ガイドラインで規定する「短期間に特定の製品における症例の集積」にあたる製品はなかった。
健康被害報告は、届出者22社の147件。このうち医療従事者によるものは、82件(サプリメント形状は75件)。小林製薬の製品5件を除く77件について、ガイドラインに規定する「健康被害の発生・拡大のおそれ」の観点から専門家が評価した。
「重篤」は4件(否定できない1件、情報不足3件)、「非重篤」は52件(否定できない13件、おそらく否定できる1件、情報不足38件)、「不明」は21件(否定できない7件、情報不足14件)だった。このうち、因果関係を否定できないと評価された21件も、専門家により、「現時点で健康被害の拡大が懸念される情報は得られていない」と評価されている。一般用医薬品(OTC)と比べても被害件数は低い。
GMP(製造管理基準)も義務化へ
制度の信頼を高める措置は、食表法にひもづく府令(食品表示基準)でGMPを要件化する。錠剤・カプセル剤等の食品は、「推奨」から、「届出の遵守事項」にし、自主点検を要請するとともに、必要に応じて立入検査を行う。
安全面は、新規の機能性関与成分について、消費者庁が時間を要すると判断したものは慎重に確認するため、届出資料の提出期限を販売日の120営業日前(通常は60日)と明記する。安全性や機能性について医学や薬学の専門家から意見聴取する仕組みも検討する。
また、医薬品との相互作用など注意喚起を目的にする製品の表示内容も具体化し、表示位置等も見直す。届出事項の遵守も事業者自ら点検することを求める。
被害件数のひとり歩き懸念も
健康被害報告は、「医師の診断」、重篤度に応じたルール化を行うが、「医師の診断」が診断書の要否を含むのか、健康関連の相談、診察の有無によっても報告すべき水準が異なる。
また、報告企業の製品の販売数など〝母数〟の把握が行われるのかも重要になる。「機能性表示食品の被害報告200件」などと公表されれば、母数と比較した発生率ではなく、インパクトの強い被害件数のみがひとり歩きする可能性もあるためだ。政府の見直し案に基づき、今後、ルール化が進められるが、その動向を注視する必要がある。